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2010年9月10日 (金)

神経質礼賛 584.疾患啓発広告

 新聞の全面広告で、製薬会社がスポンサーなのに商品名がなく、「こんな症状があったらお医者さんに相談しましょう」というものをよく見かける。こういった広告は疾患啓発広告というのだそうだ。TVのCMでも、鉄腕アトムが逆流性食道炎を啓発するCMをよく見かけるし、薄毛・・・男性の脱毛症のCMも目に付く(私の髪も薄くなってきたので気になってしまうのだろうか)。製薬会社が市場拡大をめざして潜在患者の発掘に力を入れているため、疾患啓発広告は急激に増えている。

 こうした広告は、新聞やTVといった媒体を通じて多くの人々に医療情報が行きわたるメリットがあり、病気によっては早期発見・早期治療につながる可能性がある。その一方で、自分も病気だと思い込んだ人が、不必要な受診をしたり投薬を要望したりする可能性もある。それに、疾患啓発広告の対象となっている「疾患」には直接命にはかかわらないようなものが多く、中には薬よりも生活習慣を是正して改善が期待できそうなものもある。

 近年、「病気作り(Disease Mongering)」という言葉が作られ、それについて研究している人もいる。アメリカでは製薬会社から提供された資金が患者団体やマスコミに流れて、健康人を病人に変え、薬害の被害者になるリスクを負わせている、といった批判が出ている。また、疾患のガイドラインを改定して病気の範囲を広げる医師たちに対する批判もある。

 最近、抗うつ薬SSRIのメーカーさんが力を入れているのは、社会(社交)不安障害に対する処方の拡大である。「あがり症は病気であって薬で治る」という印象を与えるような疾患啓発広告を盛んに出している。病院に来る営業担当者さんもしきりに処方を勧めるが、私はよほど重症の人でなければいきなりSSRIを処方することはない。「あがり症」というだけでSSRIを処方していたら、日本人の半数はSSRIを毎日飲むことになってしまうかもしれない。その前に私も飲まなくてはならないだろう。そんなことになったら、健康保険制度はパンクする。

 人前で緊張し、あがるのは多かれ少なかれ誰でもあることだ。自分だけが特別苦しいわけではない。ドキドキしながら不安なまま仕方なしに話していけば何とかなるものである。顔が赤くなろうがどもろうが話を伝えるという目的が果たせればよいのだ。

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コメント

四分休符先生、初めまして。にょぼすけと申します。
子供のころから会食恐怖症(社会不安障害の一部になるのでしょうか。)です。

四分休符先生のブログは、数日前に知人から聞いた大原健士郎先生について検索していたら発見しました。
まだ一部しか読んでいませんが、会食恐怖症を克服する上ではもちろん、もっと広い視野で、仕事をする上で、生きていくうえで色々とヒントを与えていただけそうだなと感じており、まだ読んでいない記事も徐々に読んでいきたいなと思っております。

さて、実はここからが本題なのですが、私は会食恐怖症の経験を生かして(?)ブログ(会食恐怖症のページ)を書いています。
http://blog.goo.ne.jp/nobo66
四分休符先生のブログは会食恐怖症の方々にとって参考になることが載っていると思うので、上記の私のブログからリンクを張らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?リンクOKであれば、私のブログの「ブックマーク」欄に載せさせていただきたいと考えております。ご検討よろしくお願いいたします。

にょぼすけ 様

 コメントいただきありがとうございます。「会食恐怖症のページ」を読ませていただきました。会食恐怖も対人恐怖(社交不安障害)の一つの形です。ページの中で会食恐怖であることを告白することを「カミングアウト」と表現されていたことはなるほどと思いました。私が「対人恐怖の告白」(486話)に書きましたように、対人恐怖であることを人に告白するということは、とても敷居が高いことなのです。告白できただけでも大きな前進になると思います。(実際には告白された相手も、え?そんなことに悩んでたの?と思うはずです。神経症の症状とはそんなものです)また、ご経験をブログで発表されているのも、同じような症状に悩んでいる方々の助けになる、ということで大変よいことだと思います。お仕事で御多忙とは思いますが、少しずつでも書き続けられるとよろしいかと存じます。

 当ブログのリンクはご自由にして下さって結構です。わざわざ御連絡いただきありがとうございました。

四分休符先生、リンクの許可を頂きありがとうございます。早速リンクさせていただきました。

>(実際には告白された相手も、え?そんなことに悩んでたの?と思うはずです。神経症の症状とはそんなものです)
はい、まさにその通りで、自分が思うほど他人は気にしないんだとわかり、悩みが小さくなりました。

これからも「神経質礼賛」を楽しく読ませていただきます。

こんにちは、森田療法や社会不安障害を検索していて、このサイトを発見しました。
突然で申し訳ございませんが、ちょっと意見を頂きたくご連絡さしあげました。

私は、10年前くらいに、急に人前での緊張がひどくなり、対人恐怖、社会不安障害に悩んできました。去年あまりにも生活に支障がでてきて、このままでは駄目だと思い藁にもすがる気持ちで森田療法の施設に2ヶ月ほど入院をしました。入院中は、色々な作業をして、言葉を使わない生活、森田療法のあるがままを体験し、症状はあるがままで、症状をどうにかしようとする自分から離れ、生活もいい方向に向かうようになりました。

しかし、最近また、人前での緊張が激しく、表情がひきつってうまく笑えず、症状をどうにかしようとする、入院前の自分に少しずつ戻ってきているような感じです。
仕事などのやるべき事はやっているのですが、異常なくらい緊張が強く常に人と話すときにビクビクしています。

