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神経質礼賛 2316.顔写真撮影

 この4月から二か所のクリニックで働く予定になっている。一か所は三島の病院で一緒に働いたことがある先生が院長をしている精神科クリニック。現在休診日になっている曜日を私が勤務して埋める形になる。私のピアノ伴奏をしてくれる親友の家から近くにあって、彼が通りかかったら4月から私が勤務になることが掲示されていた、とLINEで写真を送ってくれた。ここはまだ電子カルテになっていなくて紙カルテである。患者さんの層も今までの勤務先と大差ないようだ。

 もう一か所は精神科ではなく何と産婦人科のクリニックである。メンタル患者さんが多いから診てほしいという要望があって行くことになった。こちらは全くの未知数である。先日、クリニックのホームページに載せる顔写真が必要なので来てほしいという連絡が入った。顔写真なら撮ったものがあるから送りますよ、と返事すると、無料で配られる情報誌にも載せたいから、とのことだった。決められた日の午後6時に行ってみると、もう一人5月から勤務予定の若い女医さんも来ていた。この女医さんは現在こども病院で児童思春期を専門にしている方で、産婦人科クリニックにはまさに適任だろうと思う。まず、絵柄の入った色物の仕事着のシャツに着替える。長年、仕事中はYシャツに白衣、特に冬場はネクタイをしていたから戸惑う。ポケットがないシャツだから仕事の時に困るだろうなあ、と早くも先の心配をする。「郷に入りては郷に従え」でやむを得ない。森田の言葉では「境遇に柔順なれ」だ。情報誌のカメラウーマン(?)たちの指示に従っていろいろなポーズで写真を撮られる。刺繍のついたクッションを抱えさせられて「もっとニッコリ笑ってください」などと言われながらどうにか撮影が終わったら7時近くになっていた。さて、これからどうなりますことやら・・・。

 

2025年2月13日 (木)

神経質礼賛 2315.気になるパソコン打ちの音

 電車の中や駅の待合室でパソコンを使う人が増えた。パソコンが小型軽量になり、バッテリーも長時間もつようになったこともあるだろう。すきま時間の有効利用はいいことであるが、近くの席にそうした人がいると、カシャカシャとキーを叩く音が気になることがある。特に、文の終わりでENTERキーを押すような時だろうか、力を込めて叩く音がひときわ大きく感じて気になってしまう。そんなに力を入れなくてもいいのに、などと考えるとますます深みにはまってしまう。まさに森田理論の「精神交互作用」である。注意の集中→感覚の鋭化→意識の狭窄→注意の集中→・・・という循環が起きてとらわれてしまうである。気にしないようにしよう、などと思えば思うほど、ますます気になる。音自体は小さくても気にしていると、その音を選んで拾って聞いてしまうのだ。

 一番効果があるのはやはり、イヤホンで自分の好きな音楽でも聴くようにすれば音そのものが聞こえなくなって回避できる。もし、イヤホンを持っていないような時には、仕方なく聞こえるままに、スマホでメール打ちしたり調べ物をしたりしているうちに時間がたてばあまり気にならなくなっているものだ。

 かつては電車の中で近くにいる人のウォークマンのイヤホンから漏れ出るシャカシャカ音が気になったものだが、最近のイヤホンは密閉型が多くなったためか、周囲に不快な音をまき散らす人は見当たらなくなっている。もっとも、小さな音でも不快感を周囲に与えてしまうことはあるから、迷惑を及ぼさないように気を配りたいものだ。

 

2025年2月 9日 (日)

神経質礼賛 2314.欠勤者のカバー

 外来患者さんからよく聞く話、「病気で欠勤の人が出てしまって大変です」。病気とは大抵はうつ病や適応障害である。結局、他の人が残業や休日出勤してカバーせざるを得ない。うつ病で通院中の人が欠勤者のカバーのために無理をして仕事を増やしてアップアップしている。コンビニのパート勤務をしている主婦の方。急に辞めた人が出て補充できないから代わりに出勤日を増やすことを求められる。なかなかNOと言えない人で、断れずに背負いこんでしまう。結局は真面目で責任感の強い人にしわ寄せが行く、という図式である。人件費削減のため、どこもギリギリあるいはそれ以上の仕事を詰め込んでいるから、欠勤者が出た時の対応が困難になっている。もう少し勤務にゆとりを持たせるような体制にするのが本筋である。その方が勤務者の定着率もアップするのではないかと思う。

