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2011年12月30日 (金)

神経質礼賛 740.小学程度・中学程度・大学程度

 私は若い頃、対人恐怖や強迫観念に苦しんだ。小学校3、4年生くらいから種々の強迫観念にとらわれていたし、中学・高校時代は対人恐怖に悶々としていた。誰にも相談できず、秘かに図書館で心理学の本や自律訓練法の本を読んだ。残念なことに森田療法の本との出会いはなかった。何とか神経質な性格を改善して大胆な人間になりたいと思ったが、当たり前のことながらそれは実現しなかった。強迫観念にとらわれながら、人前が恐ろしいと思いながら、仕方なしに行動しているうちにそうした悩みがだんだんと気にならなくなってきたのは20代半ばになってからである。しかし、この程度では、森田正馬先生が言われた「小学程度」のレベルなのである。

 世の中の現実で、誰もが人並みにそうやっているところの「苦しいままに働く」、それが小学程度、次に「苦しい事はいやである」そのままの事実を認識するのが中学程度、さらに「いやとか好きとかの名目を超越した」のが大学程度である。(白揚社:森田正馬全集第5巻p.653

 小学程度では、いやなことをいやでないようにしたい、という「思想の矛盾」がまだ残っているから、状況次第ではまた「症状」に苦しむことになる。事実唯真つまりあるがままの姿勢が身に付くのが中学程度である。ここまでくれば、神経質の良さが生かせるようになってくる。私は大原健士郎教授のもとで森田療法を学んでようやく中学程度になったとは思う。しかし今でも大学程度になったという自信はない。森田大学浪人中である。偉そうなことを言っているが、自分はまだまだだと反省している。

 早いもので、当ブログ開始からもうすぐ6年になります。おかげさまで今年は中間決算とでも言えるブログ本『神経質礼賛』を出版することができました。皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。

相も変わらず一切飾り気なしの無愛想なブログですが、一旦動き出したら簡単には止まらない神経質性格ゆえ、マンネリと言われても、まだまだ続いていきそうです。皆様から有益なコメントをいただき、とても励みになっています。来年もよろしくお願いいたします。どうぞ良いお年をお迎えください。    四分休符 拝

2011年12月26日 (月)

神経質礼賛 739.誰も苦しみながら生きている

 病院の2階通路を歩いていると窓の外でバタバタという激しい羽音を聞いたので何だろうと思った。見れば1階の屋根の上で2羽のハトが激しくもみあっている。大きい方が小さい方の頭や首などをつついて攻撃している。小さい方も必死に防戦し反撃しようとするが形勢が悪い。そのうち大きいハトは飛び立っていったのでほっとしたのだが、それから2日後に同じ所を通りかかった時に窓から外を見たら、小さいハトの死骸があった。かわいそうに、あの時の傷が致命傷になってしまったのだろう。

 空を自由に飛び回り、地上に降りてきてのんびりエサを食べているハトを見かけると、何も苦労もなくていいなあ、と思いたくなるが、ハトも生きていくためには命がけなのである。天敵ばかりでなく同じ仲間から攻撃されることだってあるのだ。ハトだけでなく、どんな生き物でもそうだ。そして人間も同じである。森田正馬先生はよく「唯見れば 何の苦もなき 水鳥の 足にひまなき ものと知らずや」という句を引き合いに出して患者さんを指導された。神経質人間は自分ばかりが苦しく、他の人は何の苦もなく生きているという自己中心的な差別観で考えがちである。ところが、何の苦もなくフワフワと浮かんでいるような水鳥でさえ、見えないところで努力している、というわけだ。大原健士郎先生も、自分ばかりがつらいめに遭っているとこぼす患者さんの日記に「誰も苦しみながら生きている」とコメントされた。誰もが苦しい、という平等観で物事を見て、苦しいのは仕方なし、苦しみながらも行動する習慣がついてくれば、苦しみが苦しみではなくなってくる。そして、不安はあっても気にならなくなってくる。

