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2011年3月 7日 (月)

神経質礼賛 643.ハリ治療でうつ病が治る?

 3月1日付読売新聞のコラム「医療ルネサンス」の記事は興味深かった(ネット上の読売新聞のサイトでも見ることができる)。「うつ治療を問う(5)針で回復 診断は本当か」と題するもので、具体的な2症例を紹介し、鍼灸や虫歯治療でよくなる「うつ病」は本当にうつ病なのか?安易な診断と薬物療法の見直しが求められる、と問題提起している。

症例① 5年前に仕事上のストレスから不調になった50代女性会社員。精神科でうつ病と診断され、抗うつ薬・抗不安薬・さらには抗精神病薬を処方されたが良くならないばかりか、3年前から突然に頭が前屈したまま上がらなくなり整形外科で薬の副作用だと言われた。鍼灸院で治療をうけているうちに頭の前屈が治り気分も改善し薬もほとんど不要になって現在は元気に仕事をしている。

症例② 4年前、頭痛・肩こりを契機に不眠・意欲低下となった40代主婦。精神科でうつ病と診断されたが薬が効かず、かえって自殺念慮も出てきた。昨年、虫歯の治療を受けて歯をすべて治したところ、頭痛や肩こりが改善したばかりでなく気分も晴れて精神科の治療が不要になった。

 ①のケースで頭が前屈する姿勢異常は抗精神病薬の副作用の一つで遅発性ジストニアと呼ばれるものである可能性が高い。発生率は低いけれども、一旦なってしまうと治りにくいことがある。アメリカでは統合失調症の治療に使われていた抗精神病薬が気分障害にも使用されるようになり、日本でもSSRIなどの抗うつ薬が無効あるいは効果不十分な場合には使われるようになってきたが、やはり抗うつ薬にはない特有な副作用が出ることもあるので、安易に処方するのは危険である。処方するからには副作用には神経質になった方が良い。鍼灸院の治療で「うつ」が良くなったのは、ハリそのものの効果よりも、鍼灸師と会話しながら時間をかけて治療を受ける安心感が良くしてくれたのではないだろうか。5分診察で薬を出すだけの治療ではそれは望めない。そもそも「うつ病」は薬なしでも休養や環境調整で自然治癒しうるものである。抗うつ薬の最大のライバルはプラセボ(偽薬)だと製薬メーカーの開発担当者が言っているくらいである。

 ②のように虫歯やかみ合わせの問題が頭痛・肩こりの原因になることがしばしばある。この人がそうかどうかはわからないけれども、神経質な性格を持った人の場合はそうしたことを契機に自分の身体に過度に注意が向くようになり、神経症性不眠になったり、二次的にうつ状態になったりすることも考えられる。そうした場合、本格的なうつ病とは異なり精神的エネルギーは十分にあるわけだから、抗うつ薬を投与するだけでは改善しにくいし、場合によっては焦燥感を高めてかえって悪くしてしまうこともあるだろう。現在主流になっているICDやDSMといったアメリカ流の診断基準だとその人の生活背景や性格傾向を無視して表面的な症状だけですべて「うつ病」と診断してしまうので、機械的に抗うつ薬を処方したのではこのようなことも起きうる。

 記事で批判している「安易な診断」がグローバルスタンダードになってしまった以上、もはや変えていくことは困難である。しかし、薬物一辺倒の治療では良くならないばかりかかえって悪くなることもあるということを認識する必要があるし、神経質性格やヒステリー性格の人に伴う「うつ状態」にはそれぞれに見合った精神療法的アプローチがあるのではないだろうかと思う。

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