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2012年2月15日 (水)

神経質礼賛 756.うつ病治療最前線

 2月12日(日)夜のNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」は御覧になった方も多いことと思う。まずは経頭蓋磁気刺激(TMS)から始まった。長年うつ病のために薬物療法を受けていてなかなか良くならない人がこの治療を受けるとわずか2日で食欲が出始め、毎日繰り返し治療を受けると意欲が出て笑顔が見られるようになってくるという実例が示された。前頭前皮質(PFC)のDLPFCという部位を刺激することで思考や意欲を改善し、さらに扁桃体の過活動を抑制して不安を改善するものと考えられているとのことである。また、難治性のうつ病に対して、脳の25野という部分に電極を入れて皮下に埋め込んだ電気刺激装置で刺激することでDLPFCを活性化し扁桃体の活動を抑制して劇的に症状を改善するという治療も紹介されていた。これらの治療法はアメリカで行われていて、日本ではまだ研究段階である。日本で先進医療として行われ始めたのは近赤外線スペクトロピー(NIRS)による診断法であり、これについては当ブログでも平成21年6月の記事(436話)に書いている。番組では、今までうつ病と診断されて長いことSSRIを飲み続けて良くならなかった人が双極性障害(躁うつ病)と診断されて薬を変えてもらったら良くなったという例を紹介していた。そして、近年、精神科診断の主流となっているアメリカ精神医学会による診断基準DSM(WHOによる診断基準ICDもほぼ同様)による安易なうつ病診断が問題となっていることについても少し触れていた。最後に薬を使わない認知行動療法の効果を脳科学的に示していた。

 

 TMSの劇的な著効例をいきなり見せつけられると、その治療を受けてみたいと思われたり、日本の治療は遅れていると憤慨されたりする方もいるだろう。しかし、いつも今回の番組のように著効するわけではない。TMSとて万能ではなく無効例もある。それに以前にも書いたが、うつ病はそもそも自然治癒しうる病気であるし、プラセボ(偽薬)がよく効く。先進機器を使って脳に直接働きかける治療だと言われたら、仮に磁気刺激をしなくても機械をあてて疑似作動音を聞くだけで大きなプラセボ効果が出そうである。リスクも皆無ではない。てんかん発作を誘発するリスクもあるし、ターゲットとしている部位から実際の刺激部位がわずかにそれて何らかの悪影響が出る可能性もある。

 日本でもいくつかの大学病院などで行われているNIRSは、課題を与えた時の脳血流変化パターンから病気を診断するものである。しかし、100%正確に診断できるわけではないだろう(詐病が疑われる犯罪者の精神鑑定には役立ちそうな気はするが)。また、精神疾患は長期的に経過を追わないと正確な診断ができないことも少なくない。例えば、当初はうつ病とか神経症(不安障害)としての症状しかみられなかったのが何年かして統合失調症の症状が出てくることがある。その前駆症状の段階でNIRSは統合失調症と診断できるのだろうか。いずれにせよ、NIRSが民間の中小の精神科病院やクリニックに導入されるのはまだ先のことだろう。

最後の認知行動療法の効果を脳科学的に証明したものは、森田療法でも同じような結果が出るのではないかと思う。森田療法で不安を相手にしない生活態度を続けていくことにより扁桃体の過活動がおさまってくることは想像できよう。

今回の番組ではうつ病の新しい治療法や診断法をわかりやすく紹介するということでは良いと思うが、そのすばらしさだけを過度に強調している点が少々気になった。

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