フォト
無料ブログはココログ

« 神経質礼賛 231.BGM | トップページ | 神経質礼賛 233.脳内メーカー »

2007年10月 5日 (金)

神経質礼賛 232.社会的ひきこもり(2)

 昨年に引き続き、今年も「ひきこもり」講座の講義を依頼され、精神保健福祉センター(保健所)に行ってきた。昨年(79話参照)はまず私が講義をしてから参加者のグループワークだったのだが、今年は順番が逆で、グループワークの後で講義、というようになっていた。参加者の方々はひきこもっている若者(多くは30歳前後の男性)の母親あるいは父親である。県の精神保健福祉センターで行っているデイケアなどに参加されている方もいて、グループワークでは話が盛り上がって予定の時間を大幅にオーバーし、私の講義の時間が短くなってしまうハプニングも起きた。講義の後の質疑応答の際に出た主な質問で、

     精神科の診断はわかりにくい。他の医療機関では別の診断がつくことがある。どちらを信じたらよいのか。

     精神科にかかっても薬を出すばかりだが、他の治療はないのか。

といったものがあった。

それについては

① 精神科の疾患では、身体科的疾患のようにCTX線などの画像診断や血液検査データでの診断ができず、本人への問診とその時の様子、家族からの情報が判断材料となる。心理検査もあるが、それだけで診断できるものではなく、あくまでも補助的なものである。そのため、どの医師が診ても明らかに統合失調症やうつ病というように診断がつけられる場合もあるが、症状が軽微な場合には診断が付けにくい。特にひきこもり状態を呈しているだけで、明らかな精神病症状がみられない人ではそうである。また、本人が診察に協力的でなかったり、意図的に症状を隠したり逆に誇張したりする場合には診断が困難となる。例えば朝青龍の一件はこれにあたる。さらには、当初は強迫症状だけで神経症圏の診断だった人が、1年、2年たって明らかに統合失調症の症状が出揃って、統合失調症に診断が変わるというような場合もありうる。しばしば精神鑑定で多様な診断がついてしまう背景にはこういった事情がある。結局は本人と医師とのコミュニケーションが円滑に取れて家族の側からも納得がいく診断がベストである。もし納得がいかなかったり明らかに病像が変化しても診断が同じままだったりする場合にはセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めることも必要となるだろう。

② 統合失調症に対する非定型精神病薬、うつ病・パニック障害・強迫性障害に対するSSRIのように、ここ10年ほど薬物療法が大幅に進歩してきている。さらに現在開発中の薬剤もある。治療のエビデンスが求められる現在、種々の不安障害においても効率よく症状を改善する薬物療法が中心となりつつあるのが現状である。しかし、神経症圏のものや、病気でない社会的ひきこもりでは、行動療法・認知療法・カウンセリング・森田療法などの精神療法が有力な治療法となりうる。ただし、本人がそれに取り組もうとする意欲がなければ適応とはならない。

というのが私の意見である。なお、出席者の話の中で、「ウチの子は心療内科のクリニックに通院していて、精神科にかかろうとしない」ということがあったが、実は、心療内科クリニックの医師はたいてい精神科医である。精神科医が開業する時は、心療内科か神経内科をトップに標榜して最後に精神科を掲げることが多い。患者さんの受診しやすさと近隣住民への配慮からである。

 当事者の方々の話を聴いていると、子供さんに対する思いがひしひしと伝わってくる。ただ、親として何とかしてあげたいという強い気持ちが裏目に出ることもあるようだ。本人だって情けないと思っているところで、つい叱りつけてしまうこともある。本人が「さあ、やろうかな」と動き始めたところで「早くしろ」などとせっついたら本人も反発したくなるだろう。私にも子供に対して同じようなところがあると反省する。

 ひきこもりの子供を抱えて親だけで悩んでいないでこのような場を利用して、つらい思い吐き出したり第三者の冷静な視点からのアドバイスを受けたりすることはとても有益だと思う。

« 神経質礼賛 231.BGM | トップページ | 神経質礼賛 233.脳内メーカー »

コメント

四分休符先生、始めまして。
昨日先生のブログを始めて拝見し、記事の数々大変興味深く読ませて頂いております。

私事ではありますが、かつてうつ病という診断のもと治療を受けたことがあります。根本的な改善を見ないまま、何とか日常生活を送ってきました。
最近になって、自分の状態はどちらかといえば神経症ではないかと気づき、これまでの世界観が覆されるような気分でおります。

先生の記事にもございましたように、うつ病の神経症化や抑うつ神経症といったものに自分も分類されるのではないかとブログを拝読しながら納得がいった次第です。

今後は自分の神経質を有効活用できるように、日々精進して行こうと考えております。

xiangmi様
 コメントをお寄せいただきありがとうございます。私自身の若い頃の「うつ状態」体験は123話(2006年11月)に書いておりますが、現在の診断基準ですと気分障害の「うつ病」という診断になってしまうことと思われます。私の場合は神経質性格に複数のストレス要因が加わってのことです。私の場合、医療機関のお世話にならずに何とか解決できましたが、外来でお目にかかる患者さんの中には「うつ病」として長い期間治療されてきてよくならず、神経症という視点に切り替えていただくと良くなる方を時々見かけます。当ブログが御参考になる点がありましたら幸いです。今後のますますのご健勝をお祈り申し上げます。
 

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 神経質礼賛 231.BGM | トップページ | 神経質礼賛 233.脳内メーカー »

最近のトラックバック

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30