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神経質礼賛 2087.そんなもんなんですねえ

 マスク着用義務が緩和され、新幹線には大きなキャリーバックを携えた旅行客が増えてきた。旅行関連の折り込みチラシが増え、長らく運休していた高速バスの運転再開のチラシも入ってきた。少しずつコロナ前の日常に戻りつつあるのは喜ばしい。

 不安障害で通院中の方。ツアーの添乗の仕事をしていたが、コロナ禍で仕事がなくなっていた。その上、息子さんが海外勤務になり、当地のコロナ流行のため長いこと帰国ができず、ネットで連絡を取るだけになっていつも心配されていた。一昨日、外来受診された時は満面の笑顔で入って来られた。息子さんが国内勤務になり帰国するのに合わせて旅行に行ってきたとのことだ。1日2回くらい不安時頓服の抗不安薬を飲んでいて薬の残量をいつも気にしていたが、旅行に行っている間は一回も飲まなかったとのこと。飲むことをすっかり忘れていたそうである。「そんなもんなんですねえ」と仰る。その上、このところツアー添乗の仕事の依頼が舞い込み始めているとのことである。「そんなもんなんです」と私もそれに合わせて答える。次の診察予約は大分先にしておいた。
「神経質は病氣でなくて、こんな仕合せな事はありません」(白揚社:森田正馬全集 第4巻 p.386)という森田先生の言葉が頭に浮かぶ。

 

2023年3月16日 (木)

神経質礼賛 2086.風呂給湯器が故障?

 夕食後、洗い物をしていた妻が大騒ぎを始めた。給湯器がおかしい、と言うのだ。電源が入っている時に時刻が表示されるところが「888」と点滅表示となっている。電源を一度切って入れなおしても変わらない。ベランダに出て、給湯器本体のコンセントを抜いてしばらくしてから入れなおしてみるが同じことである。「お風呂に入っていて水しか出てこなくなったらどうしよう」と言うが、風呂の給湯も普段通りできている。しかし、何かの警告サインであることは間違いないだろうから気味が悪い。8年前ほど前に、家の外壁塗装をしたついでに全てのエアコンと給湯器を買い替えている。給湯器の寿命は10年という話もあるけれども、壊れるにはちょっと早い。取扱説明書を引っ張り出してきて、アラーム表示の番号表を探してみるが、「888」などという番号はない。その日はとりあえずアラーム表示のまま使い、翌朝、メーカーであるP社の修理受付センターに電話してみる。なかなか繋がらず、3分以上待ってようやく担当者と話ができた。

 「888」の点滅表示は、製造後10年経過して、(有償の)点検を受けてください、というサインとのことだ。「どうしますか」と聞かれる。そういえば、7年間の保証期間が切れた時に有償点検の案内ハガキが送られて来ていたことを思い出した。「とりあえず、当分はそのまま使ってみて、調子が悪くなったら買い換えますよ」と答える。アラームの解除方法を教えてもらう。風呂場のコントローラの電源を入れ、温度調整の下向きボタンを長押ししながら「運転」ボタンを押すとピピと鳴って表示が消えます、とのことで確かに消えた。やれやれ。この警告は今後も1年ごとに出るのだそうだ。取扱説明書のどこかに記載しておいてほしいものだ。

 

2023年3月12日 (日)

神経質礼賛 2085.ゲラ刷り

 3日前、白揚社から「ソフト森田療法の初校ゲラを発送します」というメールが入る。編集者から「ゲラ刷りを行わずWord画面上で行う方法もありますがどうしますか」と以前に聞かれていて、「画面上の処理は自信がないので」と答えると従来通りのゲラ刷りが作られたのだ。普段、電子カルテの「御守り」で目が疲れ切っているから、パソコン上の作業はなるべく避けたい。ゲラとは英語のガレー船(galley・地中海で使用された軍船)に由来するそうである。活字の組版で使われる枠箱のことで、その枠箱で印刷されるためし刷りを意味する。

  昨日、仕事を終えて帰宅すると宅急便が届いていた。開封すると2ページ見開きB4版で刷られた原稿が入っている。「特に締め切りはございません」と書かれているが、早く処理しなくては、という気持ちになる。「全般にとても読みやすく、こちらからの提案も少なめとなっています」とお世辞も添えられているけれども、それなりに直しが入っている。自分では十分にチェックしたつもりでも見落としが結構あるものだ。さらに送り仮名や漢字にするか平仮名にするか統一が取れていないところも揃える必要がある。例えば「よい」は「良い」、「とき」は「時」、「事」は「こと」に統一する、数字はすべて漢数字にする、というようなことで、原稿の最初にその一覧表が添付されている。以前に『神経質礼賛』制作時にはこの一覧表はなかったから、出版技術の進歩でいろいろ自動化されてきているのだろう。これから1~2週間が神経質の勝負所。いよいよ『ソフト森田』も8合目まで来たな、という感じである。