社会不安障害などのウェブサイトや広告でよく言っているように、社会不安障害は脳のセラトニンのバランスがおかしくなっているから、うつなどと同じく、放っておかずに薬でよくなるという風に見て、私は薬によって社会不安障害を完全に取り除き、治そうと思っていませんが。むしろ治そうとすることから、悪い方向に行くのも分かっていますので。
ただ、もし鬱と同じように薬が必要なら、薬を飲みながら入院で体験した森田療法を実生活で実践していこうと思うのですが、薬は飲まずに、森田療法の実践をしていくだけの方が良いのか、先生のご意見をお聞かせ願いませんでしょうか?
宜しくお願いいたします。


RY様

 コメント拝読いたしました。

 製薬会社にとってSSRIは「ドル箱」「打出の小槌」のような存在です。薬価が高い上に一旦服用し始めれば長期にわたって服用することになりますから、当初の「うつ病」以外の適応疾患を増やしてマーケット拡大に力を入れているわけです。

 製薬会社は、脳内シナプスにおけるセロトニンの低下が鬱や不安障害の原因となっている、と宣伝しています(ここでいうセロトニンとはセロトニン1Aのことです。ややこしい話ですがセロトニン2Aや2Cは増加すると反対に不安・焦燥をきたしますし、セロトニン4は胃腸にはたらくものです)。しかし、なぜセロトニン1Aが低下するのか、というメカニズムはまだわかっていません。また、うつ病は薬を飲まなくても適度な休養と生活指導だけで時間が経てば自然治癒する場合も多いのです。不安障害にしても、森田療法、認知行動療法、場合によっては精神分析療法で治ります。別にセロトニン1Aを増やす薬を飲まなくても正常化するわけです。セロトニン1Aの低下は原因ではなく結果なのかもしれません。このあたりは将来明らかになるとは思います。

 ちょっと話がそれましたが、ご質問の件に戻りましょう。対人恐怖(社交不安障害)に悩まれて2ヶ月間入院森田療法を受けられて改善し、仕事に戻ったものの、症状が苦しい、ということですね。

 直接お会いしたわけではないので、以下はあくまでも参考意見ですので、主治医の先生とご相談されることをお勧めします。

 入院中はスケジュールが決められ、いろいろな係や当番があります。また、しだいに後輩たちのめんどうをみる役目も回ってきます。したがって、作業中心・目的本位の生活が送りやすくなっています。いやおうなしに恐怖突入にもなります。しかし、退院してしまえば、すべて自分でやっていかなければなりません。避けようと思えば避けられることにもなり、逃げ腰になってしまうと、だんだん後退していくことになります。そういう意味では退院してからが本当の勝負なのです(禅寺で修行して悟った気になっても、日常生活に禅の考え方が生かせなければ何もならないのと同じです)。

 森田先生は次のように言っておられます。

「対人恐怖で治療困難なるものゝ例」より
 掃除でも風呂焚きでも、病氣を治すために働いて居る間は病氣は治らない。病氣を治さうとする事を忘れた時に、病氣がなくなって居るのである。退院後も、周囲に適應して行く間は再発はないが、再発しないために、一定の模型的の生活状態をとって居る間は、病氣は本当に治って居ないのである。(白揚社:森田正馬全集 第4巻 p.264)

 症状が苦しい、それはわかります。ただ、つらい時に「ここが勝負どころ」とふんばって人前で話すなどの嫌なことを避けずにやっていくことが大切なのではないでしょうか。そして、苦しいのはあなただけではありません。何の苦もなく人前で堂々と話しているかに見える人でも、ドキドキしながら、内心は激しく緊張しながらであるということはよくあります。俳優や歌手やお笑い芸人でさえ、本当は人前が苦手という人がいるという例は、当ブログで何度も書いてきたことです。そして私自身、精神科医という仕事をしていながら、人前では激しく緊張します(笑)が、まあこんなものと思って、緊張を相手にしていません。

 幸い、つらいながらも出勤されているようですので、症状(気分)が良い悪いということよりも、今日一日出勤できた、苦しいながらも仕方なしに仕事できたという「事実」をプラス評価して続けていかれたらよいでしょう。どうしてもつらくて症状に圧倒されて仕事に行けないとか体重が激減するような本当の「うつ」を併発しているのであれば、主治医の先生にお願いして薬を処方してもらうという選択肢はありますが、一通り森田療法を受けられて、会社に何とか行けているのであれば、このまま続けていかれたらいかがでしょうか。

突然の長文にも関わらず、コメント返信して頂き有難うございます。

インターネットで社会不安障害と入力するとSAD Netという総合情報サイトがすぐでてきて、ここのホームページなどみてると、薬で治療を受けてみようかなと思うほど、SSRIがこの治療に重要視されていて、悩んでいる人が、このサイトを見たら、絶対SSRIを飲もうと考えるようウェブサイトが作られていると思います。このサイトも製薬会社が運営しているし、先生の仰るとおり、やはりマーケット拡大のためなんですね。


私もやはり入院中は、たしかにスケジュールが決められた中だったので、いやおうなしに行動をしていましたが、退院してからは、自分次第で避ける事が簡単にできるので、最近は逃げこしになっていたなとコメントを拝見していて気づきました。

私の場合は、社会不安障害で気持ちが晴れないことがしょっちゅうですが、本当の鬱にはなっていないと思いますし、仕事などにも不安がかなりある中いってますので、このまま薬は飲まずに、嫌なことを避けないことが大事、本当にその通りだと思いますので、今までの生活を継続し生活してみようと思います。

コメント本当に有難うございました。

 

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