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2008年8月20日 (水)

神経質礼賛 337.アスペルガー症候群?(1)

 外来通院している女性。数年来、抗不安薬を服用し、不定期に受診した曜日の外来担当医の診察を受けている。本人によれば、夫のハラスメントがあるという。外出すると「どこへ行っていた?」「浮気してるんじゃないだろうな?」としつこく聞かれ、携帯電話も時々チェックされ、まともに話が通じない。離婚したいが、子供のためを思ってガマンしている。ところが子供はゲーム三昧の生活で学校へ行かなくなった。「ひきこもり」であろうと思い、公的な相談機関に何度も足を運び、「父親も来てくれなくては困る」と言われ、渋る夫とともに相談に行った。子供の相談をしていると、夫は「そんなのは俺にもあったぜ」とうそぶく。さらには県立の精神科病院の専門家にも相談したところ、アスペルガー症候群の可能性が高く、また、夫もその可能性があると言われた。どう対応したらいいか、と質問したら、「宇宙人だと思って対応すれば腹が立たないでしょう」と言われたそうである。「宇宙人を二人も抱えてやってられない」と憤慨することしきりである。長い話を聞いていたらいつの間にか45分が経っていた。初診も担当する患者数の多い曜日なので、ふと見ればカルテがたまっている。

 アスペルガー症候群はWHO(世界保健機関)の診断基準では広汎性発達障害F84の下位分類となっているが、「疾病分類学上の妥当性がまだ不明な障害であり・・・」と書かれている。知的障害がないことが特徴だが、「知的障害がない自閉症」という見解と、自閉症とは別であるとする見解があり、まだ議論のあるところである。成人例ではパーソナリティ(人格)障害との鑑別がつきにくいという問題点もあって、裁判での精神鑑定が鑑定者によって何通りも出てしまうことはよく知られるところである。

 アスペルガー症候群では、コミュニケーションの障害のため対人関係がうまくいかない、ということから、「自分もアスペルガーではないか」と心配される(特に対人恐怖傾向のある)神経質の方もおられるかと思う。しかし、神経質の場合は他人がどう思っているかに敏感であるのに対し、アスペルガー症候群の人では、その場の空気が読めない(今風に言うと「KY」)。この点だけでも、まるで違っているので、心配御無用である。

 さらに、アスペルガー症候群の人のように、鉄道の駅名ばかりでなく下手をするとダイヤまで「写真を撮るように」記憶する能力はありますか?私が小学校5年生の頃、鉄道の駅名を覚えるのが流行った。テレビ番組に国内全路線の駅名が言える「天才少年」が出ていたが、もしかするとアスペルガー症候群だったのかも知れない。私と同じクラスに東海道本線の駅を覚えたと自慢する子がいて、私も負けじと東海道本線→山陽本線→東北本線→函館本線までは苦労して全駅名を覚えたが、そこで挫折し、鉄道オタクにはなれなかった。残念ながら(?)私もアスペルガー症候群のような特異な能力には恵まれていない。

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