神経質礼賛 130.こちら葛飾区亀有公園前派出所
漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(通称:こち亀)が連載30年間1回も休載なしの長ロングセラーとなり、単行本も150巻を越えた。
この漫画の第1作を私が見たのは21話の耳鼻科医院の待合室にあった漫画雑誌である。作者の秋本治さんは、当初「がきデカ」の作者「山上たつひこ」をもじって、「山止たつひこ」というペンネームで出ていた。単行本の最初の8巻位までは弟が買っていたのだが、その後は何となく私が買い続けた。だから1巻から最近の151巻まで全部持っている。
実際の秋本さんは漫画のハチャメチャな主人公「両津勘吉」通称「両さん」とは似ても似つかない人である。雑学の知識が非常に豊富であり、ディテイル(細かいこと)へのこだわりが強い。漫画の中で歌の歌詞を引用した場合にはJASRAC(日本音楽著作権協会)の承認番号を入れてある。私は以前から、秋本さんは神経質人間であろうと思っていた。先日、書店で「超こち亀」という関連本を見つけ、買ってみると、秋本さんの仕事ぶりが詳しく載っていた。漫画家のアトリエというと、散らかっていて漫画家本人もアシスタントも徹夜続きの不規則生活、というのが一般的である。ところが秋本さんは全く逆で、仕事の時間はきっちり決まっており、昼休みはスタッフも揃ってとるのだそうだ。アトリエというより整然としたオフィスといった印象である。締め切りスレスレに書き上げる漫画家が多い中、秋本さんは何週か分ストックを描きためている。体調を崩すこともあれば、ネタが沸かなくて困る時だってあるはずだが、これだから30年にわたって続けることができたのだと思う。秋本さんはインタビューの中で、「緊張感は今でも持ち続けています」と言っている。また、同じ漫画家の平松伸二さん(ドーベルマン刑事)は「平凡の繰り返しが非凡になる」という秋本さんの発言を紹介している。一つのことを粘り強く続けるのは神経質人間の長所である。「こち亀」がさらに40年、50年とロングランが続くことを期待している。
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