2017年2月20日 (月)

神経質礼賛 1358.吉祥寺

 高校時代所属していた弦楽合奏部の私より5年下で東京在住の人たちがよく集まって練習している。ヴァイオリン2人・ヴィオラ1人・チェロ1人でちょうど弦楽四重奏ができるメンバーなので、この集まりは長続きしているらしい。時々私にも「よかったら参加しませんか」とお誘いがかかる。一昨日は定例のメンバー以外に私や他のOBも加わって8人で合奏を楽しんだ。会場は吉祥寺にあるY楽器の練習用貸スタジオである。

 土曜の半日の仕事を終えてそのまま楽器を肩にして東京へ向かう。あいにく見たい展覧会がないので、そのまま吉祥寺へ直行する。吉祥寺駅で降りるのは初めてである。集合時刻まで1時間半。事前に見どころを調べていなかったので、駅の案内地図を見て南口から井の頭公園へと向かう。路上禁煙となっていて、平気で喫煙している不届き者はほとんどいないのはとてもよい。寒いけれどもそれなりに人はいて、池には家族連れやカップルのボートが行き来している。桜の季節ならば池の周りが花満開になって賑わうだろうと思う。また駅に戻り、今度は北口へ出る。有名なハーモニカ横丁がある。まだ4時前だというのに立飲み屋には結構客が入っている。ちょっと新宿駅西口の思い出横丁を思わせるけれども、飲食店だけでなく古くからの和菓子屋があったり花屋があったり衣料品・雑貨店もあったりしてとても面白い。つい徘徊してしまう。横丁を出ると長い行列ができていて、メンチかつの評判店らしい。昔風の大きな乾物屋も健在だ。明るいサンロードという商店街もあるけれども、やはりこのハーモニカ横丁の存在感は大きい。周囲に懐かしい昭和の風情を発散している。

 事前に中心メンバーである写真家のK君が会場までのルートを詳しく書いたメールを送ってくれていたので、迷わずにビルの5階の中にあるスタジオに入ることができた。こういう神経質は実に助かる。定刻にメンバー全員が集合し、モーツァルトを中心にハイドンやバルトークなどの弦楽合奏曲を次々に弾いた。ヴィヴァルディ「四季」もなんと全曲弾いてしまった。2時間半があっという間に過ぎ、二次会へ向かう東京勢と別れて帰宅の途についた。

 そういえば吉祥寺に吉祥寺というお寺はないよなあ、と気になる。神経質ゆえ調べてみると、本郷にあった吉祥寺が江戸時代の明暦の大火で焼失し、焼け出された門前町の住人達がこの地を開墾して吉祥寺に愛着を示して吉祥寺村と称したのが始まりなのだそうだ。古いものを残しながら新しいものを開拓する精神が脈々と現代につながっている。住みたい街としてよく挙げられるのも納得できる。

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2017年2月17日 (金)

神経質礼賛 1357.確定申告

 二月は逃げる、三月は去る、とよく言われる。この慌ただしさの要因の一つは確定申告だと思う。保健所の精神保健相談や措置診察で発生した給与所得があるので、10万円にも満たない金額ながら、確定申告をしなくてはならない。今ではすべてを自宅のパソコンで済ませるe―TAXという方法もある。しかし、それでは何となく心配で、例年、国税庁のホームページで申告書を作成して税務署に持ち込んでいる。

パソコン画面で入力していて、わからないことが起きた。まだ学生である子供の国民年金保険料を払っているのだが、画面でそこの入力欄がグレーに塗られていて、入力できないのである。検索してみると「給与所得の入力画面で国民年金保険料等の金額が入力できない」という記事が見つかる。それによると、国民年金保険料等の金額は「所得控除の額の合計額」に含まれているので入力の必要がない、とのことだ。とはいえ心配なので、昨年の給与明細に印字された毎月の社会保険料を合算して、さらに国民年金の額を足してみたら、確かに一致したので納得した。

今年の確定申告が昨年以前と異なるのは、本人と扶養家族全員のマイナンバーの記入が必要な点である。その入力画面が出てきてちょっと慌てるが、神経質ゆえ家族全員のマイナンバー通知カードはスキャンしてパソコンに入れてあるので、すぐに入力できた。確認しながら1時間足らずで入力作業は終わり、プリントアウトする。

