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2012年5月11日 (金)

神経質礼賛 784.メンタルヘルス検査義務化の愚

 5月3日毎日新聞第1面に『検査義務化「拙速だ」 メンタルヘルス 専門家から批判』という見出しの記事があった。厚生労働省が自殺・うつ病対策のためにメンタルヘルス検査を職場で行うことを義務化しようとしているが、この検査は科学的根拠が薄く、一人当たり350円の検査を3000万人の労働者に行えば、105億円の金がかかる。ストレスが高い人を早期発見するのが目的だというが、専門家たちからは「ストレスが高い人が必ずしもうつ病のリスクが高いとは限らない」「効果が実証されないのに費用を投じるのは無駄」「検査の結果、機械的に精神科受診を勧められたら医療機関が混乱する」といった批判が上がっている。例の腹囲を測定する「メタボ検診」の二の舞というわけだ。さらに新聞第3面には厚生労働省の官僚たちが強引に法制化しようとするウラ事情が載っていた。産業医や保健師が参加している日本産業衛生学会のホームページに、この検査の義務化に反対する意見が掲載されたのだが、厚生労働省から圧力がかかって、反対の文字は消えたという。法改正で「実績」をあげ、利益を得ようとする官僚たちの暗躍があるのだそうだ。何のことはない、国民のためではなく官僚たちのための法改正である。都合の悪い言論を封殺するようでは近隣某国と大差ない。

 ちなみに、この検査は9項目からなり、最近の1カ月、

①ひどく疲れた

②へとへとだ

③だるい

④気がはりつめている

⑤不安だ

⑥落ち着かない 

⑦ゆううつだ

⑧何をするのも面倒だ

⑨気分が晴れない

という質問に対して、ほとんどなかった(1点)、ときどきあった(2点)、しばしばあった(3点)、ほとんどいつもあった(4点)を選択させ、合計点で判定するというものだそうである。神経質な人だと不調を強く感じやすく、スコアが高くなる可能性がある。

 この質問紙には見覚えがある。以前、私は国のある機関のメンタルヘルス相談を委嘱されたことがあって、この種の質問紙で点数が高い職員が相談対象となっていたが、こういう質問紙の点数で抽出することに意味があるのか、と疑問に思っていた。疲労感や抑うつ感を押し殺して無理に働いている人の方が本当は危ないのではなかろうかと。

 

 今週の月曜日、連休明けの外来は多くの新患の方たちで大変混雑した。その中には、ここ3カ月間全く休みがなく連休も出勤しなければならず、ついにダウンした、という人がいた。まだ子供さんは小さく普通の会社ならば休日に加えて育児休暇も取れるはずなのだが、毎日帰宅が遅く普通の休日すら休めないのではおかしくなって当然である。この人が働いている会社は世間的には優良企業と思われているが、過重労働や職場内のパワーハラスメントのために具合が悪くなって受診する社員が多い企業である。意地の悪い言い方をすれば、「適応障害」や「うつ病」社員を効率よく大量生産する企業ということになろう。残念なことに、成果主義・人件費削減の旗印のもと、最近はこうした企業が増えている印象がある。さらには、社員予備軍、就活学生さんたちの消耗も激しい。5月8日付読売新聞夕刊には「就活失敗し自殺 急増 10-20歳代 4年で2.5倍に」という見出しの記事が載っていた。メンタルヘルス検査義務化よりも、もっと厚生労働省がやらなくてはならないことがあるはずだ。

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