神経質礼賛 786.風薫る
5月の連休明けから、やっとマスクをはずした。インフルエンザ対策、そして花粉対策のため、外出時はいつもマスクを付けていた。それがなくなったら身も心も軽くなったような気がする。通勤列車の車窓から見える茶畑は鮮やかなライトグリーンに輝いている。街を歩けば製茶所から爽やかな新茶の匂いが漂ってくる。街路樹の緑も美しい。こんな中、天気の良い日は、つい、五月(さつき)晴れと言いたくなるが、5月には五月晴れと言ってはいけないのだそうである。本来、6月(旧暦の五月)の梅雨の合間の晴天のことを五月晴れと呼ぶのである。この誤用はTVアナウンサーにもみられる。神経質としては気を付けたい。
5月の時候の挨拶に使われる言葉に「薫風の候」というものがある。そよ風が運んでくれるすがすがしい新緑の香りを連想させる実にいい言葉である。この言葉を私に教えてくれたのは中学の時の担任の先生である。理科の先生だったが、文学歴史にも造詣が深く、生徒たちからは本名の植松先生ではなく「植麻呂」と呼ばれていた。植麻呂先生はのちに中学校長を歴任された後、教育長になられた。「風薫る5月が一番好きです」と言われたのがつい昨日のようにも思える。
最近のニュースで気になったことがある。ツバメの数が減っている、というものだ。そういえば街中ではほとんど見かけなくなった。大規模な調査が行われている石川県ではツバメの数は40年前の3分の1に減少したとのことである。森林や農地が減ってエサが減ったこと、住宅の壁が巣作りしにくい素材になってきたこと、天敵のカラスが増加していることが原因なのだそうだ。ツバメが住みにくい環境になったというわけだ。古くから日本人の生活と密接に関わってきたツバメがいなくなってしまうのは何とも寂しい。勤務先の病院は鉄骨建築にもかかわらずツバメが巣を作っていて、毎年この季節はツバメの親子たちで賑わう。直接外壁に巣を作るのは難しいとみえて、換気扇の吹出し口を覆うフードの上や照明器具の横を利用して巧みに巣作りしてある。ツバメも生きていくために創意工夫しているのだ。病院は山の中腹にあるので自然が残っているし、カラスも少なくて安全である。ヒナたちにせっせとエサを運ぶ親ツバメ、そして口を大きく開けてエサをねだるヒナを見ていると、こちらも元気をもらえる気がする。森田正馬先生の「純な心」「生の欲望」という言葉を思い浮かべる。


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