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2006年9月29日 (金)

神経質礼賛 110.飲酒運転

 福岡市職員による飲酒運転で幼児3人が亡くなるといういたましい事故が起き、飲酒運転撲滅の機運が高まっている。しかし、毎日のように公務員の飲酒運転のニュースが流れている。飲酒運転は常習性がある。「これくらい大丈夫」「自分だけは事故を起こさない」という過信がどこかにあるのだろう。前述の職員は泥酔状態だったというが、運動機能に影響がない程度の飲酒であっても、判断能力が低下し、運転は極めて危険である。しかも、気が大きくなって、信号無視したりスピードを出しすぎたりするから大きな事故につながりやすい。葬式帰りの車が事故を起こして新たな死者を出すことは時々あるが、決して死者が呼ぶわけではなく、いわゆる「精進落し」で飲んだ酒が原因ではないかと思う。電車やバス、タクシーなどの交通の便が良い都会では、「飲んだら乗るな」が徹底しやすいが、自家用車での移動が大前提となっているような地方では、「乗るなら飲むな」を徹底するしかない。もう20年ほど前、山梨のワイナリーを見学した時、運転者はリボンを付け、ワインの試飲の代りにグレープジュースを試飲するようになっていて、感心した記憶がある。飲食店でもこういった工夫をしたらいいと思う。運転者にはアルコールを出さない代わりに何か一品サービスすると歓迎されるのではないか。最近の新聞記事によると、駐車場付の居酒屋チェーン店で、運転手には「アルコールは飲まない」という誓約書を書いてもらっているところもあるという。

 こと飲酒運転に関しては、神経質の完全主義がよろしい。ちょっとでも酒を飲んだら運転しない。酔い覚ましにコーヒーを飲んでから運転するとか、時間をおいて酔いを醒ましてから乗って帰ればいいや、などという融通はしないものである。

2006年9月27日 (水)

神経質礼賛 109.うつ病とこころの健康づくり(2)

 前回の話の講演の中では、うつ病の症状・治療・家族や周囲の人の対応法について話した。最近は芸能人が自身のうつ病体験を述べることが多くなり、うつ病に対する一般の方々の関心も高くなっている。うつ病にかかった歴史上の人物の話をするとともに、実際に私が診察した「うつ状態」を呈した症例(うつ病だけでなく統合失調症・神経症・人格障害の例も含めて)について話した。具体的内容はここでは省略する。

 こころの健康づくり、ということでひとつ重要なのは、趣味を持つということだと思う。精神科の外来を受診される方々は趣味がないことが多い。「趣味は読書です」といっても最近は本を読んでいない、とか「音楽鑑賞です」といっても「どういう音楽を聴いていますか」と尋ねると答えられなかったりする。「趣味はパチンコ」「(テレビで)スポーツ観戦」という人もいるが、それは趣味というよりは単なる娯楽である(これがパチンコの歴史を研究したり、プロ野球やサッカーや相撲もただ見るだけでなくスコアを分析したり選手のデータを収集するのであれば趣味といってよい)。「ゴルフ」という人も、自分の楽しみではなく、接待ゴルフだったりする。新たに趣味を探すのは大変だと思われるかもしれないが、市町村では安い費用でできる趣味の講座をいろいろ開いている。街の楽器屋さんでは50代・60代から新たに楽器をやってみようという人のための教室もある。そこまでしなくても、碁や将棋をやったことのある人は多いはずで、もう一度テレビの講座を見て改めて始めるのもいいだろう。手軽にできるウオーキングも健康増進を兼ねた立派な趣味であるが、ただ歩くだけではもったいない。街中に住んでいる人であれば、いろいろコースを変えて今まで歩いたことのない通りを歩くようにすると、意外な光景に出会ったり面白そうな店を発見したりするだろう。地図を見れば自分が歩いたことのない通りはいくらでもある。郊外に住んでいる人であればデジカメをポケットに入れて歩き、道端で目に留まった草花や鳥や虫を記録しておき、図鑑で調べてみると楽しみが広がる。

 寸暇を惜しんで仕事や勉強に励まれた森田正馬先生にしても、お弟子さんとよく将棋を指したし、唄や踊りも楽しまれた。ちょっとした趣味でこころのゆとりが作れてリフレッシュできるものである。

2006年9月25日 (月)

神経質礼賛 108.うつ病とこころの健康づくり(1)