税務署へは歩いて20分ほど。いい運動だ。駿府城公園の中を通って行くと、体育の授業で長距離走の練習をしている中高生たちに追い抜かれていく。税務署で昨年と異なるのは、確定申告書を提出する際、紙に氏名や電話番号を記入させられたことである。行列に並び、5分ほどで税務署を後にした。外堀近くに梅の花が咲いているところを見つける。枝には鳥のつがいが止まっていて微笑ましい。嬉しくなって写真に撮る。これから春の花々が次々と咲いていく時期だ。それとともに私にとっては花粉症も「鼻」盛りとなる有難くない季節でもある。

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2017年2月16日 (木)

神経質礼賛 1356.美しく青きドナウ

 今朝、NHKのニュースを見ていたら、聞き慣れない「美しく青きドナウ」が流れていた。よくTVで見るウィーン・フィルのニューイヤーコンサートのような大編成のオーケストラではなく小規模な室内楽に合唱団が加わった編成だった。今年はヨハン・シュトラウス二世の名曲「美しく青きドナウ」が作曲されて150周年。作られた1867年は日本では大政奉還の大きな変動の年である。当時、オーストリア帝国はプロイセンとの戦争に敗れ、伝染病の流行もあり、国民はすっかり意気消沈していた。当初の歌詞は現在のそれとは異なり、アマチュアの警察官が作ったもので、「苦しんだって悩んだって何の役にも立たない。だから愉快に行こう」というような内容だったという。150周年を契機に、オリジナルの歌詞が注目されているそうである。現在のヨーロッパ諸国も深刻な移民の問題や経済の問題を抱えていて沈滞ムードである。どうにもならないことに悩むことよりも今を生きることに目を向けるべきではないか、というわけである。

 私たち神経質人間も過去の失敗をいつまでも引きずり、「自分はダメだ」とクヨクヨ悩みがちである。反省することはとても良いことではあるけれども、過去は変えようがないのだから、今できることをやっていく他はない。ウィーンだったらウィンナワルツを踊るもよし、そして森田正馬先生の形外会では東京音頭を踊っていた。時には理屈を忘れて頭をからっぽにして音楽に身を任せて体を動かすのも良いものだ。

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2017年2月13日 (月)

神経質礼賛 1355.ヴァーチャル・セデーション

 先週、職員向けにちょっと変わった体験型の講習会があった。精神科薬の副作用の一つである過鎮静を体験してもらおうというものだ。装具により目の前にスマホがセットされて画面を見て、イアホンで音を聞く。上下左右に首を回すと景色もそれに合わせて流れるので、あたかも実際にその場にいるような感覚になる。5分間ほどのプログラムで、歩道を歩いていて向かってきた自転車が避けにくかったり、調剤薬局で薬をもらう際にも不便したりする状況を体験することができる。この仮想鎮静のシミュレーション・セットはある製薬会社さんが開発した資材であり、実によくできていると感心した。

実際に薬を飲んで体験というわけにはいかないけれども、風邪薬に鼻水止めとして入っているような古いタイプの抗ヒスタミン剤を飲んだ時の頭がボンヤリして何となく体がだるいような感じはどなたも経験されたことがあるはずだ。そのひどいのが過鎮静だと思っていただけるとわかりやすいだろう。この副作用を逆用して睡眠改善剤という名目で市販されている薬(ドリエルやネオデイなど)もあるが、飲みすぎると翌朝もボーとして仕事や勉強に支障をきたしそうである。

どんな薬にも多かれ少なかれ副作用はある。幻覚妄想状態や気分障害に対しては副作用に注意しながら薬を使っていかざるをえないけれども、神経症の不安や不眠の場合はできるだけ「無脳薬」に越したことはない。

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2017年2月10日 (金)

