神経質礼賛 614.酒癖
このところTVや新聞では歌舞伎役者の市川海老蔵さんが顔面を殴られて重症を負った事件について繰り返し報道されている。看板役者にとっては命とも言える顔の重症であるから大事件である。当初の報道は「酔った人を介抱していたら、知らない外国人風の黒い男に殴られた」ということだったのだが、海老蔵さんが泥酔して、暴走族のリーダーにからんでいたという話が出てきた。そして、普段から酒癖が悪いなどの品行上の問題がTVのワイドショーや週刊誌で次々と暴露されるようになった。海老蔵さんは、将来「市川団十郎」の襲名を約束された歌舞伎界のプリンスということで人気があり、本業以外にTVのバラエティー番組に登場したり、CMに登場したりしていた。しかし、本業の復帰にも期間がかかりそうだし、イメージダウンでCMもキャンセルされ、泣きっ面に蜂といったところである。
幼い頃から芸を叩き込まれて歌舞伎役者としての厳しい修行をしてきたのだろうとは思う。しかし、社会性が身についていないうちに周囲から特別扱いされていき、誰も注意してくれる人がいなくなって自己愛が肥大していき、いつしか「裸の王様」になってしまったのだろう。12月7日夜の記者会見では「日頃の自分のおごりが招いたこと」という反省の弁があった。今回の事件を良薬として、歌舞伎史に名を残す大役者に成長して欲しいものだ。
酒を飲んで抑制が取れた時にはその人の本性が出やすい。泣き上戸、笑い上戸、はまだよいとして、飲んで周囲の人に絡むとか、セクハラ行為や暴力行為に及ぶような人、いわゆる酒癖の悪い人には酒を飲む資格はない。酒は健康に気をつけながら楽しくおいしく飲みたいものだ。
用心深い神経質人間も酒を飲み過ぎればとんでもない失敗をすることがある。同様に抗不安薬やSSRIといった薬物に頼り過ぎていると、時に気が大きくなって、対人トラブルを起こすこともあり得る。薬は症状を軽減してくれるけれども神経質性格の良さも殺してしまうマイナス面がある。自己判断で薬の量を調整しないで主治医とよく相談した上で服用することが大切である。
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わたしもパキシルとリフレックスを服んでいますが
少し前までは
ときに人から見れば信じられない大胆な行動をとり
大きな失敗をしたこともあります。
社会性の枠を外すようなことは極力、避けなければと思い(結局、損をしますから)、いまは衝動が起こったときにも「意志」で抑えられるようになりましたが、薬のせい、というのは確かにあるように思います。
わたし(たち)のような薬を飲まないと「障害」が出てしまう類のヒトは、でもやはり、理解されないですね。わたしの場合は鬱ではなくOCDなのですが、妻も理解してくれません。
歌舞伎役者や芸術家なら、それは、糧にもなるし、もしかしたら、その言動こそ作品にります。しかし会社勤めをしている身には、かなり思い荷物です。
投稿: ゼロ | 2010年12月11日 (土) 22時46分
ゼロ様
貴重なコメントをいただきありがとうございます。
強迫性障害(OCD)は、自分でもバカバカしいと思いながらも強迫観念が浮かんだり、強迫行為(手洗いなどの儀式や安心するための確認行為)を繰り返してしまうもので、本人にとっては非常に辛いものです。しかし、周囲の人たちからは、何をやっているんだ、と理解されにくい面があります。
現在のICD(WHOの診断基準)やDSM(アメリカ精神医学会の診断基準)では「障害」ということになるのですが、ここからが障害でここからは健常という線引きには疑問があります。強迫観念にしろ強迫行為にしろ、程度問題で多かれ少なかれ誰にでもあることだからです。「神経質は病気でなくて、こんなしあわせなことはありません」と言われた森田正馬先生の考え方でも良いのではないか、と思っています。
そういう私自身、子供の頃は「4」とか「9」とかいう数字を極度に嫌って、歩数を調整して歩いたものです。今でも何となく駅とか地下道の階段の段数は頭の中で数えてしまいます。机の上に斜めに物が置いてあると気になって縦か横に置きなおす癖もあります。少々確認癖がありますが、これは仕事上のミスを防ぐのに役立っています。
SSRIの登場は強迫性障害の「治療」を一変させ、とにかくまず薬、というのが精神科の常識いわゆる「エビデンス」になってしまいました。しかし、うつ病に比べるとどうしても投与量が多くなりがちで、ルボックス(デプロメール)で300mg、パキシルで60mgという処方もあります。確かに強迫症状は改善したのだけど、口調が荒くなり、時には軽い躁状態という方もいますし、通院中の方が傷害事件を起こして警察から文書で治療状況の照会を求められたことも何度か経験しています。薬だけではなく、認知行動療法でも森田療法でもよいので何らかの精神療法を併用して、症状が軽くなったら減薬していくことも必要だと考えます。
ゼロ様の場合はご自分でコントロールできる状態ということで結構なのですが、なかなか自分では自分の状態が把握しにくいものです。「どうせ5分間診察だから」「薬だけの方が安上がり」と診察なしで薬を希望される方がいますが、変化がないと思っても2-3ヶ月に1回は診察を受けられた方がよいと思います。そして、必ず1つは質問事項を用意しておいて主治医に聞く癖をつけると良いでしょう。
投稿: 四分休符 | 2010年12月12日 (日) 09時47分