神経質礼賛 336.「一富士」フォーエヴァー
一昨日、高校時代のクラブのOB会に出席した。近況報告の後、いろいろな曲を合奏する。最後のシメはモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」という不文律がある。神経質人間の私は、楽器を持って来られない人のために楽器を2台用意し、初見で楽しめそうなパート譜を準備し、カメラ・メモ紙・筆記用具なども忘れずに持って行くので大荷物である。例年は大勢で入れるファミレスで二次会となるのだが、今年は参加者が少なかったので、高校の近くの店に集まることとなった。
どの高校にも近くに必ず学生のたまり場になる店というものがある。「一富士」というこの店は少なくとも半世紀は続いているはずである。本来はアイスクリームとかき氷がメインだが、ラーメンと焼きソバもある。女の子たちはあんみつをよく食べていたような気がする。私が高校生の頃はクラブの練習が終わると、先輩に連れられてよく寄った。ラーメンと焼きソバとアイスクリームを食べて、それでも家に帰れば夕食が食べられた。今では考えられない食欲だった。自分が上級生や卒業生になると、今度は後輩を連れて入り、おごったものだ。おばあちゃんとその娘姉妹が切り盛りする店で、「お帰りなさーい」と迎えてくれた。壁には、甲子園に出場した時の野球部員たちのサインや写真が貼ってある。文化部系のポスターもある。大げさに言えば、ここがもう一つの「学校」だったのかもしれない。その思いは私ばかりではない。かつて、私の友人は婚約者をデートでこの店に連れて来たが、スチュワーデスの仕事をしていた彼女は「何で東京から来てこんな店?」と思ったそうだ。しかし、彼にとっては青春の思い出が一杯詰まった場所だったのである。
今回、店に入るのは6,7年ぶり位になるだろうか。粗末な丸椅子は少々座り心地がいい椅子に変わっていた。しかし、クーラーがないのは相変わらずである。大きな扇風機が力を振り絞って回っている。考えてみれば、クーラーの効いた涼しい所で食べるかき氷よりも、汗を拭きながら食べるかき氷の方がありがたみがある。暑い屋上ビアガーデンだとビールがいくらでも進んでしまうのと同じである。店主姉妹も高齢になられた。しかし、味の方は昔と変わっていない。時々、お孫さんを連れた近所の人が氷やアイスクリームを食べに来る。最後に店を出た時、西日が照りつけていてもさほど暑く感じないのは、クーラーがないおかげだ。多くの学生たちを見守ってくれたこの店がいつまでも続くことを願わずにはいられない。
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