神経質礼賛 490.腰を軽くする
神経質人間は、用心深く慎重なので、大きな失敗は少ない。それは長所であるのだけれども、気が付いていても行動に取り掛かるのが遅いので、結果的には気が回らないのと同じになってしまうことがある。頭の中では「めんどうだなあ」「もっとラクな方法はないかなあ」「誰かがやってくれるんじゃないかなあ」というような考えが巡っているのだ。
森田正馬先生のもとに入院経験者や外来通院中の人が月1回集まる「形外会」の場で、先生が参加者たちを叱る場面があった。先に来た人たちが前に詰めないので、後から来た人たちが座れない、ということがあったからだ。誰しも状況はわかっていたはずだが「先生に近いところでは恥ずかしい」「何か言われたらどうしよう」「自分が前に詰めなくても誰かが前に詰めてくれるんじゃないか」と思って動かなかったのだろう。気が付いたら、腰を軽く行動することが大切である。森田先生は次のように言っておられる。
腰が軽いという事は、思い立った事に、早く気軽く手を出して実行する事であって、これは何事にも功利的で、一つ一つの事に労力と時間の見積もりを立て、損得を打算し、骨惜しみをして、物事をおっくうに思うという事のない時にできる事である。つまる所は捨身の態度という事に帰着する。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.743)
日常生活の中では、「めんどうだ」「何で自分がやらなきゃならないんだ」とか考えている間に、腰を軽くしてサッと自分が行動すれば済んでしまう雑用はいくらでもある。さらにちょっとめんどうな仕事であっても、「神経質を生かす仕事法」(70話)で書いたように、気分は乗らなくてもとにかく手を出していけば、本来、神経質人間は有能であるから、どんどん仕事が片付いていく。そして気分も後からついてくるものである。
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