2011年12月23日 (金)

神経質礼賛 738.言いたいことは明日言え

 この諺は、言いたいことがあってもその場ですぐには言わずに、よく考えてから言った方が、失敗が避けられる、という意味である。英訳はThink twice before you speak.(話す前には二度考えよ)なのだそうだ。失言大臣や失言官僚にピッタリの言葉かもしれない。腹の立つことは明日言え、という類似した言葉もある。腹が立って感情に任せて相手を非難するような発言をすれば、相手だって黙っていないわけで、売り言葉に買い言葉、お互いに怒りの感情をぶつけあって収拾がつかなくなる。怒りが爆発しそうな時には森田正馬先生の言われた「感情の法則」を思い出してみよう。感情の嵐は時間とともに減衰していくので、ちょっとその場を離れて頭を冷やしてくれば、かなりおさまってきて、損なシナリオを演じることが防げるのである。

 ただし、対人恐怖の人の場合、逆に、言わなくてはならないことを先送りにして、言えないまま終わってしまうことがある。私にもずいぶん覚えがある。明日言うつもりがあさってになり、ついには言わないままになってしまうのだ。神経質人間は相手が自分をどう思うだろうかと考えすぎてしまうところがある。人前で話さなければならない、目上の人に話さなくてはならない、初めての人に電話しなくてはならない、といったことを嫌だなあと思うと尻込みしてしまう。一人相撲のようなもので、ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう、などといくら考えたって結論が出るはずがない。嫌であってもどうせいつかは言わなければならないことであれば、早く片付けるに限る。先送りしては、嫌な気分を長引かせるだけのことだ。心配性の神経質人間の場合、本人としてはすぐに言ったつもりでも、発言するまで十分に考えているから、そもそも失言は少ない。気が付いたら尻軽く行動し、必要なことは先送りせずに話す、それが神経質を生かす方法である。

2011年12月19日 (月)

神経質礼賛 737.ディスチミア症候群(ディスチミア親和型)

 最近の週刊誌の広告に、さる御方の病名は「適応障害」ではなく「ディスチミア症候群」だというような見出しがあった。被害者意識や他罰性からそのように判断しているようである。

 ディスチミアDysthymiaは「気分変調症」と訳されており、WHOの規定した診断基準ICDではコードF3・気分(感情)障害の中に分類されている。持続的な抑うつ気分が2年以上続く、正常な気分の期間があっても2-3週は越えず、軽躁病エピソードがない、うつ病エピソードの診断基準を満たすほど重度ではない、といった定義がある。簡単に言ってしまうと、軽いうつが長く続いているような病態なのである。

 週刊誌の見出しにあった「ディスチミア症候群」はディスチミア親和型(うつ病)のことかと思われる。ディスチミア親和型とは九大の故・樽味医師が提唱したものである。今年の10月に発売となった最新の『現代精神医学事典』(弘文堂)にはこの語が掲載され、九大の神庭重信教授が解説を書いている。従来、典型的なうつ病はメランコリー親和型とか執着気質といって責任感が強く秩序を重んじ真面目で几帳面といった性格傾向の人がなりやすいとされてきた。最近はうつ病の診断が広くなって、それとは逆の性格傾向の「うつ病」が増えているということでこのように名付けたものである。決して新しい病気ではなく、有名な精神科医たちが「退却神経症」「逃避型うつ」「未熟型うつ病」と呼んできたものと重なり、一般的に言われる「新型うつ病」、マスコミで有名な香山リカさんの言う「三十代うつ」、あるいは俗にいわれる「五時までうつ病」とも重なるものである。従来のような休養と抗うつ薬という対応ではなかなかよくならない。それどころか安易な抗うつ薬投与は他罰・攻撃性を増して悪化させる一因にもなりうる。根底には自己愛や演技性といったパーソナリティの問題があるからだ。

