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2010年12月24日 (金)

神経質礼賛 618.対人恐怖の診断

 そろそろ今年の10大ニュースが云々される時期になった。ローカルな話題で恐縮だが、私が住んでいる県内10大ニュースの第1位は1221日付読売新聞によれば「かみつき猿」だった。今年の夏から秋にかけて私の勤務先周辺で猿が子供や女性を襲ってかみつく事件が頻発した。網戸を開けて住宅内に侵入する手口からして、元は飼われていた猿ではないかとも言われていて、被害者は約100人にものぼった。544話に登場した鈴木茂能先生が負傷者の治療に当たられている様子が報道された。市が20万円の賞金を懸けて、住宅内に侵入した時に閉じ込めてついに御用となった。現在は駅前の市営公園に「らっきー」という名前でおとなしく飼われている。話題の猿を見ようという人々で、公園の入園者が増えている。ところが、新聞によると最近では抜け毛がひどく、大勢の人に見られるストレスによるのではないか、とのことである。人を恐れぬ「らっきー」嬢もついに視線恐怖・対人恐怖?・・・なんてことはないだろう。

 私は大学助手時代にメンタルヘルス岡本記念財団の研究費助成を受けて、浜松医大で5年間に入院森田療法を行った207例(うち森田神経質158例)について森田の神経症分類による診断とICD(WHOの診断基準)診断とDSM(アメリカ精神神経学会)診断を比較検討したことがある。そのうち対人恐怖は51例で、それにICDやDSM診断を付けるとsocial phobia(social anxiety disorder:SAD)35例と多いので、近い概念ではあるが、特定の恐怖症、身体醜形障害、重症例では妄想性障害の診断になってしまう例もあって、全く同じとは言いがたかった。一昨年、social phobia(social anxiety disorder:SAD)は社会恐怖(社会不安障害)という訳語が不適切であるとして社交恐怖(社交不安障害)となった。しかし、例えば対人恐怖であってsocial phobiaにも分類される中の視線恐怖や公衆便所が利用できないことによる頻尿恐怖・頻便恐怖・尿閉恐怖などは社交場面を恐れているわけではないので、この変更には疑問が残る。social phobiaの訳語を対人恐怖にしてしまった方がよいのではないか、と主張する研究者もいる。いずれにせよ、ICDやDSMは病因を無視して表面的な症状だけで診断してしまうので、対人恐怖を正確にはとらえていないと思う。半年位前に製薬メーカーの営業さんが社交不安障害評価尺度LSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale)の用紙を置いていった。外来患者さんに使って、得点が高ければ社交不安障害としてSSRIを処方して下さい、ということらしいが、私はまだ1枚も使っていない。

 森田正馬先生は、対人恐怖の性格を「恥かしがるのを以て、自らをフガヒなしとし、恥かしがらじとする負けじ魂の意地張り根性である」(白揚社 森田正馬全集 第3巻 p.114)と実に的確に指摘された。そして、恥ずかしいままに仕方なしに行動していくように指導されていた。それにより対人恐怖に悩む多くの人々が神経質性格の良さを生かして社会で人並み以上に活躍できるようになっていった。機械的に診断名を付けて薬を処方して単に症状軽減を図るだけでは、そうはいかないだろう。

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コメント

診断場面での質問と答えについてのお話ですが、最近のマスコミ等の「アンケート」ってものも、質問の仕方や回答の解釈の仕方で、「民意」というものを、いくらでも歪曲しちゃう危険がありますね。うちでとってるY売新聞なんてとくにひどいです。

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 そうですね。世論調査などのアンケートでは設問の作り方や回答の選択肢が不適切ではないのかな、と思うことがあります。

 心理検査での設問や回答の選択肢の場合も英語圏で作られたものを翻訳しているものがあり、日本語ではしっくりこないとか、民族間格差が出るのではないかと思われるものもあります。

 どちらも結果を機械的に判断するのではいけないようですね。

誘導尋問ですね。
しかしほとんどのアンケートとか
統計調査とか誘導していますよね。
仮説の実証のための調査。
マーケティングの基本ですけど。

ゼロ様

 コメントいただきありがとうございます。

 始めから結論ありきのアンケートや調査は
要注意ですね。見破る目が必要です。

 そういえば、この秋「都市交通特性調査」
と称するものが送りつけられてきましたが、
回答しませんでした。指定された日に、家族
がそれぞれどこへ行ったかを事細かに記入
させるものです。一見無記名ですが、回答
用紙にはナンバーリングされていて、個人を
特定するものです。こんな情報が流出した
ら悪用することがいろいろできそうです。
留守の時間帯を狙って空き巣に入るとか。
神経質の考え過ぎと言われたらそれまでで
すが、この御時勢、アンケートや調査への
協力は慎重にした方がよさそうです。

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