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2009年4月13日 (月)

神経質礼賛 416.フリースペースの若者たち

 平成21年3月31日-4月4日の間、毎日新聞に「孤独の岸辺 第2部 つながりを求めて」という連載記事があった。親たちが作ったフリースペースに参加してくるひきこもりの若者たちの取材記事だ。5回の記事で紹介されたケースを要約してみよう。

36歳男性。人との会話で激しい動悸がして大学を中退した。年金暮らしの親元でアルバイトとひきこもりを繰り返した。ここ1年は契約社員として勤務。職場では人と交われない。辞めようとしたら女性上司から「辞めてどうするの?」と問われ、まだ決まってないと言うと、「じゃあ、次が決まるまでここにいてもいいんじゃない」と言われて仕事を続けている。

28歳男性。高校を2回中退し通信制高校卒業。アルバイトや日雇い派遣の仕事を転々。父親は家出し、母親との心の交流が乏しい。フリースペースを渡り歩くが「居場所がない」と感じて漂流する。

36歳男性。神経質、完璧主義。会社での仕事は丁寧でミスもなく周囲の期待を受けるが、過敏性腸症候群、パニック障害が悪化し、退職。失業保険をもらいながらひきこもる。

(1)33歳男性。人前で頭が真っ白になり、工場勤務を3カ月で退職してからはずっとひきこもる。ひきこもりの権威といわれる精神科医に10年かかるが改善しない。一度デイケアで女性メンバーと恋をしてすぐに破局。それでも自分を肯定し、相手を思いやる気持ちが芽生えた。「結局、人とつながるしかないんです」という。

(2)33歳男性。高3の時に肺の病気で休み、以来ひきこもり、自殺未遂で入院。現在は一人暮らし。仕事を通じて人とつながりたいと思って面接を受けたが不採用。「ひきこもりは多分、薬じゃ治らないと思います」という。

39歳男性。専門学校卒業後、進路が決まらず、父親に罵倒されて、以来ひきこもる。外出せず、床にまで届きそうな長く伸びた髪は頭上で束ねていた。父親がひきこもり親の勉強会に出て、少しずつ息子を支えるようになって、やっとフリースペースに参加するようになった。床屋に行き、髪も切った。

 ①の人は対人恐怖がベースにある。今風に言えば社交不安障害である。もし上司が「あ、そう。辞めるのね」と言っていたら、またひきこもっていただろう。ミスばかりしているが、上司が心にかけてくれたんだ、という思いが彼を引っ張ってくれたのだろう。自信がないままにどうにか働き続ければそれが実績となる。②の人はまだまだこれからという感じだ。漂流していく中でどこか居場所と思えるような場に漂着できればそこを足がかりに変わっていけるのかもしれない。しかし、フリースペースも保護された場とはいえ、ストレスはある。まあ、こんなものだと割り切って、一つのところに通い続けてみることである。③の人は強迫傾向を持った神経症といえる。完璧にやろうとして自分を追い込み過ぎるパターンに気付いてそこから抜け出せばよくなっていく可能性が高い。④(1)の人も①と同様、対人恐怖がある。「人とつながるしかない」と気付いているので、時間はかかるがいつかは働けるようになると思う。④(2)の人は気分障害が併存している可能性があるが、本人の言葉の通りで、薬だけで治るものではなく、社会の中で治していく部分が大きいだろう。⑤では父親が叱責するばかりの対応から、本人を支えて少しでも前に進ませようという対応に変わってから、本人に変化が出始めたばかりだ。

 どの人も「何とかしなくては」と思っているし、何人かは「つらくても人と関わっていくしかない」とわかってきている。弱いながらも「生の欲望」がある。フリースペースの中で安心できる人間関係を作りながら、また社会に向かってチャレンジしていけば、一筋縄にはいかなくてもいつかは自立できる日が来るのではないかと思う。記事のケースのうち少なくとも半分は神経症である。つらいけれども最低限できることをやって積み上げていく、完璧は求めず不完全なままでよいのだ、というアプローチで行動していけばひきこもりから脱却しやすくなるのでは、と思う。森田療法の考え方が役立つ部分も少なくないだろう。

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コメント

先生こんにちは!大変興味深い記事をありがとうございました。
実は私は今学期、とても面倒な案件を処理しました。処理しないと私の研究の能率が非常に悪くなるからです。研究の障害物は徹底して処理する主義です。「研究バカ」と言われても受け入れます(笑)

仕事にしろ生活にしろ、「人とのつながり」なしには成り立たないんですよね。私が痛感したのは、仕事や生活を「ウェブ・メール上で全て」済ませようとする風潮の弊害です。実に簡単に仕事が済むようにみえて、実際は誤解やミスが急増し、時には人間関係の軋轢を発生させます。能率が悪いんですよ。

原点に戻る時期ではないでしょうか。病院での医師による治療・投薬は不可欠です。だからといってこんなに社会に「孤独」が蔓延すれば、社会の生産性も下がるのではないでしょうか。

 コメントいただきありがとうございます。研究でお忙しい毎日のようですね。純粋な研究ばかりでなく、面倒で厄介な雑用を抱え込むこともあると思います。そこは嫌であっても仕方なしに手をつけていく森田式が結局は一番早く解決できるのではないでしょうか。神経質を最大限に生かしておいでのようですね。

 何でもメールで処理の弊害は大企業でも問題になっているようです。先日、「ガイアの夜明け」(日経がスポンサー)という番組で、あるソフトウエア開発事業所の統合を扱っていたのですが、デスクの前や横の壁を取っ払っていつでも直接会話するようにしたら、メール数が激減して効率が上がったというようなことも言っていました。それまでは隣の席の人ともメールで「会話」していたといいます。

 子供のケータイメールも人と人との直接のコミュニケーションを阻害して、1日に何通も何十通もメールしていても心の交流ができないことにもありかねません。おっしゃるとおり、原点に帰る必要がありそうです。

コメントは久しぶりですが、新しいエントリーをいつも楽しみに拝見しています。忙しかったり、疲れていたり、煮詰まった気持ちになった時に読んで、“そうだなあ”と思って落ち着く…というとてもありがたいブログです。

それにしても四分休符先生、博識ですね。これからも楽しみにしています。

 コメントいただきありがとうございます。私も疲れてやる気が湧かない時が多々ありますが、こんな駄文を書いているようでは、まだまだ「生の欲望」があるのでしょう。
 このブログを書くようになってから読書量が急増して図書館でよく本を借りるようになりました。CDも借りまくっていますが(笑)。知識欲というより、この年では単なる知りたがりの助平オヤジですね。職場での仕事量は年々少しずつ増えているのですが、「疲れた疲れた」と言いながらも不思議と時間は作れるものです。とはいえ、森田正馬先生や鈴木知準先生のことを思えばほんの小僧に過ぎないと反省もしています。

 

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