 他人事ではない。昨日の朝、若い常勤医の先生から電話があり、発熱して休むから外来の代診をお願いしたい、ということだった。その後、コロナ陽性だったことが判明。勤務を終えて帰宅すると携帯電話が何度も鳴っている。出てみると事務方のトップからで、もう一人の先生もコロナ陽性になってしまいました、と衝撃の情報が。建国記念日の精神科救急の日当直を代わりにやってもらえないでしょうか、と。精神保健指定医でなければできないので、私がカバーする他ない。祝日が実質休めることは珍しいので喜んでいたらこれである。そして当分、毎日代診で外来をやらなくてはならない日々が続きそうである。経営者から見れば、二人減らしても仕事が回るのだったらその人数で十分じゃないか、という論理になりそうだが、ゴムを伸ばして伸ばしてやっとの状態はいつかプッツン切れて長続きしない。

 

2025年2月 6日 (木)

神経質礼賛 2313.しもやけ(凍瘡)

 昨年の暮あたりから、手にしもやけができ始めた。痒いしちょっとどこかにぶつけると強い痛みを感じる。最初に出たのが右手小指の外側だ。冷たい机の上で書類を書く時に当たる部位である。それが徐々に薬指→中指→人差し指にと広がってしまった。精神科病院では鍵の開け閉めが多くて鍵を回すたびに指に当たって痛い。

 しもやけ(凍瘡)は急激な温度変化により身体末端の血流異常をきたすことで起きると言われている。真冬よりも寒暖の差が大きい晩秋から初冬・春先にできやすい。童謡「たきび」の2番の歌詞に「さざんかさざんか咲いた道 たきびだたきびだ 落ち葉たき あたろうかあたろうよ しもやけおててがもうかゆい」とあったのを思い出す。さざんかの開花は椿よりも早い10月~2月頃である。しもやけの症状は大きく二つに分かれ、指全体が赤く腫れる「樽柿型」と赤いブツブツや小水疱が多数できる「多型滲出性紅斑型」がある。前者は子供に多く、後者は成人に多いとされる。治療としては血管拡張作用のあるビタミンE配合の軟膏を塗布し、発赤がひどい時にはステロイド軟膏を使用することもある。

 今回はなかなか重症で、軟膏は塗っているが、治りが悪い。勤務先で感染症対策のために頻回にアルコールで消毒しなくてはならないのと、病棟との間を歩く間、冷たい強風にさらされるのもよくないような気がする。そもそも朝出勤するとすぐに冷たい机の上で書類を書いていたのが原因と思われるから、一種の職業病みたいなものである。春の到来を待とう。

 

2025年2月 2日 (日)

神経質礼賛 2312.原因の如何を問わず実践第一

 強迫観念は不安を呼び起こす好ましくない考え、イメージ、衝動が頭の中に繰り返し割り込んでくることをいう。実際の体験が引き金になることが多い。例えば車を運転中にたまたま道路から衝撃を受けて、もしかして人を轢いてしまったのではと心配になってそのことが頭から離れなくなるようなものである。それをそのままにしておけば消失していくのだが、同じ所に戻って確認するような強迫行為をしてしまうと深みにはまっていくことになる。

 実際の体験はなくて本で読んだだけでも気になり続ける人もいる。森田正馬先生のもとに講談雑誌の読物「女給可愛や盗んでまでも、恋の大穴五萬円」を読み、その金額が気になって仕方がないと訴える25歳の農業の男性からの手紙に対して次のように返信しておられる。

 治療上の直接の要点は、自分の不快や不安の気分を一層するために、決して色々に判断し或は研究して之を解決しやうとしてはなりません。只不安、苦悩のまゝに日常の仕事をし、又は自分の好きな事をして日を送れば」よいのであります。
 それは例へば、家康の家訓の「重きを負ひて遠きを行くが如し」で、苦痛をしのびながら、日常の生活をして行けばよい。タッタそれだけの事です。
 色々理屈を知るために、却つてあやまりたる人生観におち入り、強観(強迫観念)となるので、むしろ何も知らないで人並にやつて行けばよいのです。実際に治るのに、只其実行だけでよいのですけれども、しかし人は例へば畳のヤケ穴でも、気が付かなかつた前には何でもないものが、一度偶然に気がついて目に見へれば、其後は之が見へない様に気にならぬ様にする事の出来ぬと同様に、一度出来た知識は其まゝ思ひすてる事も、忘れる事も出来ません。況んや強観に於ておやです。仕方ないから只苦しいまゝにこらへてやつて行く外ありません。(白揚社:森田正馬全集第4巻 p.576-p.577)

 難しい理屈はいらない。気になるまま、それを消そうとあくせくせず、普通の生活を送って行くのが強迫観念の最善の治療法なのである。

 

2025年2月 1日 (土)

