神経質礼賛 210.精神科専門医
内科や外科など大部分の診療科では古くから専門医制度があり、臨床医として腕を磨いていく際の大きな目標である。それに対して精神科だけは専門医制度がなかった。厚生労働省の精神保健指定医という制度があって、措置入院や医療保護入院(いわゆる強制入院)の判断を行ったり、隔離・拘束等の行動制限の指示を行なったりする際に必要な資格で、精神保健福祉法を遵守し、患者さんの人権を守る配慮が求められる。指定医があるのだから専門医はいらないという空気も強かった。しかし、指定医というだけでは臨床能力を示すことにならないということで、一昨年から日本精神神経学会の専門医制度がスタートした。当面は過度的措置ということで、レポート審査と口頭試問で判定を受ける。
私にも順番が回ってきて、一昨日、口頭試問を受けに行ってきた。午前中の外来を終わらせてから、新幹線で名古屋へ向かった。ある医大の助教授が口頭試問を受ける時に緊張してしどろもどろになり不合格だったという情報も入っていたので、少々緊張気味である。3人の試験官(大学教授・助教授クラスの医師らしい)から、レポート症例の診断根拠や薬剤の選択理由や心理検査の解釈など次々と質問された。緊張したものの何とか答えられたと思う。15分間はあっという間に感じられた。
試験会場のホテルを出る。夕方になってもコンクリートジャングルの暑さは強烈である。とりあえずネクタイをはずす。祭りがあるらしく、浴衣姿のカップルが多い。地下鉄伏見駅で下車し、ヤマハに立ち寄る。ちょっと期待をしていたのだが、弦楽器の楽譜は少なく、かつてのヤマハ銀座店(現在建て替え中)の3分の1程度しかない。それでも目当てのバルトークのルーマニア民族舞曲の楽譜は入手できた。また混んだ地下鉄に乗る気もしないので、名古屋駅まで歩く。新幹線ホーム下の待合室入口の狭いところに土産品が並べられているので買う。釣銭を手渡され、いつもならばその場で確認するのに、ホームに上がってから見ると、やられた!500円分足りない。神経質力が弱っているとこんなことになる。夕日の照りつけるホームで「ひかり」を待つ元気はなく、名古屋始発の「こだま」に乗り、帰宅の途についた。
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