 今から20年前の浜松医大附属病院には高名な大原健士郎教授の診察を希望して、そうした患者さんたちが集まってきた。当時の病名は「抑うつ神経症」であり、入院治療を受けた人も少なくなかった。元は優等生だったり音楽の才能を認められていたりしたが挫折後に長いうつ状態が続いている、という人もいて、概してプライドが高く他罰的だったように記憶している。当時の浜松医大附属病院の精神科病棟は森田療法をベースとした治療が行われていた。統合失調症の患者さんもうつ病の患者さんも症状が良くなってくると「準森田」として、日記を書き、朝夕に花壇の手入れをし、森田療法グループの患者さんたちが中心になって行う畑作業やスポーツにもだんだん参加するようなシステムになっていた。つまり精神病の治療においても仕上げの段階では健康的な部分を伸ばしていく森田療法が使われていたのである。ところが、現代のディスチミア親和型と言えるような抑うつ神経症の患者さんたちは、花壇の手入れや畑作業にはなかなか乗ってこなかった。日記を見ると、プライドが高い彼ら・彼女らはそうしたことが「バカバカしい」と感じていることがうかがわれた。いやいやであっても行動していけば、結果として気分は後からついてきて少しずつよくなっていくものだが、そのとっかりの段階で拒絶してしまうわけである。「大学病院に入院している」ということはプライドを傷つけないし、一種の疾病利得になって入院が長引きがちだった。やがて教授から退院を勧告され、入院治療を担当した若手医師が外来診療を引き継いでいくことになる。私もそうした人を何人か受け持った。当然ながら一筋縄にはいかない。「いつまでたってもよくならない」「家族に理解してもらえない」という訴えには共感を示しながらも、「とりあえずパートやアルバイトの仕事を探しに行ってみましょう」と勧めた。うまく仕事に就けた時には少々大げさに褒め、仕事をクビになった時には、「それでも3か月続いたんだから大きな進歩。よくやったね。あきらめないでまた探しましょう」と話した。三歩進んで二歩下がるを繰り返し、たまに五、六歩下がることはあっても、わずかずつ良くなっていた人もいたし、あくまでも本人が「病気」にしがみついて良くならない人もいた。

ディスチミア親和型の人に森田療法をそのまま使うことは困難である。しかしながら、森田先生の言われた「感情の法則」(442話・自著p.209-211)は誰にも当てはまることであり、それを理解してもらって、少しでも現実的な行動に向かってくれれば、長い年月をかけて良くなっていく可能性があると考えている。

2011年12月16日 (金)

神経質礼賛 736.朝の1分は昼の10分

 12月の中旬となり、さすがに真冬の寒さがやってきた。朝起きるとまだ夜のようである。玄関ドアを開けて朝刊を取り込む時は冷気で眠気が吹き飛ぶ。暗いので玄関灯を点けないとポストの番号錠が開けられない。今年の夏から1本早い始発電車に乗る習慣が付いているので、昨年より10分以上早く家を出ている。朝はとにかく忙しい。特に冬場は着るものが増えている。最後にコートを着て手袋・マスクを付ける時間もバカにはできない。

 目覚まし時計をセットした時刻より10分・20分早く目が覚めて起きることがある。しめた、今日は時間がある、と思って新聞をのんびり読んだりすると1020分はすぐに経ってしまう。歯を磨いていても、3分の歯磨きが5分になってしまう。時間があるからと余裕で気が緩んでいると、普段よりも余分に時間がかかってかえって遅くなってしまうのだ。電車の発車時刻は決まっているので、結局あわてて身支度し、いつもより早足で駅へ向かうことになる。緊張感が足りないとこういうことになるのだ。何時何分までにこれをやって、と思って行動していれば大抵は時間内に終わるものである。日めくりカレンダーの格言に「時は得難くして失いやすし」とある。朝の1分は昼の10分あるいはそれ以上に相当する貴重なものである。意外とそのような忙しい時に、良い考えがひらめくこともある。暇な時には良い考えは浮かばないものである。森田先生は次のように言っておられる。