神経質礼賛 2311.干柿と干芋

 友人から旅行のお土産に干柿をもらった。一個ずつパックされ、袋には「富山干柿」と書かれ、エージレスが入っていて日持ちするようになっている。生で食べる柿は平たい形をしているが、干柿にする渋柿は尖った形をしている。公園などで鮮やかな赤色に染まった渋柿を見かける。鳥たちも渋くて食べられないことを知っているのだろう。乾燥させることで渋抜きができて甘くなって食べられるようになる。私が子供の頃は親類の家に行くと、軒下に干柿が吊るしてあるのを見かけたものだ。貴重な保存食、子供たちにとっては嬉しいおやつだった。干柿の表面は白い粉のようなものがびっしり付いている。一見、白いカビが全体に付いているようで、神経質としては食べるのをちょっと躊躇したくなる。しかし、これは柿の実の糖分が結晶化したもので、何ら問題ないらしい。

 干柿と同様、乾燥させた保存食に干芋がある。干芋の表面の白い粉も同じであり、芋の糖分である。私の母は「芋切干」と呼んでいて大好物だった。よくスーパーで売っている茨城産のものを届けたが、やっぱり地物の方がいいと言われたものだ。干芋は何と静岡県が発祥の地だそうである。江戸時代、薩摩藩の御用船が御前崎沖で座礁した。乗組員たちを救助して手厚く介抱したのは御前崎の住人たちだった。薩摩藩は礼金を渡そうとしたが、固辞されたため、お礼として積み荷のサツマイモ3本を渡し栽培法を伝授した。それが遠江国全体に広がり、さらに煮たり蒸かしたりしたサツマイモを薄く切って乾燥させて保存食にする工夫が行われたという。
 さらに茨城県で干芋が作られるようになったきっかけは、これまた海難事故だそうだ。明治時代に茨城の船が静岡県沖で難破して救助され、その時に静岡の干芋の存在を知った人が茨城で干芋を生産して広まったという。まさに災い転じて福となる、の食品だった。

 

2025年1月30日 (木)

神経質礼賛 2310.千葉集談会の講演(2)

 日曜日は生活の発見会・千葉集談会から依頼された講演の日だった。朝9時前の新幹線に乗って東京へ向かう。快晴で富士川鉄橋あたりから富士山の全貌が見えてくる。三島に通勤していた頃は、毎日この景色を眺めていたものだ。新富士駅を過ぎてからカメラ撮影に適したポイントがあって、写真を撮っておく。東京駅から千葉に向かう。慣れたところで秋葉原まで山手線で行き、総武線各駅停車に乗り換える。そして、市川駅で快速を待って乗り換える。千葉駅でモノレールに乗り換えだ。市役所前まで一駅。かわいらしい2両編成のモノレールがビルの間を縫うように蛇行して走っていく。出口から会場の千葉市中央コミュニティセンターは直結していた。会場の6階に上がったのは1時間以上早い12時前だった。市民サークルの女性コーラスの練習が聞こえる。休憩室で待機していると、メールで連絡を取り合っていた担当の方から声を掛けられ、会場に入った。

 会場参加者は予定を上回る20名ほどになっていた。地域新聞に紹介された記事を見て来て下さった方が数名おられた。昨年の大河ドラマの影響か、「平安朝の神経質たち」というオマケ部分が多少は引きになっていたかも知れない。それにWeb参加の方もおられた。音声がハウリングを起こして聞きにくいということで、担当者さんは機材の調整に大忙しで神経質全開である。まず、自己紹介をしていく。いろいろな症状の悩みやお子さんの問題について語られる。私も自分の体験を話した。その後、講演である。メンタルヘルス岡本記念財団での講演の反省から、原稿は一切読まず、パワーポイントの表示だけを見て話していった。皆さん、熱心に聴いて下さり、予定の1時間10分ちょうどで話し終えた。質疑応答の後は、3グループに分かれて討論会が行われた。私も一つのグループに参加。初めて参加された方が二人おられて、どちらの方も娘さんに発達障害があって、対人関係や親子関係の悩みを語っておられた。少しアドバイスさせていただいた。最後に記念撮影をして、片付けをしてぴったり時間通りに終了。その後、会のメンバーと私の7人で近くの居酒屋で反省会。帰りはモノレールでまた千葉駅に戻り、今度は総武線快速で東京駅へ。下り新幹線はとても混んでいて、21時過ぎのひかりに乗るためホームで30分近く待った。とても充実した一日だった。会の運営にあたられたスタッフの方々に深く感謝します。

2025年1月26日 (日)

