神経質礼賛 270.神経質の相性
前回・前々回に述べた岡本常男さんのビジネスマン人生では奥様の存在は極めて大きい。大阪で露天商からスタートし、2坪半の小さな衣料品店を持って間もなくお見合いをして、すぐに結婚を申し込んだそうである。その後、奥さんとの二人三脚で岡本商店は急成長を遂げていくことになる。「佳子の人柄は誰もが認めるように、物事にこだわらない性格である。商売がうまくいかなくなったときでも、決して明るさを失わず、愚痴ひとつこぼすこともなかった」と書かれている。私は何度かメンタルヘルス岡本財団「心の健康セミナー」で講師をさせていただいた際、奥様ともお会いしているが、明朗でおおらかな方、という印象だった。セミナーを終えて大阪の街を連れ立って歩くお二人の後姿はとてもほほえましかった。やはり神経質にはおおらかな循環気質の人がベストマッチのようである。
森田正馬先生は神経質の相性について次のように言っておられる。
(劇作家・倉田百三の「神経質同士の結婚はよくないようですね」という発言に対して)
それはそうです。神経質同士は、お互いにその心持がわかり、心の底まで見透しているから、互いにその欠点を挙げあって、相手ばかりにそれを改良させようとする。グジグジといつまでも、しつこく言い争いをする。
またヒステリー同士でも、これもいけない。喧嘩が早くて始末にいけない。
また陽気の者同士もいけない。気が軽くて家のしまりができない。およそ結婚は、気質の異なった人が、うまく組み合わされるとよい。
神経質の人は、気の軽い大まかな人と結婚するがよい。すると気の軽い人は、あの人はどうせ気難し屋だからといって大目に許し、また神経質の方では、どうせあれには、難しい事をいってもわからないといって、あまりやかましくいわなくなる。お互いに許し合うから円満になる。 (白揚社:森田正馬全集第5巻 p.729)
まさに岡本常男さんと奥様は森田先生の理論にかなったベストカップルというわけである。
ヒステリー同士がうまくいかないのは、芸能人カップルを見ればよくわかると思う。お互い自己中心的で目立ちたがり屋なので、くっつくのは早いが別れるのも早い。相性の悪いとされる神経質同士の場合はグジグジ言い合いながらもそれなりに長続きしそうである。お互いの性格をよく理解して、相手の立場を考えるようにすれば、相性がよくないとされる組み合わせでも、うまくやっていけるのではないだろうか。
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