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2011年7月 8日 (金)

神経質礼賛 684.SSRI誘発性恐怖過少症

 元は他の先生が担当していて、最近私の外来担当日に来るようになった男性患者さん。診察室に入ってもポテトチップの袋を持ち、食べながら話す。へらへら笑いながら話す口調が耳につく。カルテを見ると、不安・緊張が主訴とあり、SSRIが処方されている。「私的にはー、薬を増やした方がいいと思うんだけどー、先生的にはどうですかー?」と薬の増量を希望する。現在症状はおさまっているのだし、薬を増やせば副作用や問題点も出てくる、という説明をして、薬は増やさず同じ処方に留めておいた。

 最近、杏林大学の田島治先生が書かれた「不安の進化精神医学」(臨床精神医学Vol.40No.6p.823-8302011)という論文の中に、SSRI誘発性恐怖過少症についての記述がある。田島先生は以前からSSRIの光の部分だけでなく影の部分についても論じて警鐘を鳴らされている。この論文では田島先生の自験例3例が提示されている。いずれも社交不安障害の診断でフルボキサミン(商品名ルボックスまたはデプロメール)150mg-200mgの投与が著効し、症状が全くなくなった。ところが、それぞれ、狭い道でもスピードを出したまま車を運転して車を傷つける、趣味で始めた居合いで真剣を使って周囲を驚かせる、包丁の使い方が乱暴になって指を切りそうになる、といった過度の恐怖感の低下が出現し、SSRIを減量したところ、これらの問題は改善したとのことである。田島先生はSSRIの作用で過度の不安恐怖の低下、無頓着とだらしなさ、脱抑制的な気分の高揚、衝動性と攻撃性などが出現する可能性があることを本人・家族に告知しておられるそうである。そもそも不安や恐怖感は私たちが安全に生きていくために必要なことなのである。

昨今では製薬会社の宣伝が行き届いて、不安障害イコールSSRI投与という(製薬会社にとっての)黄金公式がすっかり定着している。安心して処方できる薬ということで内科の先生方もSSRIを積極的に処方されるようになった。SSRIの処方が増えるにつれて、今後SSRI誘発性恐怖過少症は大きな問題となってくることが予想される。

 うつ病ならばともかく、軽度から中等度の不安障害(神経症)に対するSSRIの処方には私は慎重である。5年以上前、当ブログ開始当初から安易なSSRI処方を批判する記事(20話:葛根湯医者vsSSRI医者)を書いてきた。薬は本人に利益をもたらすばかりでなく、本人や周囲の人々に大きな不利益をもたらすこともありうる。神経症の場合、薬で症状はラクになっても、神経質性格の良さをもなくしてしまう点に注意が必要である。

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コメント

お薬の良い効果と一方で上手に使用しないと、怖い一面もあるのがよくわかりました。
私はパキシルやソラナックスを服用すると、二日酔いのような倦怠感と吐き気に耐えられず、一週間も服用できませんでした。
薬に頼ることが許せなくて拒否反応だったかもしれませんが。でも、森田療法の書籍にあい、薬に助けてもらおうという思いは消えました。
きっと初めから、先生のような方に診察をしていただいていたら、数週間で良くなっていたかも知れません。
統合失調症のような方には薬が有効かと思いますが…。
心の病気は体のように検査数値でわかるものではないので難しいものですね。

アッシュ様

 コメントいただきありがとうございます。

 パニック障害の方にパキシルとソラナックス(コンスタン)の処方は「常識的」です。パキシルは飲み始めの一週間くらいの間に吐き気が出やすく、1割くらいの方に出ると言われていますが、もう少し多い印象があります。また、ソラナックスは初めて飲むとふらつき感が出る可能性がありますが、予期不安が強い時やパニック発作時の頓服には有効です。こうした副作用について十分に理解していただいた上で上手に使っていけば悪いばかりでもないのですが、今回記事に書いたような問題点もあるのです。また、作用や副作用は個人差も大きいので、きめ細かい対応も必要だと思います。
 重症でなければ、薬は症状が出た時の「御守り」くらいにして、森田療法的な対応で自分の力で治していければ理想的です。

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