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2012年1月13日 (金)

神経質礼賛 745.双極性障害と疾患喧伝(けんでん)

 最近送られてきた精神神経学雑誌2011年の11312号に「双極スペクトラムを巡って」という特集があって、その最後に独協医大越谷病院の井原裕先生が書かれた「双極性障害と疾患喧伝(disease mongering)」という論文があった。井原先生は1年ほど前にも同誌の「最近のうつ病と治療」という特集の中で「うつ病臨床における「えせ契約」(Bogus Contract)について」という論文を発表され、「うつ」の過剰診断や安易な薬物の処方に警鐘を鳴らしておられたが(624)、これはその続編とも言えるだろう。

 最近の精神医学では双極スペクトラムという概念が受け入れられるようになり、双極性障害(躁うつ病)が急激に脚光を浴びるようになった。医師向けの雑誌には、女性が「あれもこれも買いすぎてしまう。性格の問題じゃなかったんだ」とキャッチコピーを語る広告も見かけるようになった。双極性障害の診断基準を満たさない場合でも軽い躁的症状を拾い上げることで、新型の気分安定薬や非定型抗精神病薬による薬物療法が奏効する可能性がある反面、過剰診断、過剰処方につながるのではないか、というおそれも指摘されている。そんな中、今回の井原先生の論文は、これまでの疾患喧伝の歴史・・・効果がなかった脳循環・代謝改善薬、SSRIの過剰処方・・・について振り返った上で、今回の問題に触れ、製薬会社のマーケティング戦略に精神科医たちがいとも簡単に踊らされてしまう点に事態の本質があるとしている。先ほどのキャッチコピーに対しては「あれもこれもビョーキにしてしまう。マーケティングの問題だったんだ」という強烈なパロディのカウンターパンチを繰り出している。そして、薬物療法や難しい精神療法の前にまずやるべきことは、生活習慣の是正である、としている。気分の変動の背後には必ず生活リズムの変動があるのだから、「完全断酒、週50時間の睡眠、定時に起床」の3点だけでも守らせたらどうか、と提唱しておられる。

 週50時間の睡眠ということに関しては、現実的には週50時間の「臥床時間」で良いのではないかと思う。完全断酒、定時起床を指導していくのは大賛成であり、私もうつ病・躁うつ病の外来患者さんに普段から言っていることである。本来、健康人らしい生活習慣にしていくことは精神疾患治療の基本中の基本であるが、その基本が忘れられているのではないか。かつて森田正馬先生が「自然良能を無視する(こと)の危険」と言われたような安易な薬物療法に走らないで、生活習慣の是正をした上で、必要があれば、非定型抗精神病薬や新型の気分安定薬を使っていけばよいのである。まずは生活のリズム作りからである。

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コメント

 はじめまして。つい最近、このブログの存在を知りました。おもしろいですね!私も長~く神経症(たまにプチ・うつ)を患っています。幸いにして森田療法に出会い、かなり回復しましたが・・あと2歩、3歩なのです!もう若くない、ぐずぐずしてられない、頑張るぞ。
 「生活のリズムづくり」、まさにここ2カ月間、私の課題です。いったん崩れたものを立て直すのは難しい・・でも、この先生の書込みを私への応援と思い込み、頑張るぞ!明日も7時には起きる!!
 ご著書「神経質礼賛」、読ませて頂きます。

teardrops様

 コメントいただきありがとうございます。

 生活のリズムを直すために早く寝ようとしてもなかなか眠れるものではありません。しかし、起きる時刻を7時とか6時半とか決めると、だんだんそれに見合った時刻に眠れるようになっていくものです。まずは7時起き生活を続けてみられて下さい。
 朝、新聞を取りに行く、その時、ゴミが落ちていたら拾う、さらに周囲を見渡せば、やることが見つかります。小さい行動であっても、また次の行動につながります。ささいなことの積み重ねでよいのです。何でもない日常生活の中に、森田療法の考え方を生かしていくカギがあります。

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