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2011年7月25日 (月)

神経質礼賛 689.神経質人間・出光佐三

 以前から出光佐三の伝記を読みたいと思っていた。江戸時代の禅僧・仙厓の画を見に出光美術館に行った際(150話・238話)、出光興産の創業者・出光佐三(1885-1981)が社内に自分の肖像写真の代わりに厓の「堪忍柳画賛」の写しを掲げさせたというエピソードを知って、彼も神経質人間ではなかろうか、と思っていたからである。

 市立図書館の検索システムで調べると、最寄の分室で読めるものが2冊あった。ひとつは日本経済新聞社から出ている『私の履歴書』である。経済人関係は全38巻でその第1巻に出光佐三が載っていた。佐三自身の言葉を抜き出すと、「体が弱いし神経衰弱だから第一に仕事を怠ける、短気になる。何とか克服していこうと病と戦ってきた。これが私の一生を貫く大きな原動力となった」とあり、反省心とともに発展向上欲が強い神経質性格であることをうかがわせる。「日本の石油王」とか「今様・紀伊国屋文左衛門」とか呼ばれ、次々と思い切ったことをしてきたイメージがある佐三だが、「何かをやるにしても考えて考えて考え抜く。それが私の一生である」という言葉のように、実際には慎重に熟慮に熟慮を重ねた上での行動だったのである。

 もう1冊は水木楊著『難にありて人を切らず 快商・出光佐三の生涯』(PHP研究所)という本で、これは借りて来て家で読んだ。佐三が幼少の頃は病弱で医者通いが多く、夜は悪夢にうなされ、神経症があったと思われる。高等小学校2年の時に眼を傷つけて視力障害が残り、読書が困難となったという。眼のハンディを乗り越えて、福岡商業に進学したが、士族と平民を差別する学校側のやり方には強く反発した。さらに神戸高商(現在の神戸大学)へと進学し、水島也(てつや)校長の薫陶を受け、「カネの奴隷になるな。士魂商才をもって事業を営むように」という教えを実践していくことになる。反骨精神が旺盛で、官僚を嫌い、戦時中は軍部にも堂々と楯突いた。終戦直後、「この戦争で本当の意味で負けたのはアメリカだ。それは原爆を落としたからだ。アメリカはその国是である正義と人道主義を自ら放棄した」と語ったという。GHQとも渡り合った。著者は佐三の内面について「出光の中にあるものは、生への強い執着心に現れる旺盛なエネルギーと気性の激しさである。怒り出したら、手のつけられないほどになる。だが、その激しさを律しようとするストイックな自制心も一方にある」と評している。精神的エネルギーが大きく、躁的にも見えるが、実は神経質人間だったのである。そして仙は彼の心の支えになっていた。「外部の圧迫を受けるたびに、仙和尚の書画を見た。世俗にこびざる名僧の教えを受け、ひるむ心に鞭を打ちつつ家を出た」とのちに回想している。大胆不敵な一匹狼のように見えながら、内心では恐怖と闘っていたのだ。

出勤簿なし・定年なし・労働組合なし・大家族的な独自の経営理念は「出光教」とも揶揄されたが、「人の性(しょう)を尽くす」そのものだった。神経質を見事に生かしきった生涯だったと言えるだろう。

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コメント

四分休符 様

 「人のために尽くす」行動が、症状を乗り越え、神経質性格のプラス面を発揮する上で、最も良いことなんですよね。

 残念ながら、まだまだ、症状をなくすことが、他の何よりも大切だと考えてしまいます。
 
 「情けは人のためならず」は、人に親切にすることは相手のためにならないと思っていたのですが、本当の意味は、人に親切にすることは、相手のためだけでなく、自分自身のためになることであると聞いたときは、びっくりしました。

 「人の性を尽くす」なかなかできるものではないなぁ・・・っと思いました。

19630303様

 「人の性(しょう)を尽くす」は確かに難しいことではあります。ですから、まずは、「物の性を尽くす」というところから入っていくのがわかりやすいかと思います。その物の価値が最大限生きるように工夫していくということですね。森田先生はエコ生活の先駆者で物を無駄なく使い、患者さんたちにもそうした指導をしていました。そうして周囲に気を配り自分の存在意義を発揮していけば、「己の性を尽くす」になります。さらに自分の周囲の人がその人の力を最大限発揮できるように援助していくようになれば、「人の性を尽くす」になるのだと思います。