 能率の事で一番大切な事は、「忙しいほど仕事がよくできる」という事です。和歌・俳句のようなものでさえも、「暇になったら上等のものを沢山につくってやろう」と考えるのは、大きな思い違いです。実際にそうなってみれば、実は気が抜けて、ちっともできない。よい思いつきや思想などもみなその通りである。(白揚社:森田正馬全集第5巻p.759

 あれもしなくては、これもしなければ、とハラハラしながら動いている時に神経質人間の能力は最大限に発揮できるようである。

2011年12月12日 (月)

神経質礼賛 735.パスワード変更

 サイバー攻撃により個人情報、特にカード情報が流出するという事件が多発している。流出した情報が悪用される恐れがあり、誰もが被害者になる可能性がある。また、日常的なメールを装ってウイルスを送りつけてくる悪質な例もあるようだ。メールをクリックした途端にウイルス感染して、知らないうちに自分のパソコンから個人情報が流出するばかりでなくウイルス付メールの発信基地になってしまうというから恐ろしい。対策としては、心当たりのないメールは開封しないことはもちろん、複数のサイトで同じパスワードは使わない、パスワードを頻回に変更する、ということになるのだが、実際に全部のパスワードを異なるものにして、定期的に変更している人はあまりいないのではないだろうか。

 銀行や郵便貯金のキャッシュカードやクレジットカードも何枚か持っていれば全部異なる暗証番号にすると自分が覚えていられなかったり暗証番号を間違えて苦労したりすることになる。推測されやすい誕生日や電話番号や番地などを暗証番号にしない、となると覚えやすい番号を選ぶのは大変である。ましてや、ログインIDとパスワードが必要なネット上のサイトは何十もある(しかもどんどん数が増えていく)ので、これを全部別のものにするとかパスワードを定期的に変えるのは至難の業である。いくら神経質人間の私でもそこまではできない。パスワードを盗まれたとしてもさほど被害がなさそうな医療情報提供関連サイトのパスワードは大抵同じようなものを使っていて変更はしていない。中にはサイト側から与えられた仮パスワードを使い続けているものもある。

「神経質が足りない!」と叱られてしまいそうだが、現実的には、お金がからむものや悪用されると困る個人情報を扱うサイトではパスワードを時々変えるといった対応をして、重要度が低いサイトでは覚えやすいパスワードを使い続けることになるかと思う。

2011年12月11日 (日)

神経質礼賛 734.家の10年点検

 先日、家の10年点検があった。基本的な構造上の問題や外壁の問題はなかった。排水管の洗浄は5年ごとにやった方がいいらしい。前回の5年点検の時はパスしてしまったら、排水升にゴミがかなりたまっていることがわかった。高圧洗浄を依頼する。建てた次の年はフローリングのワックスがけをしたのだが、だんだん家具が増えてきたし子供たちがいない時を見計らってやらねばならないのでサボっていたところ、フローリングのいたみも指摘された。特に日が当たるところは気をつけなくてはいけない。近いうちにワックスがけをしなければ。やはり先送りはいけない。普段から神経質にメンテナンスしていけば慌てなくて済むというものだろう。

建てて10年もすると経年変化による水回り関係で小さなトラブルは出てくる。洗濯機の修理や買替で動かした際に防水パンが割れてしまったし、台所や洗面所の水栓の閉まりが悪くなったり風呂場の折戸がはずれやすくなったりという問題があって業者に修理を依頼した。昔の蛇口をひねるタイプならば、ホームセンターでコマを買ってきて自分で交換すればよかったけれど、最近の混合水栓は素人では手がつけられない。台所と洗面・風呂はメーカーが違うし、同じメーカーであっても風呂の修理に来た人に聞くと、「自分は風呂が専門で洗面の混合水栓のことはわからない」といった具合である。一度状態を見に来てもらって、後日部品を用意してまた来てもらうことになるので、12月のカレンダーはメンテナンス関係の予定があれこれ埋まっている。寒さとともに慌ただしさが増している。

