神経質礼賛 153.マーフィーの法則
毎日のように報道される種々の偽装事件や人為的事故を見ていると、マーフィーの法則が頭に思い浮かぶ。
マーフィーの法則はアメリカ空軍が発祥と言われる。If it can happen,it will happen.(起こる可能性のあることは、将来起こる)という考え方をベースとしていて、Everything that can possibly go wrong will go wrong.(うまくいかなくなりうるものは、何でもうまくいかなくなる)というような経験則をいう。
日本では当初、科学研究者や技術者の間に広がったが、1990年代になって大ブームとなった。ちょうど日本ではバブル崩壊の経済危機状態にあり、バブルに踊らされた反省から広く一般に受け入れられたのだろう。この考え方は、一見悲観論的に見えるが、失敗を防ぐという点では、システム設計の際の「フェイルセーフ」や事故・災害の予防にはとても重要である。最悪の事態を想定してそれに備えることでトラブルを未然に防ぐことができるわけである。一方で、これがブームとなった頃は、心理学者たちからマイナス思考だとか悪い自己暗示につながるといった批判も出た。
神経質人間にとってはマーフィーの法則は自明の理であり、この「法則」を知らなくても同じように考えている人が多いことと思う。心配性で取越苦労しやすい神経質は、こうなったらどうしよう、ああなったらどうしよう、とあれこれ心配してしまうものである。しかし、社会で活躍している神経質人間は、心配しながら、行動しながら、悪い事態が起こらないように、あるいは起こっても被害が少ないように工夫して、神経質を大いに生かしているのである。106話で「マイナスのマイナスはプラス」と書いたが、マーフィーの法則の考え方は、「臭い物に蓋」で根拠のないプラス思考よりもはるかに優れていると思う。
中国やインドの経済成長に引っ張られて世界的に好景気であり、日本でもバブル崩壊の反省はどこへやらの昨今である。そろそろマーフィーの法則を思い出さないと、また痛い目に遭う。
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