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2008年6月13日 (金)

神経質礼賛 315.秋葉原無差別大量殺人事件の背景(1)

 先週の日曜日の白昼、秋葉原の歩行者天国に25歳の男がトラックで突っ込んで次々と人をはね、さらに戦闘用ナイフで次々と通行人を刺して、7人死亡10人重軽傷の大惨事となった。前途ある若者たちが犠牲になった。被害にあった人を救護しようとしているところを後ろから襲われたタクシー運転手もいる。卑劣極まりない犯行である。男は「生きているのが嫌になった。(殺すのは)誰でもよかった」と述べている。TVニュースで犯罪心理の専門家は「挫折が原因でしょう」と言う。中学時代成績優秀で期待されて青森県で一番の進学校に入ったが脱落して短大に進学。自動車工場で派遣社員として働いていたという。確かに挫折ではあったろう。

 しかし、挫折だけが原因でこんな事件が起きるのなら、日本中で毎日、無差別殺人事件が多発するはずである。私だって若い時は挫折の連続であり、負け続けの人生だった。この男と同じ25歳の時にはシステムエンジニアとしてサラ金会社のオンラインシステム開発のために二重派遣されて「うつ状態」になったことは以前書いた(123話)通りである。挫折だけが原因ならば私も大量殺人鬼になっておかしくなかったはずだ。

 一見おとなしそうなこの男が殺人鬼となった原因は一つにはこの男の人格、もう一つは社会的背景にある、と私は考える。

 診断基準を完全に満たすかどうかはわからないが、この男には自己愛性人格障害(80話参照)の部分があるだろうと思う。自己愛性人格は分かりやすく言えば「自分以外はみんなバカ」というように自分を誇大視して人を見下し他人に対する思いやりのない偏った人格である。大学教授(特に医学部教授)や高級官僚にはありがちである。指揮者として有名だったカラヤンも自己愛性人格だったと言われている。彼らのようにずっと「勝者」であり続ければ自己愛は満たされ続けるが、普通はそうはいかない。中学の大秀才も進学校ではただの人である。進学、恋愛、就職などたいていの人はどこかで何度か挫折を経験して、それを乗り越えることでだんだん大人の人格になっていく。犯人の場合、挫折を親のせいにして自分で乗り越えることをせずに子供の人格のまま成人した。短大時代、サバイバルゲームに熱中し「今日は○人殺した」と嬉々として仲間に語っていたという。就職しても我慢ができず転職を繰り返した。実生活で自己愛が満たされる場はなく、ゲームの世界で万能感を膨らませていったのだろう。実際の犯行でも、トラックで歩行者をはねる、殺傷力の高い戦闘用ナイフで無防備・無抵抗の人を刺す、と圧倒的に自分が強者である状況を準備していたことでも裏付けられるだろう。

 

もし神経質人間が犯人と同じ境遇に置かれたとしたら、「自分は落ちこぼれのダメ人間だ」とクヨクヨ嘆きながらも、発展向上心が強いので、コツコツ貯金をし、資格を取って、粘り強く這い上がる努力をするところである。逆境に強いのが神経質の長所である。

 長くなってしまったので、社会的背景は次回に述べたい。 

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コメント

先生こんにちは!先日はお会いできてとても嬉しかったです!先生のおっしゃるとおり、「挫折感」だけでは殺人はできないと思います。容疑者よりも年上で彼氏がいたことのない私はどうなるのか・・・。格差・貧困社会の背景もあります。私が思うのは、日本の若者は政策決定に関わる機会が圧倒的に少ないということです。大学生が政治の話をしたり勉強会を開催したり、議員の元で経験を積み選挙で結果を出す等の行為が少ないと思います。社会への不満は破壊殺傷ではなく、政策議論と働きかけによってなされるべきだと私は思います。高級官僚に任せきりでは何も変わりませんよね。

 コメントいただきありがとうございます。私の最初の学生時代はもう学生運動はかなり下火になっていましたが、どこの大学キャンパスも政治的な主張を書いた「タテカン」が並んでいました。下宿の隣の部屋の政経学部の学生さんは活動家で、「人民の星」とかいう機関紙を持ってきては、「あなたのようなテクノクラートにもぜひ参加して欲しい」とか言っていました。理工学部の学生はノンポリがほとんどながら、安酒場で飲んでいると、政治的話題も出ましたねえ。今の大学はどこも綺麗で政治に関心のある学生さんはあまりいないのではないでしょうか。
 官僚や政治家(せいじや)が「自動運転」していたのではどんどんおかしな方向に進んでしまいそうです。年金にしても若い人たちにツケを回すようではいけません。票集めでムダ金ばかり使って借金を増やしていき、子孫に迷惑をかけるのはもっての他です。
 裁判員制度じゃなくて、国会議員の何割かは1年ごとに国民の中から無作為抽出で選ぶようにしたら、今よりマシになるかな、と思ったりします。
 ちょっと脱線してすみません。

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