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2006年3月10日 (金)

神経質礼賛 29.不可解な保健所の御指導

 精神科医療では、作業療法を含むリハビリテーションの重要さが認識されるようになってきている。ただ薬を服用してもらうのではなく、生活習慣を改善していくことで、よくなる部分も大きいのである。まして、神経症の治療法である森田療法では作業中心の生活が重要であり、行動を通じて森田理論を体験的に理解していくのである。

 ところが、お役人様の頭の中はそうはいかないようだ。毎年、何度か保健所のお役人様たちが病院に医療監視にお見えになり、医療上の問題がないか、患者さんの人権上の問題がないか、とお調べになって行かれる。いつもクレームが付くのは、森田療法の作業である。「タダで働かせるのはけしからん。賃金を支払わなければ使役にあたる」ということで、患者さんが自分たちの部屋や廊下の掃除をすることまで問題視される。職員に掃除させるか業者を雇ってやらせなさい、である。

 お役人様たちは、御自分たちのお部屋は御自分では掃除なさらないのだろうか。召使をお雇いなのだろうか。よほど裕福な人間か上級公務員でもなければ、身の回りの掃除くらいは自分でやるのが当たり前であり、生きていく上で必要な作業なのである。したがって、病状の悪い患者さんならばともかく、退院して社会復帰していくような患者さんには、掃除も大切な治療の一環だと思う。かつて、宇都宮病院事件が問題になった時代は、患者さんの人権が軽視されたり、「使役」にあたるような労働を強制していたりしたケースがあり、そうしたことが二度とないように、とお役所がチェックすることは当然であるが、「人権」をはきちがえては困る。薬を飲みさえすれば、あとは食べて寝てタバコを吸っているだけ、というのではいつまでも社会復帰はできない。病院はホテルではない。治療の場である。

 ついでに言うと、保健所の指導では、「患者さんがいつでもタバコを吸えるように配慮しなさい」とのことである。これも「人権」のはきちがえかと思われる。健康増進法で、公的な場所が禁煙となり、一般病院が全面禁煙化されつつある中で、精神病院だけが喫煙促進はないだろうに、と思う。統合失調症などで長期入院している患者さんたちは、生活習慣病を合併しやすい。長期の喫煙のため、肺気腫・COPDをきたしたす人もいれば、脳梗塞や狭心症の原因となることもある。私が担当していた患者さんで長年の喫煙の末、肺癌(扁平上皮癌)で苦しみながら亡くなられた方もいる。逆に、院内全面禁煙をすすめる方が、患者さんたちの健康増進・QOL(生活の質)向上につながり、医療費抑制にもなることが、お役人様たちにはお分かりにならないのだろうか。

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