神経質礼賛 200.善悪不離 苦楽共存
この言葉は森田正馬先生の言葉の中で、特に私が好きなものである。「楽あれば苦あり」「楽は苦の種、苦は楽の種」という諺があるので、後半は理解しやすいと思う。
神経質人間はとかく白黒をハッキリさせて極端なレッテル貼りをしやすい傾向がある。しかし、これが善でこれが悪だと決められることは実際にはそう多くはなく、たいていの場合、物事には善悪両面があるものである。人間でも完全な善人などいるはずがないし、犯罪常習者や極端な人格障害者でなければまるっきり悪人ということもないはずである。あいつは嫌なヤツだ、と思い込むと毛嫌いしてしまうが、そう思い込んでいる人に親切にしてもらって評価が逆転するという経験はあるだろう。
また、苦しいことはやむを得ないと諦めればよいものを、苦しくないようにしようとジタバタするので、森田正馬先生の言われる強迫観念が起こるのである。要領よくおいしいところ取りをしたくても、そううまくいくわけがない。苦しいのは誰でもイヤである。苦楽はともかく、現実そのままになりきる、すなわち気分にかかわらず行動していくことが肝心である。
アメリカでベック(Aaron.T.Beck 1921- )という精神科医が創始した認知療法という精神療法がある。彼は精神分析を専門としていたが、うつ病患者の夢の内容が悲観的であることに着目し、悲観的な認知を修正することで、うつ病や不安障害(神経症)が改善することを明らかにしたのである。認知療法は今では行動療法とともに、世界的に広まっている。
「善悪不離 苦楽共存」という言葉を座右の銘として、自らを省みれば、偏った認知が修正でき、認知療法同様の効果があらわれると思う。神経質人間にとっては実にありがたい言葉である。
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