神経質礼賛 1354.LDLコレステロールの怪

 郵送されてきた健康診断の結果を見て妻が悲鳴を上げる。動脈硬化の原因とされ悪玉コレステロールと呼ばれているLDLコレステロール(LDLC)が高値だったのだ。「こんなに気を付けているのにどうしたらいいのよ!」と。何しろ野菜や大豆製品は大量に摂取しているし、肉よりは圧倒的に魚が多く、冷凍食品は使わず、揚げ物は一切家では作らない。LDLCを下げるという食品ばかり食べているのに異常高値で、揚げ物やインスタントラーメンを時々隠れ食い(笑)しているその夫は正常値というのは許せない、というわけだ。八つ当たりされては困るので、女性は年齢とともに高くなりやすいことを説明し、2014年に発表された新基準をプリントアウトして見せた。

 従来からの基準だとLDLCの正常値は60-119mg/dlであり、140以上だと治療対象とされてしまう。しかし、日本人間ドック学会が新たに示した正常値は男女別、女性については年齢別になっていて、男性が72-178、女性が61-15230-44歳)、73-183(45-64)84-190(65-80)と大幅に緩和されている。もっとも、この基準はまだ医療界に浸透しているわけではない。すでに高脂血症としてコレステロールを下げるスタチンと呼ばれる薬を飲み続けている「患者」さんが多数いるのだから、今さら変えられても、ということなのだ。

 従来から安易にスタチンを処方することに懐疑的な医師は少なくなかった。そもそもLDLC悪玉説に疑問を投げかける研究者もいる。LDLCは細胞壁を作る上で重要な役割を果たす体に欠かせないものであるし、LDLCが高い方が感染症に強く長生きできるという研究結果さえあるという。HDLCが善玉でLDLCが悪玉と簡単に決めつけるのはおかしいということだ。「善悪不離」と書かれた森田正馬先生の色紙が思い浮かぶ。

 結局は食生活が偏らないように気を付けて適度に歩いていれば、コレステロールを下げる薬を飲まなくてはならないケースはそれほど多くないのだろうと思われる。

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2017年2月 6日 (月)

神経質礼賛 1353.確認しようかどうしようか

 毎年2月第一土曜日の午後は指定医会議と称するものがあって、県内の精神保健指定医が集められて、県のお役人様の有難いお話を聞かなくてはならない。各病院に通知があり、参加者名をFAXで1週間前までに県に送る。勤務先の病院ではいつも私が一人で出ることになっている。例年通りFAXを送り、机の上にたまった書類を整理した時に通知の紙も処分してしまった。さて、会議前日になって、開始時刻は手帳にメモしてあるものの会場を書いてなかったのに気付き、もし場所が昨年と変わっていたらどうしようと心配になる。かれこれ20年ほどこの会議には参加していて、ここ数年は同じ県関係の施設の同じフロアで行われているが、以前、何度かはその近くの別の施設で行われたことがあった。もっと以前はそこからだいぶ離れた別の施設で行われていたこともある。確認しようかどうしようか迷う。県の担当科に電話して確認するか、はたまたその会議後に同じ会場で薬の宣伝がてら講演会を行っている製薬会社の担当者に電話して確認するか。もし、会場がいつもと違っていたら、絶対に気が付いているはず、いつもと同じ会場だから手帳にメモしなかったのだ、と自分を信じて確認しないことにした。当日、昨年と同じ会場へ行き、入口のホワイトボードに会議名が書かれているのを見て安心した。

 私には確認癖がある(829話、1012)。朝出勤する時に鍵を閉め忘れてはいないか気になることがある。定期券・サイフ・病院の鍵を忘れたら大変なので、ポケットを手探りで確認する。香典袋を出す時には万一お金が入っていなかったら大恥であるばかりか先方にも大迷惑をかけるのでこっそり確認している。ただし、確認しても1回だけに留め、時間がなければ心配になっても確認せずに次に進むようにしているから、実生活上問題はない。この程度ならば単なる確認癖で済み、ミスを減らせて悪くない。むしろ良いことである。しかし、安心を得るために2回目の確認をしたら必ず3回目の確認をしたくなって、確認回数は際限なく増えていく。本人もそれだけ何度も確認する意味はないとわかっていてもやめられなくなり、ついには日常生活にも支障をきたしてしまう。確認に悩んでいる人には、「意味がある確認は1回だけ」「気にはなっても次の行動」といつも話している。