 79話で述べた「社会的ひきこもり」の講義が終わってホッとしていたら、保健所から今度は「うつ病とこころの健康づくり」というお題で一般の方を対象とした講演を依頼されてしまった。講演は神経質人間である私の最も苦手とするところであるが、やむをえない。最近よくプレゼンテーションで用いられるパソコンのパワーポイントは便利ではあるが何かトラブルがあった時に悲惨なので、レジュメを配布してそれに従って話すことにした。持ち時間は90分もある。何とも気が重くなる。外来で、年配の患者さんから「市の広報に載っていましたよ」と言われると講演があることを思い出してドキドキである。ヒステリーの女性患者さんから「先生の名前が有線で流れてたよー」と言われると、「頼むから来ないでね(笑)」とお願いしてしまう。1ヶ月がかりで講演原稿を推敲し、講演前日にはやっと原稿用紙45枚分になった。学会発表で原稿を用意する場合、発表時間1分につき400字詰原稿用紙1枚というのが標準であるから90分の半分にしかならないが、ホワイトボードに書いて説明する時間などで何とかなりそうである。ただ話だけでは退屈であろうから、一工夫してうつ病に関連したクイズも用意した。

 病院で二晩連続当直の後、講演当日はやはり落ち着かない。例によって腹の調子もよろしくない。腸がギュルギュル動き回っているのがよくわかる。心拍数も上昇しているような気がする。まあ、いつものことだとあきらめる。病院から講演会場まではバスと電車の乗り継ぎで一時間半ほどかかる。会場に着くと、担当保健師さんから「当初の見込みよりもだいぶ参加者が増えました」と言われ、またまたプレッシャーがかかる。多くの人々に見下ろされながらホールのすり鉢の底での講演である。こうなると、もはやまな板の鯉・屠所の羊であり、緊張していようといまいと関係ない。とにかくやるしかない・・・つかえたところもあったが、まずまずの出来で、聴衆の方々もほとんど眠らずに聴いて下さっていたようだ。

 事前の準備と工夫をするところが神経質の取柄である。私の場合、講演や講義はあと何十回何百回やったとしても今まで通りで緊張することは変わらないだろう。ただ、緊張はしても、下手でも何でも、続けていくことだろう。

2006年9月22日 (金)

神経質礼賛 107.ラッキー君

 品川の水族館(エプソン品川アクアスタジアム)でイルカのラッキー君が人気である。運動神経が鈍く、なかなか芸がマスターできない。「跳べないイルカのラッキー君」としてマスコミに取り上げられ、一躍人気者になった。一生懸命がんばっても、がんばっても、なかなか成果が出ない、というあたりに共感し、自分を重ね合わせてみる人も多いのだろう。その点は高知競馬場で人気者だった連戦連敗の「ハルウララ」と同様である。

 8月にその水族館に行ってみた。おりしも夏休みで小さい子供を連れた人々で館内はごった返していた。館内に入ってすぐの天井パノラマの水槽には圧倒されたが、なにせ品川駅前一等地の手狭な場所であるから、大規模な水族館と比べると他の水槽は少々見劣りがしてしまう。イルカのショーを見る。始まる40分前から席を陣取る。開始直前には満席で、階段通路に座って見ている人たちも多い。大音響のディスコサウンドとともにイルカたちが登場し、華麗なジャンプ技、立ち技などを次々と披露してくれる。アナウンスによれば、ラッキー君は努力の甲斐あって、4m近くの高さまで跳べるようになったそうであるが、この日のジャンプはイマイチであった。出口近くの売店ではちゃっかりラッキー君関連グッズが販売されていた。結果的には跳べないことで水族館の売上に大きく貢献しているようである。

 神経質人間はどうも要領が悪い。新しいことには慎重で、とりかかりが遅い。しかし、地道に努力をするのは取柄であるから、「ウサギとカメ」のカメではないが、いつか追いつき追い越すこともできるのである。ラッキー君だってがんばらなければ、イルカの調教師が諦めてしまっていたら、今の人気はなかったはずである。「どうせダメだ」と決めつけないで、とりあえずやってみる、そして続けてみることが大切である。

2006年9月18日 (月)

神経質礼賛 106.城島選手のこと

 アメリカ大リーグに渡った日本人初の捕手である城島選手はなかなかの活躍ぶりである。マリナーズでイチロー選手とともにプレーしている。二人の活躍にもかかわらず、残念ながらチームの成績は今一つであり、TVのニュースでも「しかしチームは敗れました」というオマケがつくことが多い。捕手というポジションはTV画面では目立たないが、監督に準ずるような極めて重要なポジションである。単に打撃と守備だけやっている野手とは異なり、相手チームの打者の特徴を分析し、配球を考え、野手の守備位置を指示する、といった司令塔の役割が要求される。時には主審との駆け引きもある。言葉の壁のある日本人が捕手としてここまでやれる、というのは驚きである。そして、昔気質のスポーツマンという感じでとても好感が持てる。