先生、おはようございます。

沢山の本を読んでられますね。私はPHP研究所の本を好きで良く読みます。

文章の勉強から、物事の考え方など、様々ですが、仕事を上手にこなす方々は、段取り(前準備)を必ず慎重にチェックされるのだそうです。次の仕事で慌てる事が無く、スムーズに終える事が出来ると書いてありました。 私も出掛ける前には鞄の中身をチェックして、色々な場面へ対応出来る様、支度をします。その為に、かなり多い荷物になりがちです。

神経質と段取り上手は似ていますかね。


四分休符 様

 新聞に、こんな記事が載っていました。

 日本人の4大疾病に、新たに精神疾患が加わり5大疾病となる方針が決まった。
 精神疾患の患者数は323万人と、次に多い糖尿病を86万人も上回る。うつ病など気分障害を中心に、過去10年で100万人以上も増えている
 患者急増の理由を聞くと、職場のメンタルケア充実による医療機関への受診者増や、高齢者の認知症増加などを挙げた。だが労働環境の変化など社会的要因にまで踏み込んだ分析は見当たらないそうだ
 一方で5大疾病入りの背景には、自殺者3万人時代から抜けだそうとの狙いもある。自殺者の約9割が何らかの精神疾患を患っていた可能性があるともいわれるだけに、地域あげて予防への態勢を整えようというわけだ
 心をめぐる問題は未解明の点も多いが、しんどさを抱え込まずに医療機関を受診するのはいいことだろう。社会の側には、生きづらさを減らす役割もあるはずだ。

 神経症は、病気ではないと言われますが、これを理解するには、かなり時間がかかりそうです。

ヒロマンマ様

 コメントいただきありがとうございます。

 その通りですね。備えあれば憂いなし。段取りをしっかりしておけば、物事がうまく運んでいきます。私も外出前には忘れ物がないかチェックしますし、よほど降水確率0%でもなければ必ず折畳傘をかばんに入れています。この辺は神経質人間の得意技です。しかし、最近はちょっと神経質が足りなくなってきたのか、たまに忘れ物があります(苦笑)。

19630303様

 森田療法的なアプローチはすべての神経症に向いているわけではありません。自己内省的で大人の人格を持った方(森田神経質)には合っていますが、そうでない方の場合には精神分析の流れをくむ精神療法の方が向いています。薬物療法を希望する方には薬の効果と副作用について十分に説明した上で使っていくことになります。

 森田先生は「神経質は病気でなくてこんなに仕合せなことはありません」と述べています。森田療法では自分を病人扱いにせずに、健康な部分を伸ばしていくことで、症状自体も忘れていくのです。いわば本人の自然治癒力を最大限に生かした治療法です。
 

四分休符 様

 大原健士郎先生の「心が強くなるクスリ」という本を以前に、買いました。
 神経症のためではなく、自己啓発ということで買ったと思います。
 この中に、『神経症を治すには、薬は必要ない。「死の恐怖」を「生の欲望」へと方向を変えればよい。そのためには、考えるよりも先に行動することだ。頭で解決しようとするのはやめて、行動で体験的に解決することが大切なのである。』という表現があります。
 症状に一喜一憂するのではなく、目的本位の行動を、しっかりと頑張らなければと、反省する毎日です。

19630303様

 神経質人間は理屈にとらわれてしまう嫌いがあります。大原先生の言葉で「頭で考えるより行動」というところが大切なのです。
 反省心が強いのは神経質の良いところです。今日の反省を明日の行動につなげて行きましょう。

出光佐三は‘独立系’の大立者で、わたくしも魅力を感じておりました。体が弱く神経衰弱であったとは意外でした。

生の欲望の強さを、‘一生を貫く大きな原動力’にできる人生と、
表裏の関係にある‘死の恐怖’で自滅してしまう人生との差は、あまりに大きいですね。

この1ヶ月、甘い期待が根底から覆される窮地に陥っておりますが、短気を起こさず、ねばっこく、生の欲望を開花させたいと思います。

たいへん励みになる記事でした。有難うございます。

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 怒りの沸点が低過ぎる(笑)私としては、出光佐三の伝記から学ぶところが多々ありました。怒りのエネルギーを上手に活かしていくことが大切なのですね。これも「生の欲望」のうちなのだと思います。

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