神経質礼賛 321.20年ぶりの歯科受診
神経質人間なので食後の歯磨きは欠かさない。職場で昼食後も磨く。そのおかげかここ20年間というもの歯医者さんとは無縁だった。もっとも加齢に伴う歯周病予備軍ではある。1年ほど前から硬いものを噛むと左奥歯が痛み、右ばかりで噛むようになってきた。忙しさにかまけて歯医者さんにかかるのを先送りしていたが、やはり虫歯ではないかと心配なので子供たちがよくお世話になる歯科医院に行ってみた。
住宅街の中の目立たない場所にある歯科医院で、近所での評判はいいらしく、予約も一杯である。玄関に入ると、紫外線の消毒機能のついたスリッパ入れからスリッパを出して履く。受付と助手は先生のお母さんが一人でやっていて、診察台をいくつも並べて歯科衛生士を何人も雇っている医院とはかなり雰囲気が異なっている。4畳半ほどの広さの小さな待合室のテーブルの上にはカバーをかけた最新の週刊誌が整然と並んでいる。神経質が行き届いていて快適である。
今はデジタルカメラがあるので、歯の状態をその場で患者さんにモニターで見せて説明することができる。この先生は特に説明好きで、処置の時間より説明の時間が圧倒的に長い。結論としては虫歯ではなく、何か硬いものを噛んだ時にできたヒビだろうということだ。全く自覚症状はないが、ヒビが入っている歯が他にもあった。「年を取るとだんだんこういうところも出てくるが、加齢とともに歯髄も後退するため、痛みを感じなくなる場合が多い」とのことだった。結局、ヒビが入っている歯を少し削って噛み合わせを調整して様子をみることとなった。
人間、歳をとるにつれて、特に病気というわけではなくてもあちこち不具合が出てくるものである。私の体もあちこちガタがきたポンコツ車に近いが、騙し騙し走っていくしかないのだ。今まで文句一ついわず長年休まず働いてくれているのだから大いに感謝しなくてはならない。
私の外来には、60代・70代の方で、いわゆる不定愁訴でドクターショッピングをした挙句、「精神科に行きなさい」と紹介状を書かれて来院する人がよくいる。いろいろ検査をして異常はないのだが、本人は病気だと思い込んでいる。何のことはない、神経症なのである。そういう人には「あなたは90歳いや100歳まで長生きしますよ」と申し上げている。こういう人はちょっとした異常でもすぐ病院にかかるから大病をしないものである。ただ、自分の病気探しばかりしていてはもったいない。神経質の無駄遣いである。周囲の人のため、さらには世の人々のため、神経質をもっと有効に使った方がよいだろう。
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