フォト
無料ブログはココログ

« 神経質礼賛 327.熱中症が増えたワケ | トップページ | 神経質礼賛 329.人はそれほど気にしていない »

2008年7月21日 (月)

神経質礼賛 328.「うつ」は休め?

 心療内科・精神科クリニックの新規開業が増えているのに、勤務先の病院では外来の新患数が急増している。特に私は月曜日が新患担当のため、増加が著しい。クリニックだと、新患の受診は予約制で、どこも2週間から1か月待ちなのだそうだ。そのため、予約制でないウチの病院を受診してくるのだろう。

 相変わらず「うつ病」と自己診断して来院する人が多い。中には「うつ病は休まないとよくならないから診断書を書いて欲しい」と元気にしゃべりまくる人もいる。そもそも本物のうつ病の人が一人で来ることはまずない。心配した家族に連れられて来て、下を向いたままであまり話さない、ということが多いのである。

 「うつ病の人を励ましてはいけない」とか「うつ病には休養第一」という「うつ病治療の常識」を誰もが知るところとなったことは自殺予防という観点からはよいことである。しかし、休養が必要なのは、エネルギーの枯渇した状態や焦燥感が強い状態の時であって、いつまでもこの対応ではよくなるものもよくならない。回復状況を見ながら、少しずつ仕事を増やしていく、という対応が必要となってくるのである。場合によっては励まして背中を押してあげることが必要な時もある。

 ましてや、日常生活で誰しもある程度の気分の落ち込みや不眠を理由に仕事を休んでいたのでは、ますますその人の適応能力をダメにしてしまうだろう。

 森田正馬先生が書かれた以下の文で「神経衰弱」を「うつ病」に置き換えるとピッタリだ。

『自分は、神経衰弱になつたかと思ひこみ、安静にしなければならぬと考へ、「保養と怠惰は、似て非なるものなり」といふ様に、朝寝をしたり・無精をして・なまけるために、益々其症状を自分で仕立てあげるやうなものである。(白揚社:森田正馬全集 第6巻 p.177-178)』

 こうした「自称うつ病」の人に病気ではないし、薬も必要ない、休んではいけない、と告げるのは私くらいのものかも知れない。

« 神経質礼賛 327.熱中症が増えたワケ | トップページ | 神経質礼賛 329.人はそれほど気にしていない »

コメント

 仕事も終え、《神経質礼賛》に足を運ばせて頂きました。私は専門医でもなんでもありませんから病気のことは全くの門外漢です。ただひたすら私を地獄から救い出した森田正馬先生の足跡を追いかける一徹者です。この書き込みを拝見してあらためて感銘を受けました。先生、どうぞ頑張ってくださいね。西の空から応援をしております。

 今日も一日多くの問い合わせがある中、一人の中年の女性が二日続けて熱心に森田療法について質問がありました。図書室で二時間ほどお話しをして最後には先生の《神経質講義》をお聞き頂き、心底納得されてお帰りになられました。そんな時、私はほっと胸をなで下ろします。

 さて、森田正馬先生がどんな方か憶測するのはとても楽しい。今朝の読売新聞-日本の知力-に次のような記事が紹介されていました。日本の長い伝統ワザ宮大工の精神になぜか森田先生の後ろ姿を見た思いがしました。

 宮大工の菊池恭二さん(56)は見習い時代に毎朝毎夕、親方にお茶を出し続けた。お茶くみは新入りの役目だったが、6年間、誰にも譲らなかった。相手が「最後の宮大工」といわれた伝説の頭領・西岡常一だったからだ。
 押し掛け弟子となり、奈良・薬師寺の現場に入ったのは21歳の時。朝5時半に起き、仕事場とトイレの掃除を済ませ、7時半、熱いのを出す。仕事を終えた夕5時、再び心を込めてお茶をいれた。そうやって、7世紀飛鳥時代の工人と対話できるといわれた西岡に添い、仕事ぶりを盗んだ。作業の中枢を離れず、設計の図面が日々描き足されていく過程をつぶさに見た。
 「職人の世界では『木組み、人組み』といって適材適所が大事。この差配が仕事の出来を左右する」
 菊池さんは、西岡棟梁が副棟梁に指示する言葉を漏らさず聞き、棟梁として必要な能力はすべて、お茶くみを通じて身につけた。
 今は弟子、10人を抱える工務店「社寺工舎」(岩手県遠野市)の代表。基本は、教えないこと。大きな仕事を任せ弟子の背中を押すだけだ。「必要なのは、本人が悟ること。体の記憶として自分で身につけること。作業でわからないことがあっても、悩み抜いた未の質問でなければ、答えを深く聞くことはできない」
 高い技術を数百年、千年と伝承してきた集団では暗黙知が重要視されている。徒弟制度を研究する関西大学の野村幸正教授(61)は強調する。Tものづくりの肝心な点はマニュァルや言葉では伝わらない。背中で教える、近くでずっと見るということがすべてではないか」
暗黙知 ハンガリー生まれの哲学者マイケル・ポランニー(1891~1976)が提唱した概念。文字や数式では表せない知恵やノウハウなどを指す。

 

万代 博志 様
 コメントいただきありがとうございます。昨夜と今夜は連続当直です。病院でとっている新聞が読売なので、私も今朝の一面のコラム「日本の知力」背中で伝承「暗黙知」にまず目が行きました。
 森田正馬先生の患者さんに対する指導にも、「暗黙知」の部分が相当あっただろうと思います。外来患者さんの診察を入院患者さんたちが作業をしながら聞くことが許される、という今では考えられない治療構造でした。森田先生の一挙一動が患者さんのお手本でした。そして森田先生の気合に触れて良くなっていく部分も大きかったのではないでしょうか。「以前は、私が先に立って、患者と一緒に働いたので、四週間位で治りました(全集第3巻p.217)」と森田先生御自身が言っておられるように、先生の背中を見て動いていく効果は絶大だったのでしょう。
 今のマニュアル森田では効果は相当落ちます。治療者自体が軟弱すぎるという問題もありそうです。パターナリズムという批判は承知の上で、気合を入れて治療に当たりたいとつねづね思っています。

 申し送れましたが、万代様に電話指導をしていただいたという対人恐怖・視線恐怖の女性が7月14日に私の外来を受診されています。当然ながら森田療法的対応で、薬は処方しませんでした。

 昨夜は日本三大祭りの天神祭に120万人の方が押しかけたそうです。真夏の祭典に私もまぎれていたわけです。

 この「神経質礼賛」には、先生の熱気が思う存分伝わって参ります。私も二十代中頃までは地獄を徘徊してきましたから同病相憐れむの精神が発揮されます。

 対人恐怖・視線恐怖の女性が先生に面談できたことはとても良いことです。きっと彼女は意を強くして力強く立ち上がってくれることと祈ります。

 本当にありがとうございました。

万代 博志 様

 コメントいただきありがとうございます。「同病相憐れむ」は森田先生が常々言われたことで、大切なことですね。自分さえ治れば後はどうでもいい、というようでは、必ず何かの拍子に再発します。その点、万代さんの教えを受けた「万代チルドレン」が発見会で後輩の指導に当たられているのは、心強いです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 神経質礼賛 327.熱中症が増えたワケ | トップページ | 神経質礼賛 329.人はそれほど気にしていない »

最近のトラックバック

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30