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2008年1月21日 (月)

神経質礼賛 267.源氏物語千年紀

 今年は源氏物語が書かれて1000年が経ち、源氏物語千年紀なのだそうである。17日・8日と2日間にわたって毎日新聞夕刊に二人の女流作家・瀬戸内寂聴氏と綿矢りさ氏の対談が載っていた。

 私が源氏物語にハマッたのは高校生の時である。古文はもともと中学生の頃から好きだったが、高1の時に角川文庫で3分冊になっている与謝野晶子訳の源氏物語を買って読んで、その世界にすっかり魅せられた。さらに学校の図書館で源氏物語関連の評論を何冊か読んだ。与謝野訳は他の訳と異なり敬語を大幅に省略しているため、登場人物が身近に生き生きと感じられる特徴があるように思う。源氏物語の通読は難しいと言われるが、高校古文の資料集に載っている登場人物の系図と年表を時々見ながらこの与謝野訳を読んでいけば、比較的たやすく通読できるのではないだろうか。瀬戸内寂聴さんも13歳の時に与謝野訳で源氏物語を読んだそうである。女性が出家することで心の安らぎを得ることがテーマだと寂聴さんは言われる。恋愛遍歴の末に出家された御自身を投影しておられるのだろう。さらに、光源氏の愛は最愛の紫の上を幸せにすることができなかったし源氏自身をも幸せにできなかった、と言っておられるが、この点に関しては私も同感である。源氏が紫の上を大切にしていないのは読んでいてとても気になった点である。紫の上に子供がいない設定になっているのは、源氏の愛以外には逃げ場がない状況に設定したかったからだと思う。

 物語第一部は光源氏の華やかな恋愛と政争を乗り切って栄華を極めていく様が描かれる。第二部では初老期にさしかかった光源氏の生活に影がさし始め、最愛の紫の上を失い失意の中で出家を志すまでが書かれている。そして第三部「宇治十帖」は源氏の死後、表向きは源氏の子である薫と源氏の孫である匂の宮、その三角関係に悩み出家する浮舟を中心に話が展開する。

 よく源氏物語は恋愛小説のように思われているが、愛する人の死と葬送の場面がこれだけ繰り返し書かれている小説もないだろう。また、物の怪・生霊がよく登場し、精神科の立場からすればヒステリーの解離症状(解離性障害)と捉えることができそうである。

 さて、源氏物語の登場人物で神経質キャラはいるだろうか。光源氏と正妻葵上との間の子である長男の夕霧が神経質だと私は思う。光源氏の息子ならば労せずして五位以上の位階(殿上人)からスタートするところだが、源氏の意向で大学寮に入れられみっちり勉強させられる。まじめだが少々要領が悪く、出世レースでもライバルより少し後れがち。幼馴染である雲居の雁との結婚をなかなか認められず、やっと結婚すると次々と子供が生まれて、雲居の雁は育児に追われている。父親の源氏とは対照的に女性関係は極めて地味だったが、光源氏に睨まれて死んでいった友人・柏木の未亡人(落葉宮)に惹かれるようになる。国宝の源氏物語絵巻には手紙を読んでいる夕霧の後ろから嫉妬に燃えて迫ってくる雲居の雁が描かれている。結局、落葉宮とも関係ができるが、怒った雲居の雁は子供たちを連れて実家に帰ってしまう。その後は月の半分を雲居の雁のもとに通い残り半分を落葉宮のもとに通う、と何とも律儀な生活を送ることになり、最後は大臣にまで出世する。この上なく美しい紫の上を偶然に垣間見た時には、間違いを起こさないように父の源氏が自分から遠ざけているのだと悟るし、薫が源氏の子ではなく柏木の不義の子だと感じながらも兄として援助するなど、とにかくガマンと気配りの人である。初めて源氏を読んだ時にすでにこの夕霧に親近感を感じて心の中で応援したくなったのはやはり同じ神経質人間として共感したからであろう。

 こんなことを書いていたらまた通読してみたくなった。次に読む時には第二第三の神経質キャラを探しながら読んでみようか。

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コメント

いつもお世話になっております!名作古典の中に神経質キャラを探す、というのはとてもおもしろいですね。私事ですが、85歳になる祖父が個人で「源氏物語」を訳しました。このあたりの公立図書館に所蔵されています。そして孫にあたる私は、「源氏物語」をまだ通読していません・・・。

 コメントいただきありがとうございます。お祖父様の訳が出版されている、というのはすばらしいことですね。男性の訳では谷崎潤一郎訳が有名ですが、国文学の研究者も訳を出している方が何人かいるようです。まだ読んでいないのは実にMOTTAINAI気がします。
 最初から通読するのではなく、興味を持たれた巻をまず読まれるとよいかと思います。

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