ツアーの最後は岩倉にある大雲寺の秘仏・行基作の十一面観音像で335年ぶりの開帳というキャッチフレーズだ。この寺は紫式部の母親の祖父が創建したと言われ、源氏物語・若紫に出てくる「北山のなにがし寺」のモデルだという説がある。平安時代からすでに脳病(精神病)平癒の御利益があるとされていた。織田信長の叡山焼き討ちの際は奇跡的に難を逃れたが、その後は衰退。昭和には多額の借金を負い、今から40年前になんと売却され取り壊されてしまった。今回の秘仏公開は寺の再建目的が大きい。ネット上でクラウドファンディングによる募金が行われているものの十分には資金が集まっていない。秘仏は寺があった所から離れた場所の仮本堂に安置されている。岩倉という地は日本の精神医療の原点のような場所であり、寺院の周辺の茶屋には精神病患者さんたちのお世話をしてきた歴史があり、現在では精神科病院がいくつも集まっている。
仮本堂まではバスを降りて閑静な住宅街の中を歩く。寺の再起を強く願う住職さんの説法には力が入っていた。十一面観音像は頭部の上部分が1551年に三好長慶軍がこの地に攻め入った際に火災で焼けてしまっているが、それがゆえに観音様が人々の身代わりになって下さったと考えられているようだ。元よりの脳病平癒に加えて認知症が人々の関心を引く昨今では呆け封じの御利益が期待されているとも言う。
すべての拝観を終えて京都駅に着いたのは5時頃。ツアーの大部分の人たちは1時間後ののぞみ乗車まで買物自由行動。私たちは2時間後のひかりを予約していたのでツアーの人たちと別れる。この時間では近くの東寺も拝観時間を過ぎているし、長時間の買物も疲れてしまう。伊勢丹の地下で夕食の弁当を購入した後は空いていそうな喫茶店を探す。伊勢丹3Fのロマンの森という喫茶店に入った。オリジナル京都紅茶を飲む。窓際の席に座ると照明が灯る京都タワーを眼前に見ることができた。密度の濃い2日間の旅だった。


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