 

2023年3月10日 (金)

神経質礼賛 2084.春のミニミニコンサート

 2年間勤務された副院長の女医さんが今日で退職される。そこで、職員が食事をするホールで昼休みの後半に送別のミニミニコンサートを行おうと企画した。事前に事務部門や経営サイドに許可を求めたところ、「何でそんなことをするんですか」と冷ややかな答えが返ってきた。昨年末には職員や入院患者さんのコロナ感染が相次ぎ、対応に追われた。その後遺症で病院全体が「コロナ疲れ」の沈滞ムードに覆われているのを強く感じている。そこで、それを払拭したいのだ、ということを説明して、ようやく認めてもらえた。

 歌や管楽器と異なり、弦楽器では感染リスクは極めて低いとはいえ、ここ2年間、クリスマスの演奏も自粛してきた。普段、職員が「黙食」している場で演奏してしまうのだから、ちょっとスリリングである。曲目は2年前に認知症病棟で演奏(1826話)したものに準じている。2曲目を「花は咲く」から「卒業写真」に変更し、①ヴィヴァルディ『四季』から春の第一楽章 ②卒業写真 ③千本桜 ④ジュ・トゥ・ヴ というラインアップにして、12:40頃開始という予定でいた。今日は外来担当日で、11時の予約なのに12時過ぎに来院する遅刻常習犯が二人いる日だ。うち一人は日記指導をしている強迫の人でとても時間がかかる。間に合うかどうかヒヤヒヤものだ。何とか開始5分前に外来を終え、すぐに楽器を出して弾き始める。主賓の女医さんが近い席に座り、すでに食事を終えている職員さんたちも集まって来て立見である。ごく簡単な②で集中力が途切れ、早く終わってしまい、伴奏だけが鳴り続けるという失態を演じてしまったが、後は何とか無難に切り抜けた。皆さんに喜んでいただけたのが救いである。自分も昼食を食べ、書類書きなどの仕事をしてから、今度は慢性期病棟に行き、患者さんたちの前で同じプログラムで演奏した。慌ただしかったが、やって良かったと思っている。

 

2023年3月 9日 (木)

神経質礼賛 2083.オドオドして恥ずかしがつて居ればよろしい

 人とのコミュニケーションが取れないといって悩んでいる人がいる。中学校は完全に不登校。その後、長年ひきこもっている。たまに家族に連れられて買物に行く以外は全く外出しないし、家族以外の人との交流もほとんどない。家族から生活上の注意を受けると、キレてしまう。主治医の先生が不在の時に受診したので、私が代診した。終始、下を向いていて視線を合わせることはないが、質問にはポツリポツリ答える。「初めてお会いしたのによく話せましたね」と言うと、「緊張してます」と答える。「それでいいんですよ。緊張してもコミュニケーションが取れていますよ」と話す。

 森田先生は視線恐怖の人からの手紙に次のように返事している。

眼つきの鋭くなるのが氣になる(偶然、風呂上りの男性客の性器に目が行ってしまってから、視線恐怖になった女性からの手紙に対する返事)
「顔が上げられなくなる」其のまゝでよろしい。強て勇氣を出して、顔を上げやうとせず、オドオドして恥かしがつて居ればよいのです。(白揚社:森田正馬全集第4巻 p.417)

 人と対面する時、話す時に緊張してドキドキする。そして、人が自分をどう見ているか、人の視線が気になる。それは、多かれ少なかれ、誰にでもあることだ。自分は気が小さくて情けない、もっと気を大きくしなくては、大胆にならなくては、などと考える必要はない。気が小さいまま、オドオドしながら、弱いままに、仕方なしに必要なことをやっていけばいいのである。

 

2023年3月 5日 (日)

