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2006年2月24日 (金)

神経質礼賛 19.病名変更ブームと神経症

 かつて「らい病」という病名が「ハンセン病」という名称に変更され、患者さんや関係者にとっては偏見・差別の改善に大いに役立った。精神科の世界でも、「精神分裂病」という病名が、誤解と偏見を招くとして、「統合失調症」に呼称変更となった。これについては、患者家族会と精神神経学会が時間をかけて議論してようやく決まったという経緯がある。実際、私の所へも、精神神経学会から、無作為抽出で選ばれたので、と呼称変更についてのアンケートが送られてきた。この呼称変更は好評であり、患者さんはもとより、医師の側でも患者さんや家族に対する説明もしやすくなったという利点があり、大変良かったと思う。

 しかし、「認知症」はいただけない。わかりにくいという意見をよく聞く。これは、厚生労働省が急に決めたのだが、その経緯はこうである。厚生労働省は平成166月、「痴呆に替わる用語に関する検討会」を設置。9月に新たな呼称として「認知障害」「認知症」「記憶障害」「記憶症」「もの忘れ症」「アルツハイマー」の6案を提示。ホームページで意見を募ったところ、「認知障害」の支持が最も多かったが、すでに別の概念で使われているため、2番目に多かった「認知症」に決定した、ということである。そもそも6案自体おかしい。すでに「認知障害」が別の概念で使われているならば、最初からはずすべきだし、「アルツハイマー」も痴呆の中の一つの種類でそれ以外に血管性痴呆、レビー小体病、ピック病などがあるので、候補にはなりえない。2番目に多くの支持があったから、という決め方もおかしい。今後長く使われる病名にもかかわらず、十分な議論もなく、わずか半年での決定。せめて「認知不全症」とか「認知失調症」あたりにしておけば、まだわかりやすかったのではないか。

 「神経症」が「パニック障害」「広場恐怖」「社会恐怖(社会不安障害)」「強迫性障害」「全般製不安障害」などのDSMAPA(アメリカ精神医学会)の診断基準)やICDWHO(世界保健機関)の診断基準)の診断名に変わってきたのは、「神経症」の名前が差別的であるとか偏見を招くからというわけではない。世界共通の国際分類の方が、研究の際に便利であり、役所の方でも統計上便利であるためである。最近では、役所に提出する書類はICDの病名コードを記入することが要求されるようになってきた。これは患者さんから見たらどう映るだろうか。「神経症」というとワガママ病とか自分で病気を作っているというイメージがあったが、「パニック障害」などは「病気」であり、病院で「治療」してもらうものであるから、「神経症」に比べたら気が楽かもしれない。

 森田正馬(もりたまさたけ)先生は、当時「神経衰弱」と呼ばれた「神経症」を、あえて「神経質」と呼び、病気として扱わなかったことは、以前に述べた通りである(「神経質は病氣でなくて、こんな仕合せな事はありません」)。症状を相手にせず神経質な性格を生かす努力をしていけば、いつの間にか症状は消えていくものであり、症状を消そうとモグラ叩きをすれば、良くならないばかりか、別の症状が出てくることもある。

 精神医療も「エビデンス」が求められる現在、容易に結果が出せるSSRI(新型抗うつ剤)などの薬物療法が神経症治療の主流になってきたのは無理もないことである。新聞広告でご存知のように、製薬会社も、SSRIの新たな需要を期待して、売り込みにしのぎを削っている。しかし、それは、あくまでも対症療法に過ぎない。これに対して「患者」自身の努力が求められ、手間ひまかかる森田療法は根本療法なのである。

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