 そんな城島選手だが、意外と神経質なようである。平成18年8月23日付け読売新聞の「JOH イン シアトル」というコラムで、「焼酎片手にクヨクヨ」と題して、「僕はクヨクヨするタイプなんで、家やホテルに帰って『あの球打っとけばよかった』とか『あのボール投げさせとけばよかった』とか、けっこうウジウジしてるんですよ」と語っている。そして芋焼酎を飲みながら、その日のプレーを反省するのだそうである。イメージトレーニングで常にプラス思考・惨敗しても自分のいいところばかりアピールする自己愛的な若手スポーツマンとは対照的である。しかし、一人での反省会は夜12時には打ち切るのだそうで、クヨクヨ・ウジウジを出し切った次の日は心機一転、全力プレーで取り組み、よい結果を出している。マイナス思考も悪くはない。要は使いようである。マイナスのマイナスはプラスなのだ。

2006年9月15日 (金)

神経質礼賛 105.照れ性

 以前にも何度か、有名人も緊張するものだ、ということを書いているが、今回の話題は俳優の竹中直人さんである。最初は演芸番組に出演していて、しだいにドラマの俳優として引っ張りだこになり、NHKの大河ドラマにも出演した。最近では映画監督をしたり絵本を出したり、と多芸多才ぶりを発揮している。とても緊張したり照れたりはしそうもない人に見えるが、実はまったく違うのだそうである。平成18年6月26日付の読売新聞夕刊では、「非常に気の小さな男なんで」と照れ性であることを認め「トーク番組は恥ずかしいですよ」と語っている。竹中さんも神経質人間のお仲間だったのである。TV画面ではわからないが、内心はとても緊張しておられるのだろう。しかしながら神経質を生かして四方八方に気を配ることで、いい仕事ができるのであろう。

神経質人間にとって役立ちそうなことも言っておられる。番組収録について「失敗したら失敗したでいい。うまくやろうとするとろくなことがない。結果は運みたいなものですから」とのことである。神経質人間は失敗を恐れ、うまくやりたい、という気持ちが人一倍強い。だからこそいろいろと準備をし工夫もする。しかし本番になったら、ハラハラドキドキしながらも、もう開き直って目の前のことをやっていくしかないのである。そうすることで、神経質の良さが生きて、結果としてはたとえ小さな失敗はあっても、全体的には成功する場合が多いのである。森田正馬先生は、達磨大師の「前を謀(はか)らず、後を慮(おもんぱか)らず」という言葉を引用して患者さんを指導しておられた。あれこれ考えても仕方がない、理屈抜きで今、全力を尽くしなさい、ということなのだと思う。

2006年9月11日 (月)

神経質礼賛 104.牛乳の消費低迷

 近頃、牛乳の消費が落ち込んで、業者は頭を悩ましているそうである。消費者の好みがペットボトルのお茶に代表されるようなさっぱりとした飲み物に移ったからということがある。乳脂肪で肥満につながると思われるふしもある。雪印事件で消費者の信頼を失ったことも一因かもしれない。バター・チーズなどの食品原料としての需要も限界があり、せっかく生産した牛乳を泣く泣く処分せざるを得ないという現象まで起こっている。

 それに加えて、最近では牛乳有害説まで飛び出し、ますますまずいことになっている。平成18年8月18日付け毎日新聞夕刊では『やっぱり「牛乳は有益?」』と題したトップ記事で、牛乳が骨粗しょう症の予防には無効だという説、一種の女性ホルモンが含まれていて有害という説、ヒトが他種の動物の乳を摂取するのは好ましくないという説、を取り上げ、それぞれに対する反論も紹介していた。

 しかし、牛乳が手軽に良質の栄養が摂れる食品であることは確かである。毎日牛乳を何リットルも飲み他の食品を摂らないということでなければ、有害説はあたらないように思う。あまり気にしていたら肉も魚介類も食べられないし、穀物や野菜や果物まで農薬やら土壌の汚染を気にしなければならなくなってしまうだろう。もっと神経質になるべきところは摂取する食品のバランスであろう。

2006年9月 8日 (金)

神経質礼賛 103.ジェネリック薬品

 新聞の広告やTVCMで盛んにジェネリック薬品が宣伝されている。ジェネリック薬品とは特許切れとなった薬と同じ成分の薬を他社(後発メーカー)が安い価格で製造販売しているものである。医療費抑制の目的で厚生労働省がジェネリック薬品を普及させようとしていることが背景にある。CMを見て、「ジェネリック薬品で処方して下さい」という患者さんも増えている。ただ、特許が生きているSSRIのような比較的新しい薬は当然ジェネリックが存在しないので、ご要望には応えられない。