神経質礼賛 2082.スギ花粉「満開」

 日が長くなり、春らしさを感じる日が増えてきた。その代わり、悩ましいスギ花粉症真っ盛りである。目は痒くてショボショボで、仕事にも支障が出る。コロナ対策でマスクをずっとしていて花粉の吸いこみが少ないためか、鼻の症状は比較的軽い。このところ治療薬の抗ヒスタミン剤はだんだん眠気が少なくて効果の高い薬が発売されてきた。前の勤務先ではビラノアという薬を処方してもらっていたけれども、現在の勤務先にはそれがなく、その前のザイザルのジェネリック薬に戻っている。15年前には花粉症対策にレーザー手術を受けたが効果は長続きしなかった(281話)。手術そのものは楽だが、その後1週間はひどい鼻閉に悩まされたので、以後は受けていない。私の場合、スギだけでなくヒノキ花粉症もあって、5月後半までつらい日々が続く。

 外来通院中の患者さんたちもこの時期になると、我も我もと内服薬や点鼻・点眼薬を希望される。最近見たニュース番組では、スギ花粉症の有病率は年々上昇して4割を超えたそうである。特に今年の花粉飛散量は多いらしく、ついに花粉症デビューしてしまったという話もちらほら聞く。今年は薬の効きが悪いという人も少なくない。一番の対策は、やはり花粉が多く飛んでいる時は外出を避けることである。そして、帰宅時は衣服や髪をよく払い、家の中に持ち込まないようにすることだ。日中は花粉の飛散が多いが夕方になればいいだろうと思っている方が少なくないと思う。ここが盲点で、実は夕方18時頃になると、上空に舞い上がった花粉が下りてきて、二度目のピークとなる。私は駅のホームで帰りの電車を待っている時間帯なので残念ながら避けようがない。皆様も油断しているとやられてしまうので御注意いただきたい。

 

2023年3月 2日 (木)

神経質礼賛 2081.夕刊配達の終了

 外来通院中の方で当年75歳、夕刊の配達をしているという女性がいる。近隣の約70軒に歩いて1時間ほどで配達し終えるのだそうだ。「寒い日や暑い日や雨の日は大変ですね」と言うと、「いえ、ちょうどいい運動になります」という答えが返ってくる。ところが、年明けの外来診察日にお聞きした話だと、この3月で配達の仕事を辞めることになりましたとのこと。急に習慣が変わってしまうからこれからどうしようか考えていますとも言われる。やはり、年齢と共に体力的に厳しくなってきて辞められるのかなあ、と思っていた。すると、先月の終わりに新聞と一緒に販売店からのお知らせの紙が入っていた。コスト上昇など諸般の事情により、今までのように夕刊を配達するのが困難な状況になったため、4月から夕刊単独の配達は中止して、翌朝の朝刊と一緒に配達するようになる、ということだ。この女性の個人的な問題ではなかったのだ。

 今までも山間部などでは夕刊を翌朝の朝刊と一緒に配達するということが行われていた。しかし、市街地でもそうなってしまうとは。ますます新聞離れが懸念される。確かに夕刊は薄くて読むところが少ないが、時々面白い特集記事やコラムもあって、次の日の配達では寂しい。当分は翌朝配達でも夕刊を継続してみてメリットが少なければ朝刊だけの契約に変更しようかとも思っている。

 

2023年2月26日 (日)

神経質礼賛 2080.おいどん、星になる

 漫画家の松本零士さんの訃報が伝えられた。享年85歳。松本さんは宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999、キャプテンハーロックといった宇宙SFアニメで人気を博した。私にとっては中学・高校時代に読んだ「男おいどん」(82話)などの四畳半物が強く印象に残っていて、大学生の時に買ったコミック本はまだ書棚の片隅にある。主人公のおいどん・大山昇太は青雲の志を抱いて汽車で九州から上京して古い下宿屋で単身生活をしていた松本さんの分身でもある。短足・ガニ股・眼鏡のさえない風貌とともに貧乏が災いして女性たちには振られっぱなしである。それでも劣等感を持ちながらも失敗を繰り返しながらも「今に見ちょれ」と頑張り続けるおいどんの姿に共感を覚えた読者も少なくないだろう。私もその一人である。神経質ゆえ自己評価が低く、自分は人生の落伍者だと思い続けていた。その一方では生の欲望も強く、こんなもので終わってなるものか、とも思っていた。神経質の弱力性と強力性である。だから男おいどんにはスッカリのめり込んだ。少女漫画からスタートした松本さんだけあって、心のつかみどころが実にうまい。男おいどんは乙女チック漫画の男子版という評価もある。青年期は周囲の人々が自分よりも優れているように見えて劣等感にさいなまれやすいし自意識過剰になりやすい。自分の周囲の登場人物が美男美女ばかりというのもそうした心理を反映している。成功を収めて立派な家に住んでいる人からアルバイトを頼まれたおいどん君はいつものように失敗をやらかしてすごすごと帰っていくのだが、「お前はいいよ。まだ若くて」と言われて「?」と言葉も出ない。みじめでも貧乏でも若さは莫大な財産であることに気が付いていない。それを痛感するのは歳を取ってからである。

