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2008年12月 8日 (月)

神経質礼賛 373.阿修羅の正義

 当ブログにコメントいただいた関係で、いつも読んでいる「こころとこころ」という名前のブログがある。作者のスローライフさんは実名で文芸社から「父  こころの和解」という自伝小説も出しておられる。家が破産して苦境のどん底なのに母にすべてを押し付けて愛人との生活を続ける父に対する強い憎悪感。極貧生活の中で挫折感を味わい、時には自暴自棄になりながらも母親の無償の愛に支えられて紆余曲折の末に得た家庭。そして父の葬儀に参列した時の心の変化。そういった流れの小説である。最近のブログ記事では、自身の若い頃の心情を自己分析して、「阿修羅の正義」とも言える誤った正義感に支配されていたと振り返っておられる。

 アシュラ(阿修羅)はインド神話では正義の神である。美しい娘がいたが、力の神インドラ(帝釈天)に拉致・陵辱されてしまう。怒りに燃えたアシュラはインドラに激しい戦いを挑むが敗れて死ぬ。死からよみがえっては戦うが力の神にはかなわない。娘がインドラの妻となった後も果てしなく戦い続ける。これが仏教では、正義にこだわることはよくない、怒りや恨みの心を捨てて慈悲心を持ちなさい、という教えになっている。

 スローライフさんの言われる阿修羅の正義は私にも思い当たる。神経質人間の私は気が小さくおとなしかったから小学校から中学にかけていじめにあったことがある。その時には自分の情けなさを嘆くとともに強い怒りの感情が湧き上がった。私の中の阿修羅が目覚めたのだ。しかしこれは、時には何らかの反撃行動に出ることで自己防衛したり、今に見ていろと勉強や趣味に打ち込むエネルギーに転化したり、という面もあってあながち悪いことばかりではなかったように思う。阿修羅の正義は自己愛の怒りに近いだろうか。生存していく上で適度な自己愛は必要である。理不尽な攻撃に対して無抵抗では生きていけない。もちろん自己愛が過剰になっては他者に迷惑を及ぼすので注意が必要であるが。若い頃は世の中の不正に対して強い怒りを覚えたものだ。今でもそれはあるが歳とともにいくらか薄らいできている。本来、慈悲心は強い力を持つ者にこそ必要だと思う。

 強迫神経症、例えば不潔恐怖なども極端な価値観にとらわれてしまうという点では「阿修羅の正義」と似たところがある。適度に清潔を保つことは必要ではあるのだが、過度に不潔を恐れ徹底的に「清潔」にしようとして手がボロボロになるまで洗うようでは他のことができなくなるばかりでなく体に有害である。ちょっとした汚れが気になって洗濯をし、さらには衣服を捨てるという不合理な行動に出る人もいる。入浴に時間がかかりすぎるから結局フロにも入らず、逆に不潔になる。森田正馬先生が色紙に書かれた「小我の偏執」の結果である。神経質を外に向けて生かしていくようになれば「大我の拡張」ということになってきて、「症状」もいつしかなくなってくるものだ。

 今日12月8日は太平洋戦争の始まった日である。戦争を起こすどこの国も正義の名のもとに戦うが、戦争に本当の正義などありはしない。軍事産業関連で利益を得る人を除けば、いかなる戦争も人を不幸にするだけである。「テロとの戦い」と家族を殺された人たちによる報復テロとの応酬では、両者とも阿修羅の正義であり、いつまでも戦いは終わらない。小我の偏執からの脱却が必要だ。

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コメント

「最近のコメント」のところに372番の記事が上がっていて、まずそれを拝読し、そしてその隣にあった「阿修羅の373番」をただ今読ませて頂きました。

この記事が書かれた当時に出会えていましたら、亡き父親にもっとやさしくできたと思います。

「小我の偏執」はあらゆるものをぶち壊してしまいます。

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 正直なところ、まだ時々内なる阿修羅クンが覚醒してしまうので困っています(笑)。「感情の法則」で切り抜けています。

 お父様を亡くされたのですね。ああしておけば、こう言っておけば、という後悔はどうしても出てきます。きっとお父様もわかって下さっていたのではないでしょうか。

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