 実は昔からジェネリック薬品は存在した。ただし、「安かろう悪かろう」の日陰者の存在であり、「ゾロ」という隠語で呼ばれていた。病院としては薬価よりも安い価格で買い叩いて仕入れやすいため利ざやを稼ぎやすく、医療関係者の間では「ゾロ」を多用するのは悪徳病院で一流病院は「ゾロ」は使わないというイメージができ上がっていた。また、中小メーカーが製造するため、品質が劣り、供給も不安定という欠点があった。

 今ではジェネリック薬品を製造するメーカーのレベルが上がり、品質や供給の問題は改善されてきた。大手のジェネリック専門メーカーは担当者が病院を回り、副作用情報などを提供するようになり、医療機関の信用もかち得ている。私も、もし自分自身の薬をもらうとしたら薬剤費が安いジェネリック薬品でもいいかな、と思うようになってきた。

 しかし、神経質の立場から、一つだけ注意点を言うと、ジェネリック薬はオリジナル薬と完全に同じではない、ということである。つまり、薬の薬効成分は全く同じでも、薬の基剤・コーティング剤・着色料などの成分は異なる。その結果、オリジナル薬の時は全く問題なかったのに、ジェネリック薬に換えたら、アレルギー反応で発疹が出た、というようなケースが発生しうる。こういうデメリットも周知する必要があると思う。

2006年9月 4日 (月)

神経質礼賛 102.第二次SSRI大戦

 不安障害にも新型抗うつ剤SSRI(選択的セロトニン再取込阻害剤)が多用されるようになってきたこととその問題点については20話で述べた。今まで国内で販売されていたSSRIはフルボキサミン(商品名ルボックス・デプロメール)とパロキセチン(商品名パキシル)の2剤であったところに、今年の7月、新たにセルトラリン(英語読みはサートラリン・商品名ジェイゾロフト)が国内発売となった。外来待合室の一角に各製薬会社の担当者が陣取り、診察の合間を見ては医師にパンフレットや関連論文を渡し、「ぜひ当社の薬を処方してください」と連呼する。販売競争は一層激化し、第二次SSRI大戦といった様相を呈している。製薬会社の担当者は、それぞれ自社製品が他社より優れている点を力説し、他社製品の欠点を強調しているが、どの薬剤も同じSSRIのカテゴリーに属し、効き方や副作用は大同小異といった感じである。いずれにせよ、新薬は発売後1年間は長期処方できず1回の診察で2週間までの処方しかできないという制約があるため、他剤に比べて特別優れている点がなければ処方しにくい。当面は他剤で無効だった場合に使っていくことになるであろう。

 各社とも適応病名を当初の「うつ病」「うつ状態」に「パニック障害」「強迫性障害」を加え、さらに「全般性不安障害」も加えようという流れがある。そして、精神科だけでなく内科や外科の医師にも売り込みを図っている。戦線はどんどん拡大中である。最近は、「内科で抗うつ薬を出されたけれど合わない」といって受診される方が増えつつある。SSRIは服用開始後に悪心・嘔吐などの消化器症状が出やすいが、1週間を過ぎると収まる場合が多い。薬剤について適切な説明がないまま処方されているのではないかと懸念している。また、20話で述べたSSRIの問題点を知らずに内科や外科の先生方が処方され、トラブルが起きなければいいのだが、と思っている。

2006年9月 1日 (金)

神経質礼賛 101.病院のホームページ

 勤務先の病院ホームページに職員紹介のページができ、何か書いて下さいと事務次長に頼まれた。実は、そのホームページを最初に作ったのは私自身である。今から7年前の平成11年のことで、当時はホームページを持っている精神科病院はまだ少なかった。病院にもパソコンは事務長用が一台あるばかりだった。そこで自分個人のノートパソコン(WINDOWS95)上でWORDだけを用いてホームページを作成した。トップページ、森田正馬記念館、森田療法、診療案内からなるシンプルな構成で、写真を含めて容量はわずか239KB。ダイアルアップ回線でも軽快に動いてくれた。その後はホームページのお守りは事務次長にお任せしていたら、次第に内容が盛りだくさんになっていった。もはやホームページが一人歩きしているようである。

 今では高速インターネットが普及し、パソコンも安価になり一人に一台の時代になった。どこの医療機関も立派なホームページを作り競い合っており、まさにホームページは医療機関の「顔」である。新患の方で「ホームページを見て来ました」という方も増えている。それだけにホームページの内容には正確さや公正さが求められる。誤解を招かぬよう、羊頭狗肉にならぬよう、大いに神経質になる必要があると思う。

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