2011年12月 9日 (金)

神経質礼賛 733.笑いの効用

 医療関係者向けの新聞Medical Tribune2011.12.1号に「日常的な笑いで患者のQOL向上を目指す」という記事があった。阪大大学院公衆衛生学の大平哲也准教授が大阪府在住65歳以上の住民を対象とした疫学研究では、笑いの頻度が低いほどうつ症状や認知機能低下症状を有する人が多く、笑いの頻度を増やす長期的な介入がQOL(生活の質)向上につながることが示唆された、という内容だ。また、同准教授によれば100回の笑いの運動量は15分間のエアロバイク運動に相当し、運動効果や腹式呼吸によるリラクセーション効果も期待できるということだ。

 320話(自著p.141-142)で書いたように森田正馬先生は「笑望青山山亦笑 泣臨碧水水亦泣」(笑って青山を望めば山また笑い 泣いて碧水に臨めば水また泣く)という漢詩を引用し、心理学者ウイリアムス・ジェームズの「人は悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」という言葉を引用したりして、患者さんを指導された。私のような神経質人間は面白くないことがあると言葉には出さなくてもつい仏頂面になりやすい。しかし、それを続けていれば嫌な気分を長引かせることになる。気分は直接変えることはできないけれども、行動を変えることで後から気分もついてくる。笑顔で人と接しているうちに自分自身の気分も引き立ってくるものである。森田先生の診療所で月1回行われた形外会は神経質に関する座談会ではあったが、時には落語家や漫才師を呼んで楽しんだり、全治退院者の水谷啓二さん(「生活の発見会」の創始者)ら「赤面恐怖一座」による滑稽劇で大笑いしたり、皆で東京音頭を踊って楽しむ場面もあった。普段は怖い存在の森田先生も綱渡り芸(畳のヘリを綱に見立てて綱渡りの真似をする)で一同を沸かせることがあった。修養を思わせる森田療法の中にも笑いはあったのである。

 笑いには、免疫系を活性化し、痛みを緩和するなどの効果があると言われ、笑いの効用を示す種々の実験データが報告されている。場違いな所で笑わない限り人に迷惑を掛けることはない。ことわざのように「笑って損した人なし」である。笑うことを心掛けていくうちに「笑う門には福来る」にもなるだろうと思う。

2011年12月 5日 (月)

神経質礼賛 732.講演「不安とうつの森田療法」

 一昨日は大阪産業創造館で「不安とうつの森田療法~神経質を生かす~」というテーマで講演させていただいた。メンタルヘルス岡本記念財団主催のセミナーで講師をさせていただくのは6年ぶりである。

 心配性なので早めに出発し開始時刻1時間半前には会場のビルに着いた。初めての場所であり、どこで食事をしようかと思って周囲を見ると、「かつ丼」の旗が並んでいる。その旗をたどって産業創造館裏側の道路を隔てたビルに入っていく。かつとカレーの専門店で客入りも良く店主の威勢のいい声が響く。日替わりの「卵とじかつ丼セット」550円を注文する。普段食べるかつ丼と異なり、かつの下にはゴボウの薄切りを煮たものが敷かれていた。なかなかおいしい。ちょっと御飯の量が少なめで女性向きであり、常連さんたちは大盛りを注文している。サラダ・味噌汁をセットにしたけれど、そばのセットもあった。

