神経質礼賛 80.自己愛性人格(パーソナリティ)障害
前回の社会的ひきこもりで自己愛の病理について触れたが、最近はそうした傾向を持った人が増えているようである。「他人を見下す若者たち」というような本がベストセラーになっているが、「自分以外はみんなバカ」と根拠のない有能感に浸る若者たち・・・自己愛性人格の若者たちについて書かれているようである。
昔から社会的に成功している自己愛性人格の人間はいた。その傾向を持った「お山の大将」型大学教授はありがちである。ことに医学部教授ともなると、「白い巨塔」ではないが教室傘下の病院に派遣する医師の人事権を握っているので、王様状態である。誰も逆らうわけにはいかない。関連病院や製薬会社から種々の名目でウラ金が流れ込んでくる。カネも名誉も独占できる立場にあっては、まさに唯我独尊であり、自己愛が満たされる状態である。かつてクラシック音楽界に君臨した指揮者のカラヤンも自己愛性人格障害だったと言われている。貴族の称号を示す「フォン」を入れた「ヘルベルト・フォン・カラヤン」と自称し、ジェット機を操縦し、スキー・オートバイ・ヨットの腕前を誇示し、いつもスポットライトの中心にいなければ気がすまなかった人である。クラシック音楽の普及という意味では非常に大きな功績を上げたが、尊大で傲慢な態度のため関係者からは嫌われていたようである。
しかし、普通は、医学部教授やカラヤンのように、ずっと勝者でいられるはずはない。入学試験、就職、恋愛、人生のいろいろな場面で、必ずどこかで挫折をするものである。そこで自己愛を守ろうとすれば自己が傷つかないように「引きこもる」ことにもなる。一方、挫折体験を自分の力で乗り越えると、人間的に成長して、人格の問題も改善してくるのだ。
神経質人間の場合はこれとは逆で、「自分ばかりダメだ」と思いがちで、間違っても尊大で傲慢な態度のために周囲に迷惑をかけるような心配はない。
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