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2009年10月23日 (金)

神経質礼賛 478.悲しくてやりきれない

 今月の17日、歌手の加藤和彦さんが「私は消えゆくだけ」という遺書を残して自殺した。遺書では、自分が世の中に必要な人間だったのか、と悩んでいたことが綴られていたという。

 近年は他の歌手たちに曲を提供したり歌舞伎の音楽を手がけたりしていたようだが、私の世代では「帰って来たヨッパライ」の強烈な印象がある。一般的には「あの素晴らしい愛をもう一度」が一番の名曲だろうか。仲間だけの葬儀で出棺前の挨拶をした「フォーク・クルセダーズ」以来の盟友・北山修(精神科医:九大大学院教授)さんによれば、加藤さんは明るく前向きな反面、完全主義で怒ると怖い面もあった、という。「二度と同じことはやらない」がモットーだった。常に新しいものを開拓していくのには大きなエネルギーが必要で、それができる人だった。基礎気分が高く、極めてエネルギッシュな人は、政治家や財界人や芸術家でしばしば見かける。しかし、そういう人が一転してうつ状態に陥ると、落差が非常に大きいだけに、奈落の底に突き落とされたようになってしまう。加藤さんの場合も、自己否定的な観念に取り付かれて絶望し、不幸な結果になってしまったのだろうと思う。

 私が持ち歩くミュージックプレーヤーにはフォーク・クルセダーズ時代の「悲しくてやりきれない」という曲が入っている。「イムジン河」というレコードが政治的な理由で発売中止になってしまい、その曲を逆回転させて作ったのがこの曲だと言われている。サトーハチロー作詞で後半部分「悲しくて悲しくて とてもやりきれない」の後は1番が「このやるせないモヤモヤを誰かに告げようか」、2番が「この限りない空しさの救いはないだろか」、3番が「この燃えたぎる苦しさは明日も続くのか」となっている。今の若い人が聞いたら、暗い歌だと思われるかもしれない。最近のヒット曲はテンポが速くてノリがよい元気が出そうな歌が多い。しかし、気分が落ち込んだ時・つらい時に癒しとなるのは、音楽療法の「同質の原理」からしても、本当はこのように自分の心情を代弁してくれる曲なのである。こうした曲は、自己評価の低い神経質人間にとっては貴重な存在である。

 誰でも状況しだいではうつ状態になることがある。私自身、若い頃に3ヶ月で体重が12kg減少するといううつ状態を体験したことがある(123)。八方塞で出口のないトンネルに入ってしまったように感じ、むなしさの救いもなく、苦しさがいつまでも続くのではないかと思ったし、モヤモヤを告げるような相手もいなかった。しかし、うつが永久に続くことはない。雪に閉ざされていてもいつかは雪が融けて草木が芽吹く時がやってくるものである。悲しくてやりきれなくても、どん底の後にはいつしかまた楽しい気分も戻ってくるものだ。加藤さんの場合も早まった決断をせずに、誰かに相談していたら、そして適切な治療を受けていたら、また回復して活躍できたのだろうに、と惜しまれる。

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