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2012年1月23日 (月)

神経質礼賛 748.パン

 外来通院中の患者さんで、作業所に通所し、パン作りをしている人が2人いる。どちらの作業所のパンも好評なのだそうだ。ちょっと表情が硬い初老の男性患者さんも話題がパンのことになると表情がほころぶ。高校に売りに行くと、焼きそばパンがよく売れるとニコニコしながら話してくれる。若い女性患者さんは、作ったパンを自分でも買って、つい食べ過ぎて太っちゃう、と笑う。

 私が子供の頃には、母が家でパンをよく焼いていた。家の中にいい匂いが立ち込めた。ロールパンは時々焦げてカチンコチンのことがあったし、食パンはイースト由来の酸味を強く感じることがあった。室温によって発酵の具合がまちまちで同じ時間では発酵が足りなかったり発酵し過ぎたりしていたようだ。発酵加減と焼き加減は神経質を要するところである。

 自宅から徒歩5分の範囲に店内で焼いているパン屋さんが3店ある。行列ができるメロンパン専門店、材料にこだわった値段が高めの店、そして週1回くらい私が買いに行く天然酵母使用ながら価格がまずまずの店。この店で、あれば必ず買うのがオニオンパンである。細かく刻んだタマネギが生地に入っていて、いい香りがする。特にオーブントースターであぶると甘い香りが漂い、食欲をそそる。このパンに限らず、寒い季節はオーブントースターで温めると一層おいしく食べられるパンは多い。ちょっと一工夫である。

 ところで、森田正馬先生の好物と言えば、卵とカレーというのは有名な話だ。ゆで卵は10個でも食べたし、カレーは2杯、3杯とおかわりしたそうである。しかし、意外とあんぱん好きであったことは知られていないかもしれない。三島森田病院に保管されている先生の日記からの抜粋「我が家の記録」の一部は森田正馬全集第7巻(白揚社)に収録されていて、その中にあんぱんの記述がある。

明治四十年(三十四才)

一月、医科大学副手トナル。

根岸病院奉職後、余ハ毎日午前、根岸病院ニ出勤シ、午食ハ日暮里ヨリ巣鴨迄ノ汽車中ニテあんぱん九個(一個五厘)ヲ食シテ巣鴨病院に通ヒ、研究室ニ入リタリ。(第7巻 p.780

 当時、森田先生は午前の2時間、根岸病院に顧問として勤務し、午後から事実上東京大学精神科の医局があった巣鴨病院に出勤されていた。現在は山手線電車で日暮里から巣鴨までは8分ほどなのでゆっくり食べることもできない。それにしても、毎日昼食があんぱん9個というのは、よほど大好物だったのだろう。そして、もし今のように常温保存できる卵サンドがあったら、きっと喜んで買われただろうと想像する。

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コメント

先生こんにちは!

「パン」のお話、久々の食べ物シリーズということで、うれしく拝読いたしました。

私も数年前から、自分でパン作りをやるようになりました。そんなに熱心にやるわけではないのですが、気分がくさくさとして沈みがちのときにパンを作ると気分が一新するのを感じます。無意味な心配や焦燥で頭を一杯にすることをやめ、無心にパン生地ををこねたり成形したり、焼きあがりの具合を見たり、また最終的には出来上がりはどうであれ、その労働の成果をおいしくいただく、ということ自体が一種の「精神療法」になるのを感じます。

日常生活の必需品を自ら体を動かして生産し、自ら消費したり、他人におすそわけしたりする機会がほとんど皆無になり、お金さえあれば24時間、いつでもどこでも簡単に手に入る現代社会におけるライフスタイルが、多くの人の初期的な「落ち込み」の原因になっているように思えてなりません。

先生、こんにちは。

皆さん、パンには色々な、思いがあるのですね。

先生はお母様の手作りパンの思い出があるのですね。手作りをされるとは、素敵なお母様ですね。

私は、一度手作りパンをしましたが、発酵や形成なとの手順に時間がかかるので、待つことが苦手となってパン作りは諦めました。

今は、お気に入りのパン屋さんへ買いに行きます。

森田先生は食の良い方ですね。量を聞いて驚きました。もりもり、食べる方は元気ですね…

我が家も休憩中のホームベーカリーを出してみようかな。焼きたてパンが食べたくなりました。

keizo様

 コメントいただきありがとうございます。

 そういえばkeizoさんもパンを焼いておられたのですね。畑で作ったケール入り特製パンでしょうか。
 おっしゃるように、農作業も含めて、物を作り出す作業というのは精神療法になりえます。ことに創意工夫をして神経質を生かして作業していくことは森田療法の大事なところです。
 今ではコンビニでいつでも欲しいものが買えますが、それに依存した生活スタイルは人間をダメにしてしまうような気がしますね。

ヒロマンマ様

 コメントいただきありがとうございます。

 自分で生地からパンを作るのはなかなか大変なことです。今なら電化製品でパン焼き機もありますからそうしたものを利用すれば以前よりは失敗が少なく作れることでしょう。御飯からパンを作ってしまう「ゴパン」という商品なんか面白そうですね。

 個性的なパン屋さんがあちこちにあるので、新しい店を開拓するのも楽しいものです。店の中でパンを焼いている香りは気持ちをワクワクさせてくれますね。

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