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2012年4月23日 (月)

神経質礼賛 778.医者いらず

 古くから「医者いらず」と呼ばれているものがいくつかある。アロエはその一つであり、食用と外用と両方の使い方がある。また、「リンゴ1個で医者いらず」とも言う。リンゴにはビタミン類が豊富に含まれている。同様に「みかんが色づくと医者は青くなる」という言葉があって、みかんを摂取することで病気が防げるということだろう。日本では「大根おろしに医者いらず」と言う。大根はビタミン・ミネラルが豊富な上に消化酵素を含んでいて胃腸によい。

 しかし、これさえ摂っていればいい、というものでもない。最近も納豆が良いとか皮が黒くなりかけたバナナが良いとか酒粕が良いとかいろいろブームがあったけれども、やはりそれだけに偏ってはダメである。結局はバランスよく栄養を摂り、食べ過ぎない・・・「腹八分目に医者いらず」なのだろう。体が弱く神経質だった貝原益軒(605)の養生訓である。

 養生訓は日本だけではない。12-13世紀、イタリア南部サレルノの医学校の規則には古代ギリシアの健康法を取り入れられた「サレルノ養生訓」というものがあり、「笑いと休息と節制のあるところに医者要らず」とあったそうだ。食物や酒を節制して、適度な休養を取り、笑いのある生活をしていれば、病気になりにくいというわけである。

 考えてみれば、森田正馬先生の療法も、適応力を高めて心身ともに健康にしていく、いわば医者いらず生活法を体得させるものだったと言えるかもしれない。森田先生は患者さんたちの前で次のように言っておられる。

「ここで全治した患者が、風邪をひかぬようになるという事は著明の事です。ここの療法は、冷水摩擦をやるとか、皮膚を鍛えるとか、決して特殊の強健法というものはなく、ただ自然に従って適応性になるだけの事である。それで風邪をひかなくなるが、つまり日常の生活に心のゆるみがなくなるからである。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.138)」

単に神経症(不安障害)の症状を治療するのではなく、心身全体を健康的にし、さらには仕事や勉強や家事がはかどるようにもする、というのは森田療法ならではである。

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