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2007年3月23日 (金)

神経質礼賛 168.薬を売るために病気はつくられる

 これは最近読んだ本の副題である。レイ・モイニハン、アラン・カッセルズ共著 古川奈々子訳 「怖くて飲めない!」(ヴィレッジブックス発行 1700円+税)の書評を新聞で読んで買おうと思い、大きな書店に行ったがなかなか見つからない。書店の端末で調べると、「在庫僅少」となってはいたが、医学書関係の棚ではなく健康や料理関係のコーナーにあることがわかり、入手することができた。

 この本では、欧米(特にアメリカ)で巨大製薬会社が健康な人々に薬を売りつけるために、新しい「病気」を作り出したり、病気の範囲を広げたりしている実態を暴露している。もちろん製薬会社が直接そうしたことをすることはできないので、ソートリーダーと呼ばれる影響力を持った医師たち、あるいは食品医薬品局(FDA)の有力スタッフたちに講演料や顧問料や研究費などの名目で資金提供をして手なずけ、「病気」の人が増えるように診断基準を変更させたり、効果を過大評価し副作用を過小評価させて薬を認可させているのだ。患者団体にも資金提供を行い、薬が認可されるように運動させる。またその一方で、テレビや雑誌のCMで「病気」の恐怖をあおり、有名人の「闘病経験者」を出して薬によって生活が改善したり重大な「病気」が予防できたりするというキャンペーンを行って、直接消費者に働きかけている。その際、不都合な薬のリスクは伏せて、統計のウソで「病気」の人が非常に多いようかのように宣伝する。それを真に受けたら、健康な人でもいくつも「病気」を抱えていることになり、何種類もの薬を一生飲み続けなくてはならない。身体疾患では高コレステロール、高血圧、骨粗しょう症などが取り上げられており、精神科関連では注意欠陥多動性障害(ADHD)と社会不安障害が取り上げられている。アメリカでは8人に1人が社会不安障害という「治療」可能な「病気」だと宣伝され、SSRIの一つパキシルの売れ行きが爆発的に伸びたと言う。

 この本を読んでみると「やっぱり」という感じである。当ブログでも20話、102話でSSRIの安易な処方に対する懸念をすでに書いたし、13話でADHDの診断を拡大しすぎることへの懸念も書いている。もはや欧米だけでなく日本でも、ソートリーダーと言えそうな私立医大教授たちが、製薬会社の御用雑誌に薬を宣伝するような内容の大量の医学論文を載せ、薬にまつわる講演を繰り返し、医師たちを「教育」しているのである。特にSSRIや新型の抗精神病薬は欧米の巨大製薬会社の製品がほとんどであるので、アメリカと同じような手法が日本でも使われ始めたのだろう。そう言えば在来の日本の製薬メーカーは外資系に次々と買収され、合併で身を守ろうとするのがやっとである。SSRIを売り込みに来る外資系製薬会社のMR(医薬情報担当者)さんたちは皆、若くて元気がいい。自社製品のSSRIを服用しているんじゃないかと時々思ったりもするほどだ。こちらがそっけなく対応しても懲りずに週一回は必ず外来診察室に現れる。たまに「社内研修会の講師をお願いできませんか」と言ってくるが、全部お断りしている。対人恐怖に「社会不安障害」という病名をつけてSSRIを飲ませることには、病気ではないとする森田療法の立場から抵抗があるからだ。この本では、医師に研修会や講演会の講師を依頼し、うまくいけば徐々に大きな講演を依頼し、自社製品をPRするようなソートリーダーを育成していく様子が書かれていた。私もそういう路線に乗っかれば「勝ち組」に入れるのであろうが、神経質のプライド(?)が許さない。

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