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2010年2月12日 (金)

神経質礼賛 516.アップルビー教授の講演会

 田舎に住んでいると、専門医更新のためのポイントを取るのが大変で、東京の研修会に足を運ばなければならない。先週の日曜日、研修会として、イギリスの精神保健衛生行政の中心的人物であるルイス・アップルビー(Louis Appleby)教授の講演会が東大安田講堂であったので、聴講しに行った。

 どうせ行くならば他のこともしよう、と欲張るのが神経質人間の常である。銀座ヤマハの開店時刻に着くように新幹線に乗る。ヤマハ銀座店は有楽町で仮店舗営業が続いていたが、この日がその最終日で、今月末には銀座で新ビルでのオープンとなる。楽譜売場でチャイコフスキーの弦楽セレナーデの全パート譜とスコアのセットを見つけ、購入。今までは小さいスコアをめくりながら弾いていたのがこれからはラクになる。さらに、フィギュアスケート・ミュージック・コレクションという伴奏CD付ヴァイオリン譜を見つけた。フィギュア・スケートのBGMとして使われるようなクラシック曲をアレンジしたものだ。私がよく弾いているモンティの「チャルダッシュ」が入っていた。これまではピアノ伴奏譜をシンセサイザーソフトに自分で入力したもので伴奏させていて、ぎこちない感じがしていたが、これで解決である。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第一楽章短縮版も入っていて、これも楽しめそうだ。

 東大病院側の裏門(鉄門)から構内に入り、歩いていくと、すれ違った女性から「安田講堂はどちらですか?」と尋ねられた。広い構内で「迷子」になってしまったとのこと。私と同様、専門医のポイントを取るために地方から出てきた女医さんだった。ポイント難民は私だけではない。参加費は事前に振込だったにもかかわらず、例によって受付に手間取り、開始が15分遅れた。主催者の発表によれば参加者は400名で、今回は専門医だけでなく、一般公開のため、患者団体の方、政治家も参加しているという。イギリスで日本大使館の一等書記官を経験したことがある厚生労働省の武内和久氏がイギリスの医療制度・医療改革について説明した後、アップルビー教授の講演が始まった。ブレア政権の時代、精神医療に多額の予算を回してアウトリーチチーム・危機解決チーム・早期介入チームを作るとともに上級精神科医・精神保健看護師の数を増やした。その結果、入院数の減少・患者満足度の向上・就労の増加がみられたという。また自殺予防対策により(特に若年者の)自殺数が減少している(ちなみにイギリスでの自殺者は年間4500人程度で日本よりはるかに少ない)。薬物療法については、国立最適医療研究所(NICE)が治療の評価を行い、臨床ガイドラインを公表している。入院ケアの改善も図られ、70%が個室で男女別、明るい病棟となり、全面禁煙となっている。さらには、うつ病、認知症に対する取り組みも強化しているという。

 精神科の全面禁煙については質疑応答の場で患者さんの御家族という方から質問が出た。それに対してアップルビー教授は「イギリスでも当初は賛否両論があったが、うまくいっている。精神病患者さんは(種々の身体病について)ハイリスクなのだから禁煙がよい」という趣旨の回答をされていた。日本では精神科病院といえばタバコ臭いイメージがつきまとう。一般病院が全面禁煙化されつつあるのに、病院監査にやってきたお役人様は「患者さんの権利でいつでもタバコを吸えるように病院側で配慮しなさい」というとんでもないことをおっしゃる(29話:不可解な保健所の御指導)。その結果、身体合併症を増やして患者さん本人を苦しめ医療財政も圧迫するという単純なことすらおわかりにならないのである。喫煙によって肝臓内で代謝酵素誘導が起き、抗精神病薬のクリアランスが上昇して薬の効果が低下するので、より多量の薬が必要になるという問題もある。都道府県・保健所のお役人様方にぜひ聞いていただきたい内容だった。また、日本のように医療費を削減せよ、の一点張りでは医療はよくならない。関係者の努力や熱意だけでは限界がある。ムダはいけないが、イギリスのように十分な予算を医療に投入していく必要があると感じた。

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コメント

先生こんにちは!イギリス人教授の講演会、内容が充実していたとのことですね。

私がドイツとアメリカで痛感したのは、こちらの知識人の「専門家としての知識と意識の高さ」です。超一流の先生方は決して権威をふりかざしたりしません。むしろ驚くほどに普通人としての感覚をもち、何事に対しても柔軟でかつブレないのです。喫煙に対する日本のお役人の言葉、信じられません。クイズ問題を解くのは得意なのでしょうが、論理的に物事を思考する能力に著しく欠けていますね。

ここ数日、とても体調が悪くて「もしや花粉症?」と思い薬局に行きました。「クラリティン(ロラタジン)」を服用しています。私には効果があるようです。

ちなみにお値段は10錠で90セント、約1ドルでした。

コメントいただきありがとうございます。そうですね。日本だと学閥があったり先輩を立てなければならないとかいろいろな要素があってクリアカットに正論を通しにくい風潮があるかもしれませんね。

そろそろつらーい花粉の季節です。私も2月になってから薬を飲み始めています。クラリチン(loratadine)は第2世代抗ヒスタミン剤の中でも眠気が少ないもので良いと思います。日本だと10mg錠1錠の薬価が126円します。そちらの方が安く手に入るようですね。

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