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2008年3月21日 (金)

神経質礼賛 287.擬態うつ病

 病院に出入りしているプロパー(製薬メーカーの営業)さんは来るたびに薬のパンフレットや文献を置いて行くのだが、ある日、こんな記事がありましたよ、と中央公論1月号に掲載された精神科医・林公一(注参照)氏の「それはうつ病ではありません 増殖する“擬態うつ病”の波紋」を置いて行った。

 この記事の中でケースとしてあげられている34歳男性社員は、元々プライドが高く幼稚な傾向があったが、上司から小さなミスを叱責されて数日後から「うつ病」の診断書を提出して休み始めてしまった。2か月後には復職したものの仕事はダラダラしていて仕事と無関係な雑談は熱心。5時の退社時には生き生きしている。休日は競馬で遊んでいる。遅くまで酒を飲んでいたりユーチューブの動画を深夜まで見たりしていて翌日遅刻する。仕事を頼めば「うつ病だから」と逃げる。筆者はブランドに対するニセブランド、うつ病ではなく擬態うつ病だとしている。この例は私が15話「ヒステリーの時代」で書いたケースと似ている。人格未熟でヒステリー傾向を持った人間が疾病逃避・疾病利得を図ったもので限りなく詐病に近い。「新型うつ病」あるいは香山リカ氏の言うところの「30代うつ」もこれに近いところがある(223話参照)。今回の記事では、そうした人たちにうつ病の診断書を書いて「加担」してしまう医師側のウラ事情も書かれている。単なる職場不適応であって医療の対象として不適当ではないかと思いながらも、誤診だったら困るし悩んでいる人を援助したいということで安全策を取ってしまう(さらには「患者」を確保したいという心理も働きそうである)。上司としても、「甘ったれるな!」と一喝して反省させるのがベストだと思いながらも「パワーハラスメント」とされても困るからこちらも安全策を取る。国のうつ病啓発キャンペーンが擬態うつ病を増殖させている、と結論している。

私はこのような人に対して「うつ病」としての診断書を書くことを拒否したことは何度かある。家族がやってきて説明を求められて、うつ病ではなくパーソナリティの問題であることを説明したところ、「本人が傷ついた、どうしてくれる!裁判に訴える!」とクレームをつけられたこともあった。すでに何日か仕事を休んでから初診で来たケースでは、明らかに仕事のストレスが強すぎる場合は「適応障害」の診断書を書いて仕事の負荷を軽くしてもらうように上司と相談するように話している。ストレスが強いとは考えにくい場合は、これ以上休まない方がよい、と説得している。この辺は極めて神経質を必要とするところである。

注:この記事の筆者・林公一氏はネット上で膨大なアクセス数を誇る「Dr.林のこころと脳の相談室」を運営し、宝島社から「大人になったのび太少年」といった本を出しているが、経歴等は一切公開していない。その名前で厚生労働省HPの医師等資格確認ページに入力すると、一人ヒットし、昭和57年医籍登録となっているので、本名だとすれば50代の医師ということになろうか。著書名からすると精神分析を得意とするものと思われる。

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コメント

こんにちは!二ヶ月ほど前の「読売ウィークリー」(だったと思います)に「17時から鬱」という「病気」について特集が組まれていました。香山リカ先生と和田秀樹先生のコメントも掲載されていましたが。私は正直言って「これは性格の問題では?」と思いました。香山先生は、こうした症状をもつ人の「周囲の人」が鬱になるといういわゆる「二次災害」に注意を喚起していました。大人のワガママに振り回されるのは大変です。

すみません、訂正です。「17時まで鬱」です。職場では鬱病なんですね。それで退社後は非常にアクティブでスポーツジムや飲み会をエンジョイし、海外旅行も満喫するという「症状」でした。

コメントありがとうございます。そういえば以前は「5時から男」という言葉がありましたね。仕事はズッコケていても仕事が終わると飲み会・カラオケで大活躍。ある意味、職場の潤滑剤のような人もいて必ずしもマイナスイメージではなかったように思います。それに対して「17時まで鬱」は周囲に迷惑垂れ流し。実際、「17時まで鬱」の部下を抱えて弱り果てた上司が精神科外来を受診してくるのに遭遇します。これでは上司や同僚が本物のうつ病になってしまいます。
未熟なパーソナリティを持ったまま大人になってしまう人が増えているということに加えて、どこの職場もゆとりがなくなっている、ということも背景にあるような気がします。

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