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2009年8月24日 (月)

神経質礼賛 458.うつ病は増えてはいない

 今月の精神神経学雑誌(2009 VOL.111 NO.6)に昨年の学会総会でのうつ病に関するシンポジウムの記事が載っていた。とても興味深い記事なので紹介したい。演者のひとり中安信夫先生(東京大学)は「うつ病は増えてはいない-大うつ病性障害(DSM)とは成因を問わない抑うつ症候群である-」というテーマで講演された。DSMとはアメリカ精神医学会の診断基準のことである。従来診断のうつ病はまじめで責任感が極めて強い性格の人に起りやすい内因性うつ病が中核となっていて内的エネルギーが枯渇した状態を呈する。それに対して、うつ状態を呈するものには、性格因が大きい抑うつ神経症、環境因が大きい抑うつ反応があった。ストレスが強ければ誰でも気分が落ち込んでうつ状態になるわけだが、抑うつ反応は程度が軽ければDSMでは適応障害と診断され、程度が重ければ気分障害の大うつ病性障害(Major Depressive Disorder)と診断される。この大うつ病性障害を従来診断の「うつ病」と言い換えてしまう言葉のまやかしの結果、「うつ病が増えている」ということになってしまう。そこには作為すら感じる、とハッキリ書いてはいないが精神科医が製薬メーカーの提灯持ちになっている現状を批判しておられる。

 田島治先生(杏林大学)は「新規抗うつ薬の登場とうつ病診断の拡散」というテーマで講演され、「うつ病」診断が拡大した原因を分析しておられる。その中で、現代的タイプの、ディスチミア親和型うつ病、自己愛傷つき反応型うつ病の急増について言及している。未熟な自己愛の人間が正常なパーソナリティとして捉えられるアメリカ型社会では、他罰的で自己中心的な性格の人間が社会の中心的なパーソナリティ構造になるのは避けられないかもしれない、と指摘されている。(ここ何人かの日本の首相の顔が頭に浮かぶ。)そして、こうした患者に対しても内因性のうつ病と同様の薬物療法と休養と支持的な精神療法を行ってしまうと、不安定な状態が長期間続き、治療未終結患者となっていくと述べておられる。(だからさる高貴な方の治療がうまくいかないのである。)そして安易なうつ病診断で、ごく軽症のうつ状態や一過性の抑うつ反応に対して「うつ病」として新規抗うつ薬(SSRISNRI)が投与されているが、その背景には過剰なマーケティングがある。新規抗うつ薬は軽症のうつ病に対してはリスクがベネフィットを上回ることを認識すべきである、としている。

 上記二人の先生と反対意見を述べていたのが張賢徳先生(帝京大学)であり、自殺予防の観点から「擬態うつ」「うつモドキ」という考え方は危険であるとしている。確かに一理はあるが、この先生が製薬メーカー主催の講演会や座談会での登板回数が極めて多いのがひっかかる。

 医療費という観点からみても、「うつ病」の間口を大幅に広げて「うつ病患者」を増やし、長期間高価な薬を飲み続けさせるのは、いかがなものだろうか。ましてや神経症に対してSSRIを長期投与し続けるのには私は否定的である。

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