フォト
無料ブログはココログ

« 神経質礼賛 412.歴史を変えた神経症 | トップページ | 神経質礼賛 414.紫式部は神経質 »

2009年4月 6日 (月)

神経質礼賛 413.藤原道長のパニック障害

 平安時代、栄華を極めたのが藤原道長(966-1028)である。道長の父・兼家は三男だったが兄たちが亡くなって摂政・太政大臣まで昇りつめた。道長も兼家の五男であったが、兄の関白道隆と道兼が立て続けに亡くなるという強運に恵まれて頂点に立つことができた人である。道綱(母親は蜻蛉日記の作者で百人一首にも入っている才女)という異母兄もいたが、凡庸で出世欲に乏しい人だったらしく、道長から見れば自分の地位を脅かす心配がない存在だったようで、仲が良かった。道長は、長兄・道隆の娘・定子がすでに一条天皇の后となっているところに自分の娘・彰子を女御として入内させた。定子に仕えていたのが清少納言、彰子に仕えていたのが紫式部ということでこの辺の事情は御存知の方も多いだろう。定子には第一皇子が生まれていたが、道隆は亡くなっており、その嫡男・伊周も失脚していたため、彰子に生まれた第二皇子が皇太子となった。道長は自分の娘たちを次々と天皇の妻にして、生まれた子供をまた天皇に立てて、権力を確実なものとした。

 平安貴族の食生活は健康的とは言えない。特に高位高官は、運動不足であり、白米を食べ、酒も飲んだから、脚気(ビタミンB1不足)や飲水病すなわち糖尿病になりやすかった。道長の長兄・道隆は糖尿病で、道長もやはり50歳頃から糖尿病の症状が目立ってきている。53歳頃から急激にやせ、顔色が悪くなった。眼病(白内障か糖尿病性網膜症)のため、目の前の人もよく見えなくなった。さらに夜になると胸痛発作が起きるようになった。しかし、僧の読経で症状がおさまるところからすると、心臓の病気というよりは精神的なもの、つまりパニック障害だったと考えられている。

 「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思えば」と我が世を謳歌した道長も死の恐怖にさいなまれたのだ。最高権力者となって、子孫の繁栄も約束されており、何一つ不満なところはなかったはずだが、少しずつ健康が蝕まれていくことはどうにもできなかった。逆に何一つ不満がないために身体の変化にばかり注意が向くようになって、パニック発作を起こすようになったのだろう。森田正馬先生の言われた精神交互作用(注意集中→感覚の鋭化→意識の狭窄→注意集中→・・・という悪循環)が道長にも起きていたのだと想像する。

「教科書が教えない 歴史有名人の死の瞬間」(新人物往来社)の道長の項では、背中に腫れ物ができて、強い痛みに苦しんだとある。現代でも糖尿病の重症な人では末梢の血行障害のために感染症が悪化しやすく難治である。道長は自宅・土御門邸の横に建立した法成寺の阿弥陀如来の前で死の床についたという。

 道長の性格は外向的・負けず嫌い・自信家であったようだ。内向的・小心・取越苦労といった典型的な神経質とは異なるが、パニック障害になる人の病前性格ではありうることだ。偉い先生方には叱られるだろうが、私の個人的印象では、パニック障害になる人は、才気に富んだ美男・美女が多いような気がする。

« 神経質礼賛 412.歴史を変えた神経症 | トップページ | 神経質礼賛 414.紫式部は神経質 »

コメント

先生こんにちは!来月の帰国を控えて今、大量の仕事と研究をこなしています。

「源氏物語」の論文も書いていますよ。道長もさることながら、紫式部も相当な神経質人間だと思います。平安時代の宮廷社会は狭く閉じられていたから、内省的にならざるをえなかったのでしょうか。いずれにせよ不健康な生活だったと想像できます。

作中によく出てくる「物の怪」現象について論文を書いています。あれも一種のパニック障害でしょうね。突然、ある人物が魔物にとりつかれた状態になる、という。

「才気に富んだ美男・美女」ですか。よかったです、私はどうやら「物の怪パニック」とは無縁そうで(笑)

コメントいただきありがとうございます。相変わらず仕事三昧の毎日を過ごされているようですね。おお、源氏物語の論文ですか。別刷りができたら拝見したいところですが、英文ではちょっとキビシイかな・・・。高校生の時に与謝野晶子訳の源氏物語を読んで、次々と「物の怪」が出てくるのには驚きました。六条御息所の生霊は精神科で言えば「解離性障害」(ヒステリーの一種)だと思います。おっしゃるように「狭く閉じられていた」宮廷社会ですから、「方違え」のような迷信に基づく行動が多かったでしょうし、情報が遮断された環境では被暗示性が高まってヒステリー症状が出やすかったのでしょう。御説のように紫式部はかなりの神経質人間だと私も思います。次回で紫式部を取り上げる予定ですので、間違ったことを書いていたら叱って下さい(笑)。

お返事ありがとうございました!閑話休題、というか「塩スプレー」について報告(?)させていただきます。

あの・・・。
朝晩二回の使用で、本当に体が臭わないんです。前にも書いたように、塩と水分以外の成分は入っていないんですよ。どこで採取した塩なのかは不明なのですが・・・。

たしかに効果ははっきりしていますが、科学的・医学的根拠が不明なので、まだ他の人には教えていません。私の家族は特に、非科学的迷信がとても嫌いなので(笑)。
ただ実感として、本当に体臭が抑えられているということはお伝えします。

 「塩スプレー」体験談をお寄せいただきありがとうございます。とても興味深い話です。鼻孔内を食塩水で洗浄することで体臭も改善、ということですか。今日の治療指針(医学書院)の「嗅覚障害」の項を見ると、多くは嗅覚脱失・嗅覚減衰だが中には異常嗅感症や嗅覚過敏も含まれる、とあります。もしかすると、体臭だと思っていたのは鼻炎による嗅覚の障害によるもので、それが改善して嗅覚も正常化して「体臭」がなくなった、という可能性もあるのではないでしょうか。あくまでも一つの仮説ですが。

 それにしても、欧米人では体臭が強い(と思われる)人が時々いますね。食生活の違いのためなのか、慣れない化粧品などの匂いに日本人が過敏になってしまうのか、日本人ほどこまめに入浴しないためなのか、原因を考えてみると面白そうです。

 私の場合、そろそろ「加齢臭」が心配です(笑)。

たびたび申し訳ありません!ちょっと誤解があるようなので修正しますね。

私が使用している塩スプレーは、脇や胸に直接スプレーするものです。
前に言及した花粉症用の塩スプレーとは違うものです。もともとこの地域では、花粉は飛散していないんですよ。

個人的には、この体臭防止塩スプレー、気に入っています。まだあるかどうか、薬局で確認してきます。

 大変失礼いたしました。私の早合点でした。てっきり鼻スプレーと思い込んで読んでいました。ごめんなさい。
 成分が塩だけというのが面白いです。香水をつけて、かえって体臭と混ざって悪臭を発しているような人もいます。シンプルな塩水だけで毛穴の臭い成分を洗い流すということになりますか。でも、それが流行したら、化粧品メーカーや香水メーカーは商売あがったりですね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 神経質礼賛 412.歴史を変えた神経症 | トップページ | 神経質礼賛 414.紫式部は神経質 »

最近のトラックバック

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30