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2010年9月20日 (月)

神経質礼賛 587.他人の不幸は蜜の味

 最近の脳科学では人間のこころの動きを解明する研究が盛んに行われている。放射線医学総合研究所(千葉市)が今年の2月に発表した研究では、妬みの感情には脳の前部帯状回(葛藤や痛みを処理する部位)が関与し、妬みの対象となる人に不幸が起ると線条体(報酬に関連する部位)が活動していることが示されていた。「他人の不幸は蜜の味」のメカニズムが明らかにされたわけである。さらに今月発表された研究では、敗者の悔しがる表情を見た勝者では前部帯状回に強い電気信号が発生し、それは自己愛の強い人ほど反応が強いことが示されていた。こういった研究は将来パーソナリティ障害の診断や治療(社会適応改善)に役立つものと思われる。

 神経質性格にも自己愛的な部分はある。特に対人恐怖にみられる自我の強力性と弱力性は精神分析の研究者からみれば、自己愛(ナルシシズム)と自虐愛(マゾヒズム)ということになるのだそうである(中久喜雅文:森田療法の精神分析的理解 超文化的視点より.日本森田療法学会雑誌,Vol21;15-18)。従ってSSRIなどによる薬物療法だけでは、不安をベースにした諸症状は改善して「弱力性」が消えて「強力性」だけが残ったとすると、攻撃的で自己中心的な鼻持ちならない自己愛が強いだけの人間になってしまう可能性が考えられる。

分析的見地からすると、森田療法では、治療者に対する健康な理想化と同一化、治療者・他患者からの共感的なフィードバックの内在化などによりナルシシズムが健常化するとともに、自己に対する攻撃性を作業や勉強に置き換えることなどで昇華してマゾヒズムの正常化が起るのだという。

 森田正馬先生はよく「雪の日や あれも人の子 樽拾ひ」という俳句を患者さんの指導の際に説明された。普通ならば「かわいそうに寒かろう」と思うのに、神経質は「小僧は寒いことを知らない」「自分ばかり寒く、世の中の人は強いから寒くない」と自己中心的な差別観で見てしまいがちである。さらに「唯見れば 何の苦もなき 水鳥の 足にひまなき ものと知らずや」という歌のように、誰もが苦しくても素直に我慢しているだけのことなのだ、と話されていた。集団の中で作業中心の生活をしているうちに、自然と平等観が身についてくる。

現代では種々の精神療法の中では認知行動療法がもてはやされているが、認知行動療法が確立されるよりはるか以前に、偏った認知が修正されて適切な行動が取れるようになる森田療法が日本では確立されていたのである。

自分を守っていく上で健全な自己愛は必要ではあるけれども、「他人の不幸は蜜の味」を感じた時や敗者を見て「ざまあみろ」と感じた時には不健全な自己愛ではないかと自省してみる必要がありそうだ。

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コメント

四分休符先生、お久しぶりです。

先日はメールでご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳ありませんでした。

夏期休暇中にゆっくり休むことが出来(森田療法的にはいけないことだと思うのですが...)、落ち着いた状態で大学に戻ってきました。休暇中に休む事ができたために、調子が良くなって来たように思います。現在テスト期間中で、多くの留年者を出す厳しいテストが待っています...

SSRIについての先生のお話、いつも読ませて頂いています。先生のおっしゃる通り、今にして思うと性格は変わってしまうように感じています。もちろん、全てをSSRIのせいにすることは出来ないと思いますし、私の根本にある性格が問題だったのかと思うのですが、やはり葛藤が減るのは、良い事がある反面、デメリットも多かったように思います。最近、知り合いの基礎医学の先生から聞いたのですが、サイコパスには、セロトニン合成の基質の濃度(トリプトファン濃度)とセロトニン分解産物濃度の両者の血中濃度が高い人が多いという話を聞きました。信憑性は判らないのですが、本当だとしたら怖い話ですね。

現在の私は、人の眼を見て話せない、ろくに世間話が出来ない、普段の気の利いた受け答えが全く出来ないなどいつも情けない思いをしています。

色々な不満を訴えながらも、逃げてはいないので、よい方向に向かっているのかと思うのですが、もう少し精神的に強い、図太い人間になりたいです。

神経質なMedical Student 様

 製薬会社さんの言うように、脳内シナプスのセロトニン1A濃度を上げてセロトニン2A・2C濃度を下げれば不安はなくなってすべて解決・万々歳というわけにはいかないだろうと私は思っています。あと10年・20年経った時、現在のようなSSRIを処方するだけの不安障害の治療法は無謀だったという反省が出てくるはずです。あなたの言われるように、SSRIにはメリットとデメリットがあるのだと思います。

 人の眼を見て話せない・・・じっと人の眼を見つめたまま話したら、恋人同士かケンカを売っているのかどちらかでしょう(笑)。視線を合わせたりはずしたりするのが普通です。私も20代前半までは、あなたと同様に「図太い人間になりたい」と思っていましたが、まあこんなもので仕方ないと思うようになりました。図太い人は周囲に迷惑をかけまくりますが、神経質ではそんな心配もありません。多いに心配性を生かして、きびしい試験(試問)を乗り切って下さい。

おひさしぶりです。
脳脊髄液減少症のゆめです。

すでにご存知かと思いますが、
日経メディカル9月号に、脳脊髄液減少症の記事が載っています。

これらの記事を多くの医師の皆様がお読みにあなり、さらに脳脊髄液減少症やブラッドパッチに対して誤解と偏見をもたれては大変だと危惧しております。

今回の記事は患者の私の経験と照らし合わせると、脳脊髄液減少症の患者の実態をあまりご存知ない、批判的立場の人たちの手による記事と感じました。

とても残念で悲しく思います。

ゆめ 様

日経メディカル2010年9月号p.24-26に「脳脊髄液減少症の正体 ブラッドパッチの安易な実施は禁物」と題する記事があったのは私も読みました。当サイトは神経症(不安障害)・森田療法・森田的生き方をテーマとしたものです。日経メディカルの記事に対する御意見は下記にお寄せになられてはいかがでしょうか。

(日経メディカル9月号p161より引用)
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