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2017年2月 3日 (金)

神経質礼賛 1352.「エア恵方巻き」のすすめ

 今日は節分。デパートやスーパーには一斉に恵方巻きが並ぶ。有名な神社で祈祷済みとのシールを張られたものもある。巻寿司風に作られた和菓子や洋菓子も見かける。これは20年近く前に、コンビニのセブン・イレブンが「恵方巻き」の名称を付けて全国販売して急速に広まったものだ。大阪で節分の時に商売繁盛の縁起担ぎで「丸かぶり寿司」を食べた風習が元らしい。節分の晩に、その年の恵方を向いて願い事を念じながら太巻寿司を丸かじりすると、願いがかなうそうだ。

 しかし、心配性の私はこの習慣が広まるのは危険だと思っている。お正月には餅を喉に詰まらせる誤嚥・窒息事故が多いのは皆様も御存知かと思う。そして、実は巻寿司の誤嚥・窒息事故も意外に多いのである。海苔が付いていることで、御飯単独の場合よりも誤嚥・窒息リスクがはるかに高くなる。特に高齢者の場合危険である。

 それに、いろいろな具が詰まったせっかくの巻寿司を味わわずにあわてて詰め込むのはもったいない。願い事の儀式は、「エア恵方巻き」(真似事)で済ませて、巻寿司はゆっくりとおいしく食べることを提唱したい。

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2017年2月 2日 (木)

神経質礼賛 1351.黒はんぺん

 冬の食べ物と言えば鍋料理、おでんを思い浮かべる方が多いことだろう。どこかで書いた気がするが、私が住んでいる街のおでんは全国区のおでんとかなり違いがあり、静岡おでんと呼ばれている。牛スジ肉でダシを取った黒色のスープで、具には必ず黒はんぺんが入る。そしてカツオブシの粉と青のりをかけて食べる。子供の頃、駄菓子屋にもおでんがあって、1本五円だったから、子供たちが小遣いの十円玉を握りしめて買いに行ったものだ。はんぺんは「D」字型の黒はんぺんが当たり前だと思っていたけれども、それは静岡県それも中部地区だけのことである。勤務先の病院食に黒はんぺんが出た記憶はない。献立にはんぺんと書かれているとふわふわした白い(普通の)はんぺんである。先日も「はんぺんピザ焼」というメニューがあり、やはり白いはんぺんだった。

 黒はんぺんはイワシやアジを材料に作られる。おでん以外の食べ方としては、軽く火で炙って(あるいはオーブントースターで軽く焼いて)これまた特産品のワサビ漬けを付けて食べると大変おいしい。若い人だとマヨネーズを付けて食べたりする。そして私の好物・黒はんぺんフライは静岡の総菜売場には大抵置かれているし、酒場の肴の定番である。

 よく製薬会社が医師向けの講演会ネット動画でEPAやDHAを含む多価不飽和脂肪酸製剤を宣伝している。脂肪肝の予防だけでなく、多くの成人病の予防効果がある。あえてそうした薬を飲まなくてもイワシやアジを主材料としている黒はんぺんを適度に食べればEPAやDHAがたっぷり摂れるのである。ここで適度にと書いたのは、体に良いからと大量に食べると尿酸値を上げる可能性があるからだ。とにかく黒はんぺんの健康効果をもっと売り込んで全国区の食品になってほしいものだ。カツサンド・ハムカツサンドのようにヘルシー黒はんぺんカツサンドがあってもよい。

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2017年1月30日 (月)

神経質礼賛 1350.ローカル路線バス

 勤務先の病院は山の中腹にある。外来患者さんからは「山の病院」などと呼ばれている。移転前は三島から裾野・御殿場を結ぶ県道に近く、路線バスも1時間に4本位あって、私も路線バスで通勤していた。いざとなれば駅から歩くこともできた。現在の地に移転してからは山の住宅街に上がっていくバスが1時間に1本あるかないか、とても不便である。特に土日祝日はさらに本数が少なくなる。朝、駅へ向かう便はそれなりに通勤・通学の人が乗っているが、それ以外はスカスカである。当然、本数は年々減る一方である。通院患者さんをマイカーで送迎している親や兄弟が高齢になって運転が大変になってきたので、他の医療機関を紹介してほしいと頼まれることが時々ある。