 講演では、あれも話そうこれも話そう、と思っていたことが全部は話しきれないまま、私にしては珍しく1時間半の持ち時間を大幅にオーバーしてしまった。欲張りすぎたと反省する。参加者の方々に配布された資料の中に質問用紙が入っていて休憩時間に回収され、その質問に答えるのだが、全部で15枚あった。人前での緊張を主訴にする方、健康診断になると緊張して血圧が上がって困っている方、強迫症状で苦しんでいる方、うつで治療を受けている方など多岐にわたった。質問の中に、人前で話す時の緊張は森田療法でなくなるのでしょうか、というものがあった。神経質な人は、完璧を求め、失敗を極度に恐れる。緊張しないようになりたい、大胆になりたいと誰しも思うものだ。しかし、緊張しないようにしよう、というのは森田先生の言われる「不可能の努力」であり、それが強迫観念のもとになる。そもそも人前で緊張しないようにすることはムリであり、俳優さんだって緊張しているし緊張が足りない時はかえって失敗するという話もある。経験を積めば、話し方が上達するわけだが、100点満点は取れないし、緊張もなくならない。緊張しても、自分の言いたいことを伝えることができれば十分なのである。いくら森田療法を習得した人でも緊張はなくならないのだ。

 帰りに新大阪駅売店でおみやげを探す。訴訟騒ぎが最近ニュースで話題になり、一時撤去されたという「面白い恋人」という菓子が売られていたので一つ買ってみた。みたらし味のゴーフレットというのはユニークであるが、パッケージが有名な「白い恋人」そっくりなのはいただけない。中央の雪山の代わりに白い大阪城が描かれているが、デザインがまるで同じなので、「白い恋人」側から訴えられるのも当然だ。漫才コンビの絵でも描いて「白い恋人とちゃうでー」「どうせパクリやろ」とでもセリフを入れておいたら大目に見てもらえたかも知れない。

2011年12月 2日 (金)

神経質礼賛 731.内気な人の就職活動

 TVニュースで私が住んでいる県内の来春大学卒業予定者の就職内定率が発表され、約52%とのことである。景気低迷に加えて東日本大震災の影響もあって全国的に低調らしい。昨日の毎日新聞夕刊に出ていた記事によれば全国では大学4年生の就職内定率(101日現在)は59.9%と過去2番目に低い数字なのだそうだ。そんな中、早くも大学3年生の就職活動が始まった。私のように緊張しやすく人前が得意でない神経質な学生さんたちにとってはきびしい日々が始まっているのではないかと思う。

読売新聞には毎週火曜日に「就活ON」という就職活動関連記事が掲載されていて、その中に「小島貴子(東洋大准教授)の親向け講座」というコラムがある。1129日の記事はとても良い記事だったので紹介しておこう。大学3年生の父親から「息子は消極的で内気なため、厳しい状況に意気消沈しています」という質問に、「活動的で明るい学生は目立つけれども企業はそのような学生だけを欲しがるわけではない」「消極的で口数が少なくても自社のことをよく理解していると感じたら、企業はきちんと評価しようとする」「肝心なことは内気が不利だと思い込ませないようにすることです」と回答されている。

企業側としては、外向的で積極的な人は欲しいけれど、そういう人ばかりではうまくいかない。いくら口先がうまく要領が良くても脇が甘い人は大きなミスを犯しがちだし、転職しやすい。まじめにコツコツ働いて社内からも取引先や顧客からも信頼される神経質人間は貴重な人材である。

最近、世間を騒がせている大手製紙会社の御曹司。国立最難関大学法学部を卒業し芸能人とも交流が深い積極的な人物だったのだが、株で失敗したのを取り返そうとカジノにのめり込んで100億円近い借金を関連会社から「融通」して逮捕された。ギャンブルで儲かるはずがないことは子供でも知っている。同じくお騒がせの沖縄防衛局長。記者たちと懇談の席で女性や沖縄県民を侮蔑するような卑猥な発言をして更迭された。エリートで外向的積極的であっても神経質が足りないとこういう落とし穴にはまるのである。小心翼々の神経質人間では到底ありえないことである。

内気で神経質であっても悪いことはない。むしろ長所なのである。面接の時に緊張してあがったり言葉が詰まったりしてもそれだけで落とされることはない。それだけで落とすような会社に未来はない。赤面するのは誠実さをアピールしているのだと考えればよい。神経質学生さんたちは、ぜひ自分の長所を生かして、小心なまま笑顔で就活に励んでいただきたい。

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