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2007年12月 7日 (金)

神経質礼賛 252.森田療法のひろがり

 1130日と12月1日の2日間、第25回森田療法学会が東京で行われた。私は土曜日の外来と当直がはずせないので今回も日帰り参加となってしまった。この学会も精神科専門医の更新ポイントになるため、朝から夕方まで会場内に缶詰状態になっていた。

 特別講演では、力動精神医学の大家である狩野力八郎先生が、森田正馬の先見性について話され、興味深いものであった。力動精神医学はフロイトの精神分析を基盤にアメリカで発展したものである。森田療法が過去を問わず今ここで不安を持ちながら行動させていくのに対し、精神分析は正反対で、徹底して過去を問い、病気の原因を調べ、本人に洞察させるものである。他にも精神分析を専門とする先生から見た森田療法の話もあり、森田先生の入院治療は分析の立場から見ても優れているとのことであった。精神療法は時代とともに変遷していく。森田先生にしても、当時可能だった薬物療法や他の精神療法や生活療法をすべてやりつくした上で森田療法を創っていったのである。森田と分析とでは立場は全く異なるが、双方を理解し、互いの良い部分を取り入れていく面があってもよいだろう。

 個々の発表演題を見ると、外来森田療法が中心となってきている。入院治療施設の減少ということが背景にある。東京の鈴木知準診療所で長年入院森田療法をされていた鈴木知準先生もお亡くなりになった。そんな中で京都・東福寺近くの三聖病院では今なお森田先生の原法に近い「禅的森田療法」が行われているようである。私の勤務先の病院でもかつては古事記の音読をさせ読書は禁止でひたすら作業三昧という「修行の場」的な雰囲気だったが、森田先生から直接教えを受けた指導員の田原綾さん(84話)が亡くなられてからはそれも絶えて、今では大学病院に近いぬるま湯的な森田療法に近づいてしまった。現在の健康保険制度では全く採算が取れないし、個室で育ち集団生活を苦手とする人が増えている現状ではやむを得ない。

 そんな中で注目されるのは精神科以外の領域へのひろがりである。歯科口腔外科で口臭や口腔内異常感を訴える方への森田療法の応用の発表がいくつかあった。学校や職場でのカウンセリングに応用する試みの発表も年々増えている。以前から森田療法をガン治療に応用した「生きがい療法」や麻酔科での慢性疼痛治療への応用が注目されていたが、森田療法の輪がさらにひろがりを見せており、喜ばしい限りである。

森田療法は単に神経症の治療ということだけでなく、優れた生き方の指針という一面も持っている。かつては神経質な性格に悩み今では神経質に感謝している私も微力ではあるがその分野の普及活動を続けていくつもりである。

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