神経質礼賛 284.不思議楽器テルミン
書店の雑誌コーナーに平積みしてあった、学研「大人の科学」に目が留まった。電子楽器テルミンがテーマでテルミンminiのキットが付録について2300円。パラパラ立ち読みして一旦は立ち去ったが、引力に引かれるように売場に戻って結局買ってしまった。小学生の時、雑誌「学習」と「科学」は付録が楽しみで、家に帰るとワクワクしながら本誌そっちのけで付録の袋を開けた、あの気分が蘇る。キットと言っても、基盤は完成品でハンダ付けの必要はなく、+のミニドライバー1本で容易に組み立てることができる。これなら電気の知識がない人でもOKである。ただし、ネジが小さいので老眼が進んだ私にはちょいと見づらい。
テルミンは世界で最初の電子楽器である。アンテナに手をかざして音程を調整するということは知っていたが、楽器の名前がそれを発明したロシアの物理学者の名から取ったということは知らなかった。レフ・テルミン博士(1896-1993)は音楽院でチェロも学んだ人である。1920年頃にこの楽器を発明し、レーニンの前で演奏して見せて感動させたという。アメリカに渡り電子楽器開発や演奏会を行い、アインシュタインとも交流があった。1938年、テルミン博士はKGBのスパイによって拉致されてシベリアの収容所送りとなり、処刑説も流れた。スターリンの死後、ようやく名誉回復となり、1993年モスクワで97年の波乱に富んだ生涯を閉じている。
テルミンの原理は、二つの発振回路で生成された波を合成して生ずる差の周波数成分が音となるのだが、片方の発振回路はアンテナに近接した人体がコンデンサの役割をして、その静電容量の変化で発振周波数が変化する。その結果、音程が変化するのである。実際に楽器として演奏に使われるものは、音程を調節するための垂直アンテナと音量を調整するための水平アンテナがあって、両手で操作することになる。
付録のテルミンminiでは基板上の二つの半固定ボリウムをプラスチック製の棒で回して発振周波数の初期設定をするのだが、これには少々根気が必要だ。なかなか安定した音は出にくい。オナラ音みたいになる時もある。それでも手をかざす距離を微妙に動かすと1-2オクターブ位の間で音程が変化する。どうにか簡単な曲を「演奏」することができる。と、ついつい熱中していると、妻から「新興宗教の人みたい」と横ヤリが入る。確かに初老期のオジサンが赤い小さなオモチャに向かって真剣に手かざしなんぞしている姿はアヤシイ。
雑誌によれば、テルミンには癒し効果があるという。適度な「周波数ゆらぎ」と「振幅ゆらぎ」があって良いのだそうである。テルミンは一般の楽器と異なり、演奏にほとんど筋力は必要ない。リラックスした状態で演奏することができるものと思われる。神経症や心身症のリラクゼーションにもテルミンは良さそうである。
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