 松本さんは上京して頑張ったが、なかなかヒット作が出なかった。少年マガジンの連載を任され、汚れたパンツの山やインキンタムシに悩まされる実生活をベースに「こんな漫画が売れるのか?」と思いながら開き直って描いた男おいどんが出世作となったという。アニメ化されることはなかったし、四畳半の世界は日本独自のものであるけれども、男おいどんに登場するキャラクターたちはのちの宇宙SFアニメにも登場してくる。松本さんは常々、「遠く時の輪の接する処でまた巡り会える」という言葉をSFアニメの登場人物に語らせ、自分自身そう言っていたそうだ。星になったおいどんは誰と会っているだろうか。

 

2023年2月23日 (木)

神経質礼賛 2079.お兄ちゃんだから・お姉ちゃんだから

 前話で「お姉ちゃんだから我慢しなさい」というありがちな親の言葉が出た。私も「お兄ちゃんだから我慢しなさい」を言われたものだ。弟がよく私の物を勝手に持ち出して使う。それに怒って取り返すと弟が泣き出し、親からいつもの言葉を浴びせられるというお決まりのパターンだった。

 最初の子供は親も慣れていないから、子育てはおっかなびっくりである。どうしても過保護になったり過干渉になったりしやすい。また、過度に期待してしまったりする。その点、弟や妹の立場だとのびのびと育ちやすい。漫画「ちびまる子ちゃん」はその典型であろう。主人公で小学3年生のももこ(通称まる子)は良く言えば天真爛漫で素直な女の子。悪く言えばちゃらんぽらんでずる賢い面もみられる。その姉で小学6年生のさきこは真面目なしっかり者で我慢強い。両親・祖父母とも「お姉ちゃん」と呼び、名前で呼ばれることはない。妹思いでよく面倒をみているが、同じ部屋で暮らすまる子に引っ掻き回されてついに大爆発する場面も時々ある。弟や妹を持つ読者はこの「お姉ちゃん」に共感するのではないだろうか。

 「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と親が言いたくなるのも無理はないが、それこそなるべく我慢して欲しい言葉である。役割の強要はまだ小さい子供には厳しすぎる場合があるだろう。言いたいことも言えなくなる。それに、お兄ちゃん、お姉ちゃんでなく、名前で呼んであげた方がよいと思う。

 

2023年2月22日 (水)

神経質礼賛 2078.こころの休符

 外来に通院している看護師さん。うつになった妹さんを自分のアパートに連れてきて面倒を見て、パワハラ傾向の上司やらお局様的先輩たちのいる職場で指示に従って頑張り続けているうちについに自分がダウンしてしまった。適応障害である。しばらく仕事を休んで元気を取り戻し、同じ病院の別の部署に配属してもらって復職し、今のところ順調である。この人の場合、幼少時から親に「あんたはお姉ちゃんなんだから我慢しなさい、頑張りなさい」と言われ続けてきて育ったそうだ。仕事の上でもつい無理して頑張ってしまう癖がついていて、上司から仕事を頼まれると反射的に「できます」と言ってしまう。こういう人に頑張るように言うのは厳禁であり、「頑張らないようにしましょう。クビにならない60点スレスレを目指しましょうね」と繰り返しアドバイスしている。最近はゴルフに行って気分転換していると言う。「自分だけ仕事を減らしてもらって遊んでいていいのかなと思ってしまいます」「打たれ弱くなりました」と述べるが、弱くなり切ればよい。仙厓さんの「気に入らぬ 風もあろうに 柳かな」で外圧は受け流しながらボチボチやっていればよい。そして、生活の中に「こころの休符」を入れることも大切だ。

 森田療法では行動本位、どんどん仕事に手を付けるようにという指導ばかりしていると思われがちだが、それはあくまでも考えてばかりいて行動が伴わない人への指導であって、本来は行動と気分のバランスが取れているのが一番である。森田先生御自身、お弟子さんと晩酌したり将棋を指したりしていたし、月1回の形外会でも、落語家を呼んで楽しんだり、ゲームをしたり、全員で東京音頭を踊ったり、ハイキングに出かけたり、とレクリエーション的な面もあった。適度な「遊び」も潤滑油として必要である。

 

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