神経質礼賛 258.2代目3代目
新聞の経済面はそれほど丁寧に読まない私だが、たまたま12月14日付毎日新聞夕刊の経済観測のコラムが目に留まった。「最悪のシナリオ」と題して、2代目3代目はなぜダメなのか、ということが書いてあった。経済コラムらしからぬ内容である。
2代目3代目は素質としては平均を上回るものを持っているが、判断が甘く、有事への対応が稚拙になりやすく、ことに政界や財界ではそれが目立っている。A前首相をはじめとする2世議員や数々の偽装問題に揺れる老舗の経営者たちがそうである。苦労人で地獄を見たことのある人は、最悪のシナリオをサッと描いて日頃から対応策を考え危ない橋は渡らないのに対して、育ちがよくて苦労知らずで育った人間は最悪のシナリオを描くのが苦手で、それに思い及んだことがないため、最悪の事態を招いてしまう、と筆者は分析している。
いわゆる2代目3代目には小学校から苦労せずにエスカレーター式に大学まで昇り、良家の子女と結婚し、親の地盤や資産を受け継いで議員や社長になったという人も多い。激しい競争を経験していないから、おっとりして「いい人」という面もあるが、大きな失敗や挫折体験をして、それを乗り越える経験を積んでいないため、精神的に脆弱でもある。また、他人のつらさに対する共感性も乏しい。適切なアドバイスをしてくれる家老役がいれば何とかカバーできるが、ワンマンになってしまうと「裸の王様」や「バカ殿」になりがちである。
「プラス思考」とか「鈍感力」ばかりがもてはやされている時代ではあるが、適度な「マイナス思考」や「敏感力」は必要だというのが私の持論である。話題になるような2代目3代目には必要な「マイナス思考」「敏感力」ともに欠如しているのではないか。経験という裏打ちのない根拠なきプラス思考は砂上の楼閣にすぎない。
その点では神経質人間は最悪のシナリオを描くのは得意であり、石橋たたきはいつものことである。周囲の状況にも敏感に反応する。最悪のケースを読んで覚悟し、不安を抱きながらも恐る恐る地雷を踏まずに前進していけば、普通以上の成果が得られる。結果として最悪のケースに比べればはるかに大きなプラスとなっているのである。神経質で大いに結構である。
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先生いつもお世話になっております。先生のブログにすっかりハマってしまいました!「石橋を叩いて渡る」ですか。神経質も長所を生かせば、いい素質でもあるんですね。励まされるような思いです。親や第三者の資産財産をあてにしている人と、そもそも何も持たない(あてにしない)人とでは、人生に対する態度が異なりますね。私が出会った素晴らしい人達は、例外なく後者でしたよ。みんな夢や目標に向かって(そして慎重さをもって)がんばってます。
投稿: | 2007年12月24日 (月) 14時47分
コメントをいただきありがとうございます。あなたのおっしゃる通りです。私の畏友たちも、経済的に恵まれなかったり深刻な持病を抱えたりしながらも、輝いている人が多いです。
森田正馬先生は「あやかる」という言葉をよく言われました。他の人の良い面を素直に真似しなさい、ということです。素晴らしい人たちにあやかって努力していきたいものです。
以前にも書きましたが、神経質は童話「みにくいアヒルの子」のようなものです。自分ばかり心配性で小心で情けない、と思うこともあるかも知れませんが、その美点に気がつかれれば、神経質でよかった、となるでしょう。ダイヤモンドの原石を磨くようなつもりで、あせらずにがんばって下さい。
投稿: 四分休符 | 2007年12月24日 (月) 18時44分