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2010年5月 7日 (金)

神経質礼賛 543.里山の医師

 昨夜、NHKのヒューマンドキュメンタリーで「88歳 里山の医師~静岡市清沢・最後の50日~」という番組が放送された。清沢は名前の通り山間部の地域だ。茶畑の緑が美しい。若い人たちは町へ出てしまい、今では高齢者が大多数を占める。この地に診療所を開き、61年間地域医療に尽くしてきた秋山邦夫先生だが、耳が遠くなり聴診も大変になってきて、この春、診療所を閉じる決意をされた。先生の毎日は豆腐とワカメの減塩味噌汁を作り、仏壇に供えて10年前に亡くなった奥さんの遺影に手を合わせることから始まる。朝から診療所には次々と患者さんたちがやってくる。3回脈を取り、聴診し、尿検査は古い遠心分離機を使って自分で顕微鏡を見る。その間も患者さんとの会話は続く。一人の診察に20分かける。会計も先生自身で行う。外来診察の合間に往診に行く。狭い山道を軽自動車で走り、最後は歩いて急坂を登る。時には在宅高齢者の最期を看取る。単に病気の治療をするだけでなく、減塩食をすすめたり健康体操を広めたりして病気の予防にも力を入れてこられた。「病んでいる人を見ると気の毒」という先生の言葉に医の原点を感じた。現代のデータとエビデンス最優先の医療では、「病」の治療ばかりに焦点が当てられ、「人を診る」が欠落しがちだということに改めて気づかされる。

 今となっては、こういう医療はなかなかできることではない。お前はできるか、と言われたら、私は完全にアウトである。実は秋山先生の息子さんとは高校3年の時に同級だったが、彼も診療所を継がずに街中で開業している。

 精神科の医療でもアメリカ流の操作的診断とエビデンスに基づく薬物療法が主流となり、「人を診る」が希薄になりつつある。マニュアル化医療には工場の工程管理の手法が導入されようとしている。画像診断や血液検査で診断する研究が精神科領域でも急速に進んできているので、もしかすると未来の精神科病院ではロボット医師が診断治療を担当しているかも知れない。

私は里山の医師にはなれないけれども、その人の健康的な部分を伸ばしていく森田療法の考え方を少しでも広めていきたいと思う。

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コメント

先生、ご無沙汰しております。
「里山の医師」、感銘して拝読いたしました。
秋山先生の番組は残念ながら見逃しましたが、
地元、静岡にこのようなご立派な方がいらしたことを、
(親戚でもないのに)とても誇りに思いました。

私に言わせると、先生もまた
>アメリカ流の操作的診断とエビデンスに基づく薬物療法
>マニュアル化医療には工場の工程管理の手法
が見落としてしまう、患者さんの一人一人を丁寧に診る医療を
森田療法と「神経質スピリット」を通じて
実践されているのではないかと思われ、
こういう良心的でご立派なお医者さんが
身近にいてくださることをとても心強く感じています。

静岡がまた一人、第二の秋山先生を輩出したことを、
(親戚でもないのに)とても誇りに思います。

上のコメント、投稿者の名前も書かず
大変失礼いたしました(汗)。

keizo様

 コメントいただきありがとうございます。掲示板「日々の賀状」はいつもタダ読みばかりしていてすみません。

 離島や僻地はたまた山谷・釜ケ崎で地域医療に携わっている医師の姿を見ると、内心忸怩たるものがあります。

 秋山先生のように高齢になってもよい仕事を続けていくためには自分自身の節制も大切だろうと思います。(影の声:酒はいかん!)

初めまして。里山の医師で検索してきました。あの番組を昨夜の再放送と二回見たのですが「病気の人が気の毒」「自分の役目だと思ってきた」という秋山先生の淡々とした様子にとても感銘を受けました。
静岡市には親戚も住んでいますがあのように山深い場所もあるのだなということも驚きでした。医学に携わるお仕事は人の命に関わることであり、大変なお仕事だと思いますが秋山先生のような方がいらっしゃるのを知るととても温かい気持ちになります。

いかりん様

 コメントいただきありがとうございます。再放送があったのは知りませんで、残念ながら録画できませんでした。

 秋山先生のように人助けをしたい、というのが医の原点だろうと思います。そして人と人のつながりが大切なのだと思います。専門分野の違いはあっても、秋山先生の「医の心」は引き継いでいきたいと感じています。

 

お返事ありがとうございます。
大原健士郎先生が今年亡くなられたことも
こちらのブログで知りました。不思議なご縁を感じてしまいました。
大原先生の著書は若い頃随分読みまして
心の支えになった時期がございました。
お会いしたことはございませんが、とても親しみを感じておりました。
ご冥福をお祈りいたします。
私は咳喘息というのになりまして病名がわかるまで随分苦しみましたがいい先生にめぐり合い助けられました。お医者さんというのは本当に大変なお仕事だと思いますが、先生のように医の心を大切に思われる先生もたくさんいらっしゃることが有難いと思います。

いかりん様

 コメントいただきありがとうございます。大原先生の御著書は自分で買ったものより直接いただいたものの方が多いのですが、どれも読みやすい名著だと思います。

 咳喘息は最近よく耳にする病名です。長く咳が続くと苦しいことと思います。良い先生にめぐり合われて上手に病気と付き合っておられるのですね。どうぞお大事に。

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