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2011年7月 6日 (水)

神経質礼賛 683.七夕の願い

 院内の各病棟を回っていると七夕飾りがある。足を止めて短冊を見る。「天の川」と書いたものもあるが、大半は願いを書いたものだ。「病気が治りますように」「退院できますように」が多い。「結婚したい」「チョコレート食べたい」「宝くじがあたりますように」といったものもある。

 日本では精神科病院の入院患者さんの約6割が統合失調症であり、私が勤務している病院も同様である。統合失調症の治療薬が進歩し、精神病に関する知識が広く知られるようになって早い段階で受診するようになり、今では入院せずに外来治療だけでよくなる人が多くなった。入院したとしても2ヶ月程度で症状がなくなって退院できる人が多い。デイケアによるバックアップ体制も整ってきた。とはいえ、新しく開発された薬剤をいろいろ使っても、幻覚や妄想などの症状がおさまらない患者さんもいる。そして、入院が長期にわたり、親が亡くなり帰る家がなくなってしまったという人もいる。やはり、病気が治ってほしい、退院して家に帰りたい、というのは患者さんたちにとって切実な願いである。

 

 大原健士郎教授が在任中の浜松医大精神科神経科病棟では、七夕の会が行われていた。会のプログラムを決めて中心になって行うのは森田療法を受けている患者さんたちだった。皆が楽しめるように知恵を絞り、会が盛り上がるように創意工夫をこらしていた。もちろん七夕飾りもあって、多くの短冊が飾られていた。教授回診の時に、大原先生は少し年配の森田療法の患者さんに「君は短冊には何て書いたんだね」と質問された。「健康になれますようにと書きました」と言うと、「何のために健康になりたいんだね」とさらに突っ込んで尋ねられた。「健康でありたいとは誰もが願うことだよ。しかし、ただやみくもに健康であろうとするだけでは意味がない。目的意識を持って生きていくことが大切なんだよ」と話しておられた。

 

 無病息災にこしたことはないけれども、いくら気をつけていても病気になってしまうこともある。そして加齢による障害もあれこれ出てくるのは避けられないことである。それでも目的本位の生活をしていれば、生きがいのある人生を送ることができる。己の性(しょう)を尽くす、ということを大原先生は教えておられたのだと思う。

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