神経質礼賛 156.グリーグ没後100年
昨年、クラシック界はモーツァルト・イアーで沸いたが、今年はグリーグ没後100年という記念の年にあたる。コンサートで取り上げられる回数も増えることと思う。
グリーグ(1843-1907)はノルウェーの作曲家である。ノルウェーの民俗音楽の影響を強く受けた名曲を残している。よく演奏されるのは、ピアノ協奏曲とペール・ギュント組曲で、中学校の音楽鑑賞で聴いたことがある方も多いことと思う。ピアノ協奏曲の第一楽章冒頭部分はとても印象的な旋律でフィギュアスケートのフリー演技の際の音楽としてしばしば用いられている。ゆったりした第二楽章は心地よく曲に浸ることができる。また、ペール・ギュント組曲の中の「朝」という曲は音楽療法でよく用いられる曲である。TVのCMでも使われたことがある。フルートの爽やかな音色で柔らかな朝日の中で目覚め、しだいに管弦楽のうねりが大きくなっていき、それにつれて太陽も上がり元気が出てくるといった感じである。朝、スッキリ起きられなくて困る、という方は試しにこの曲をかけてみてはどうだろうか。グリーグは交響曲の作曲はしておらず、室内楽曲、ピアノ曲、声楽曲などを残している。いとこで妻となったソプラノ歌手ニーナ夫人の影響もあったのだろう。1894年にフランスでドレフュス事件(ユダヤ軍人の冤罪事件)が起こると、それに抗議してパリでの演奏を拒否する、という毅然とした態度を取っており、強い正義感がうかがえる。彼はノルウェーの民俗音楽に誇りを持っていた。強い愛国心が彼の作曲の原動力だったとも言われている。彼の亡くなる2年前にノルウェーはスウェーデンから独立を果たしている。
このグリーグは小柄でとても神経質だったそうである。小さなカエルの置物を大事にしていて、演奏会の時にはポケットに入れて握りしめ、あがらないようにしていた、というエピソードがある。何ともほほえましいではないか。
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