神経質礼賛 2309.セルフレジ化

 いつも家から歩いて買物に行くスーパーが先週突然セルフレジに変わっていた。今まではレジで店員さんが商品のバーコードを一つずつレジの機械で読み込んでは別のかごに移し、そのかごを精算機の方に回し、客は現金やプリペイドカードやクレジットカードで支払うという方法だった。今度は全部自分でやらなくてはならない。案内表示と音声案内に従って操作していくことになる。要領がわからずマゴつく。まずはエコバックを機械にセットするよう指示される。その後は商品のバーコードを読ませていくわけだが、バーコードリーダーの読み取り窓がどこにあるのか分かりにくい。それに、今までは商品のどこにバーコードが付いているのか意識したこともなかった。あれ、読み込めないぞ、と思って二度読み込んでしまう失敗もある。今は店員さんが待機していて、ヘルプしてくれるけれども、そのうち、そうしたガイド要員もいなくなるだろう。早く慣れないと困ったことになりそうだ。

 ユニクロのセルフレジのように、商品のタグ情報を機械が無線で読んでくれると助かるのになあ、と思う。そのユニクロ、最近、初任給を30万円以上に上げるというニュースがあった。人件費は高騰するし人手不足、という状況がこれからも続きそうだ。それをカバーするためにこれからもセルフレジの店が増えて行くだろう。それは仕方がないけれども、高齢者や目や耳の不自由な方でも容易に使えるものにしてほしいと思う。

 

2025年1月23日 (木)

神経質礼賛 2308.化学の問題に枕草子が?

 この前の週末に大学共通テストが行われ、日曜日と月曜日の新聞に問題と解答例が出ていた。例年、私は全く関心がなく、そのページを見ることはない。今回は、化学の問題に枕草子が出た、と話題になっていたので、見てみる。

化学 第2問 問1
 発光に関する記述のうち、下線部が化学反応ではないものはどれか。最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①  科学捜査において、鑑識がルミノール反応による光を利用して血痕を検出した。
②  お祭りの屋台で、ブレスレット(腕輪)型のケミカルライトが光っていた。
③  1916年のパリ自動車ショーで初めて公開されたネオンサインの光は人々を魅了した。
④  夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ。蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、(蛍が)ほのかにうち光りて行くも、をかし。(清少納言『枕草子』から抜粋・改変)

もちろん、化学の問題であるから、古文が全くわからなくても影響はないようになっている。洒落たことをする出題者だな、と感心する。ちなみに正解は③である。ネオンサインは放電によって発光するもので、化学反応とは無関係である。
 今回の共通テストでは新たに「情報」という科目が登場していて、時代の流れを感じさせる。

 大学受験生たちにとってはこれからが志望校の試験で勝負所だ。共通テストで思ったようにできなかった人たちもがっかりしないでダメモトで食らいついて欲しい。大逆転だってあり得るのだ。そして、緊張を恐れる必要はない。誰でもあがるし緊張するのだから、緊張しながら・焦りながら目の前の一問一問を解いていけばそれで良い。最後の最後まであきらめないことだ。

 

2025年1月19日 (日)

神経質礼賛 2307.千葉集談会の講演

 昨年、生活の発見会の千葉集談会の方から講演を依頼されて引き受けた。来週1月26日(日)の予定である。連絡を担当されている方はさすがに神経質の行き届いた方で、細かいところまで抜かりなくメールで連絡して下さる。テーマは「神経症と森田療法 付・平安朝の神経質」としている。会場からWeb中継もするとのことで、カメラが向けられるとちょっと緊張するなあ、と少し心配にはなる。すでに生活の発見誌1月号の告知板に掲載されている。主要テーマの部分は、昨年メンタルヘルス岡本記念財団の講演内容に近いもので、おまけの平安朝の神経質では、当ブログで紹介した、菅原道真・藤原道長・藤原実資・紫式部の話である。歴史に名を遺した平安朝の偉人たちも神経質だったということで神経質を礼賛する内容である。

 ところで、昨年の大河ドラマ「光る君へ」に紫式部(ドラマでは「まひろ」)の従者・乙丸役で登場していた矢部太郎さんが描いた絵画・漫画本「光る君 絵」を注文していたのが昨日届いた。矢部さんはお笑いの仕事をされていたのだが、漫画界でも活躍して手塚治虫文化賞を取っておられる。ドラマの中ではまひろの幼少期から晩年までそばに仕える乙丸役。体を張ってまひろを守ろうとするが小柄で非力なためボコされてしまったりもする。純朴で微笑ましいキャラクターには好感が持てる。矢部さん本人の性格がにじみ出ているのではなかろうか。この本の絵や漫画もほのぼのとした感じがいい。各回のドラマのイメージを示す淡い色の水彩画は優しさが満ち溢れ、ドラマ撮影の裏話の漫画があって面白い。薄い本だからあっという間に読み終わってしまうけれど、子供の絵本のように、時々眺めて楽しむことにしよう。

 

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