こうしたローカル路線バスの状況は都心を除く全国どこでも同じで、マイカーの普及により、路線バスの採算悪化⇔不便なため利用者減少という悪循環に陥っている。バスの減便や路線廃止は車を手放した高齢者にとってはとても困ったことである。

10年ほど続いた「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」という番組がこの1月の第25回で一段落した。何度か見たことがあるが、単なる旅番組と違い、ハラハラでつい最後まで見たくなる番組だ。太川陽介・蛭子能収(えびすよしかず)の二人組がゲストの女性タレントと3人で、ローカル路線バスだけを使って3泊4日で目的地まで行く、というものだ。電車はもちろん高速道路を通るバスやタクシーやヒッチハイクは不可、ネット使用不可という厳しい条件があって、なかなか難しい。地図上にはバス停が書いてあっても、1日1便か2便しかないとか、運行日が限られるとか、その路線は去年廃止されました、ということがよくある。バスが途切れている県境の山越えなどは5kmとか10km徒歩のため暑さや大雨や雪の中では過酷な状況になる。ローカル路線バス網が年々縮小しているので、こうした番組を制作するのは難しくなってきているだろう。この番組ではリーダー役の太川さんの神経質ぶりが目立つ。マイペースの蛭子さんがバスの中で寝てしまうのに対し、何度も地図を確認してバスが繋がりそうなルートを熟考し、運転手さんや案内所の人や地元の人に聞いて情報を集める。あとの二人の体調を気遣い、へこたれそうな時にはムードを盛り上げ、昼食を取っていられない時には三人分の食物を調達する。一日の最後には翌朝のバスの行先と時刻を確認し、皆で遅い夕食を食べる。その時、生ビールをおいしそうに飲む太川さんの表情が実にいい。神経質を駆使していても時には休符があるとよいものだ。

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2017年1月27日 (金)

神経質礼賛 1349.セカンドオピニオンの誤解

 外来に70代後半の男性が初診でみえた。紹介状はない。フラツキが気になって、A病院の脳神経外科を受診し、CTを撮ってもらったが異常ないと言われた。納得できず、翌日、脳神経外科のBクリニックを受診してMRIを撮ってもらったところ、微小な脳梗塞はあるが特に問題はないと言われた。大して薬らしい薬も出ていない。今度は気になって眠れなくなり、神経内科のCクリニッを受診。MRIを撮ってもらい、デパスを処方された。その後またBクリニックにかかったが、まだ御不満とみえて神経科も標榜している当院を受診されたのだった。その間10日ばかり。どうしてそんなに医療機関を変えるのですか、と問うと、セカンドオピニオンがほしいからと言う。

 しかし、これではセカンドオピニオンとは言い難い。本来はある医療機関で治療を受けていて、他の見解があるのでは、ということで紹介状を書いてもらって別の専門家に意見を求めるものである。紹介状なしに次々に受診して同じような検査を受けるのは無駄であるし、この方のように後期高齢者では自己負担はさほどかからないにしても、健康保険組合の資金を無駄に食いつぶすことになる。セカンドオピニオンではなく、単なるドクターショッピングである。

 御本人に対しては、①いくつも医療機関を受診して同じような検査を受けるのは無駄である。同じ医療機関に通院して診断・治療を受けるのが良い。その上で、2、3か月通院しても良くならず他の医師のセカンドオピニオンを受けたいのであれば、紹介状を書いてもらって受診すること。②微小脳梗塞があるとすれば、脳血流の良し悪しで症状が変化しやすく、調子が良い時があったり悪い時があったりするので、一喜一憂しないこと。③デパスのように筋弛緩作用が強い睡眠薬・抗不安薬を服用すると転倒リスクが高くなる。主訴のフラツキを悪化させかねない。眠れないと言ってもどこかで眠っているのだから、そうした薬はなるべく飲まない方が良い。と話しておいた。薬なし、検査なし、カルテ表紙の病名欄は「神経症」。安上がりで実質的なセカンドオピニオンを提供したつもりである。

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