神経質礼賛 450.正常性バイアス
一部で梅雨明け発表になった後も、激しい雨が降ったり日が差したりの亜熱帯を思わせるような天気が続いている。九州・中国地方では大雨被害が起きている。避難指示の出し遅れも一因だが、避難が遅れてがけ崩れに巻き込まれるといった事故も発生している。また、近年、中高年の間で登山ブームとなっているが、軽装で気軽に登山ツアーに参加して、悪天候のために低体温症から命を落とすような事故も起きている。夏山でも台風並みの悪天候では体感温度は0℃近くになることもあるそうで危険である。この逃げ遅れる、あるいはムリを押して遭難する、といったところでは正常性バイアス(正常化の偏見)という心理が働いている、と言われている。
正常性バイアスとは、何か異常事態が起った時に、正常範囲内だと解釈して、こころの平静を保とうとする心理機制である。これは過剰反応で疲弊しないための働きなのだが、警報が鳴ってもどうせ誤報だろうと放置して本当に危機が迫っているのに気がつかず大変なことになってしまう恐れがある。種々の大事故においてこの心理機制の存在が指摘されている。
その点では神経質人間は危険を察知して回避する天才である。「ちょっとくらいいいや」とか「まあ自分は大丈夫だろう」とは思わないものだ。だから、大雨で避難指示が出たら、安全を確認しながらビクビクハラハラで逃げ出すだろうし、登山で悪天候が予想されれば参加を取りやめるだろう。惨事から身を守るのには神経質はとても役立つ。
しかし、あまり過敏に反応し過ぎても困る。正常性バイアスの反対で異常性バイアス(そんな言葉はあるのだろうか?)がかかりやすいのが神経質人間である。絶対に安全ということが確認できないと動かない、というのでは日常生活にも差し支える。神経質人間の場合、適度に正常化バイアスをかけてバランスを取るとちょうど良い具合になるのかもしれない。
最近のコメント