フォト
無料ブログはココログ

« 神経質礼賛 604.言葉は心の使い | トップページ | 神経質礼賛 606.炭酸リチウム錠回収 »

2010年11月12日 (金)

神経質礼賛 605.貝原益軒も神経質

 製薬メーカーが出している雑誌の中で最も医学以外の記事が多い(?)のは大塚製薬の「大塚薬報」という雑誌だと思われる。何しろ古今東西の名画を原寸大の陶板で複製したものを展示した美術館を持っているくらいの会社であるから、美術・文学・歴史関係の記事は豊富にある。毎回読むのが楽しみである。このところ作家の山崎光夫氏による「江戸の人生名人・貝原益軒 未公開資料を読み解く」と題した連載記事がある。今月号は第四回で、未公開の『益軒用財一端』について書かれている。

 江戸時代の本草学者(今で言えば薬学者)・儒学者の貝原益軒(1630-1714)は生まれつき病弱であり、いかに体の養生をして長寿を全うするかというテーマをライフワークにしていた。日本史の教科書で名前は聞いたことがある、という方は多いと思う。『大和本草』という専門の著書の他、一般向けの『養生訓』が有名である。今回の資料『益軒用財一端』には「若い頃から無愛想なので、会話が少なく人と話すのが苦手だった」「生まれつき胃腸が弱くて宴会を好まなかった」といったことも書かれているそうだ。益軒さんもやはり神経質人間だったのだ。この書は財産をどう用いるか、家計をどう安定させるか、ということについて書かれている。益軒は倹約の重要性を常々説いていた。ぜいたく品を求めず、家計の中でやりくりし、借金はしない、普段から人に物を借りることをしない、という無借金・無借物主義を自分でも貫いた。代金を商人に逆に催促してすぐに支払うという面もあったらしい。これなど、未払いがあると気持ちが悪いので一刻も早く払おうとする小心者の私はとても共感するところである。莫大な借金をしていても平気で国債や地方債をいくらでも発行し続ける現在の国や地方の放漫財政を見たら益軒は何と言うだろうか。

 益軒は病にかからずに健康な生活を楽しんで長生きするために四つの欲を抑えるように説いていた。①食欲、②色欲、は確かに行き過ぎるとよろしくない。③むやみに眠りたがる欲、④いたずらにしゃべりたがる欲、が選ばれているのが面白い。③は不眠を訴える神経症の人に言えることである。統合失調症や躁うつ病といった精神病の不眠とは異なり、神経症の不眠は「不眠恐怖」であって、本当はどこかで眠っているのである。むやみに眠ろうとする必要はない。寝すぎれば寝くたびれることにもなる。④は一般的には「口は災いのもと」ということかもしれない。神経症の人の場合は、「症状」のグチをこぼしたがる点が該当する。ちなみに今でも不問技法を重視した禅的森田療法を行っている京都の三聖病院にはおしゃべりを禁ずる張り紙があるそうである。

益軒自身、当時としてはかなりの長寿であり、晩年も健康で妻と旅行を楽しんでいたという。益軒さんのように神経質を生かして上手に病を予防し、長寿人生を楽しみたいものである。

« 神経質礼賛 604.言葉は心の使い | トップページ | 神経質礼賛 606.炭酸リチウム錠回収 »

コメント

先生お元気ですか!

11月13日(土)に行われました財団セミナーを今日より5日間以下のアドレスで放送します。
また、お知り合いでお困りの方がいらっしゃいましたらどうぞお知らせしてさし上げてください。


<ユーチューブ・チャンネル>
http://www.ustream.tv/channel/心の健康セミナー

内容は以下のとおりです。

テーマ:「"不安とうつ"の森田療法」
講演:「強迫性障害に対する外来森田療法」
久保田幹子(法政大学教授)

「参加者との質疑・応答」


セミナーをご覧になった感想をお聞かせくだされば幸いです。


 さて、最近、のめり込んでいます石田梅岩先生のことは生活の発見誌10月号にイズミヤの清水社長さんが詳しく書かれています。

 この石田梅岩先生も以下のように神経衰弱で田舎に戻り静養をされているようです。

「我レ幼年ノ時分ヨリ生レツイテ理屈者ニテ、友達ニモキラハレイヂノ悪イコト多ク、十四五歳ノ頃フト心付有テ、是ヲ哀シク思フ……」(『石田先生語録』)

 意地っ張りなところがのちのち石にかじりついてでも主張を通す意志の強さにもなり、また後年の『都鄙問答』をはじめ、問答方式で展開する梅岩の著書や記録の語り口にも反映しているように思えます。

 曲がったことは嫌いと言いながら、それで人に突っかかるというのでもなく、自分の心にため込んで置くばかりの内向的な性格のためだったせいか、とうとういまで言う鬱病のような症状になったり、脾臓や胃をわるくし一日一食しか食べられずに周りを困らせたと言います。

 なんだか財団の岡本会長さんの昔を思い出します。笑い。石田梅岩先生も貝原益軒先生も森田正馬先生に診ていただいていたら世の中どうなっていたでしょうか……。

万代博志様

 コメントいただきありがとうございました。また、講演のネット公開情報、ありがとうございました。

 以前、万代さんからのコメントを見て、石田梅岩について調べたくて地元の市立中央図書館で文献をあさったのですが、梅岩や心学を単独で取り上げている書籍がなくて、そのままになっています。生活の発見誌10月号の『ストレス社会に苦悩する人々を救うメンタルヘルス岡本記念財団 森田正馬と石田梅岩、「あるがまま」の教え』という記事は私も大変興味深く読みました。今回書きました貝原益軒(1630-1714)の思想は、少し後の石田梅岩(1685-1744)の思想やはるか後の森田先生の考え方と相通じるところがあるように思います。

 久保田先生の講演、動画で最初のところを拝見しました。まだ全部は見切れないので、とりあえずダウンロードして、少しずつ見ていこうと思います。それにしても司会をなさっていた山中様は全くお変わりありませんねえ。森田の達人ともなると年を取らないということでしょうか(笑)。こういった動画を利用すれば全世界どこでも森田療法について手軽に勉強できてすばらしいことだと思います。これからも是非こうした企画をお願いします。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 神経質礼賛 604.言葉は心の使い | トップページ | 神経質礼賛 606.炭酸リチウム錠回収 »

最近のトラックバック

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30