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2012年5月25日 (金)

神経質礼賛 789.森田療法と看護理念

 

 勤務先の病院では、今週から今年度の看護実習生の受け入れが始まった。例年の看護学校2校に加えて今年度からは大学看護学科の学生さんたちも受け入れることになっているので、看護スタッフの忙しさはさらに増すことになる。実習には看護学校の場合5名の学生さんに指導教官1名が付き添う。そして、学生さんたちは全体の見学実習だけでなく、それぞれ一人の担当患者さんについて勉強していくことになる。この患者さんには安定した方を選び、本人の同意を得たうえで学生さんについてもらっている。

 多くの精神科病院では、入院患者さんの6割位は統合失調症の患者さんである。昨今は発病して早い段階で受診されるようになったし、優れた抗精神病薬が開発されて、激しい症状があっても入院せずに外来だけで治せるケースや入院しても短期間で退院できるケースが増えてきた。とはいえ、症状の改善がみられず長期入院を余儀なくされている方々も少なくない。私が担当しているそのような患者さんの中にも看護学生さんに割り当てられた人がいる。60代半ばの女性で、20歳頃に統合失調症を発病し、いくつかの精神科病院に入退院を繰り返した後に、今の病院に入院して約30年になる。薬物療法を続けているが陽性症状の幻覚・妄想は取り切れていない。そして、陰性症状の無為自閉・自発性低下・感情鈍麻が目立つ。数年前までは入浴を拒否し、髪は脂でベットリし、衣服に大便が付着したままで平気でいた。看護師さんや看護助手さんたちがチームワークで粘り強く働きかけてくれて、ようやく入浴するようにもなったし、身なりも清潔になってきた。作業療法には参加してくれないが、職員がホールのテーブル拭きをしていると、自発的に手伝ってくれるようになった。日常生活の中で看護スタッフの関わりによって良くすることができるという例である。精神科病棟の看護師さん方の仕事は年々、記録・看護計画などのデスクワークやカンファレンスの比重が大きくなっているけれども、患者さんに寄り添い関わるという原点を学生さんが体験してもらえたらと思う。

 これが、精神病ではなく神経症の場合は、誰かが治してくれるわけではない。あくまでも治すのは自分の力である。入院森田療法であっても、医師は、コーチ・監督役であり、本人が症状はありながらも必要な行動をしていくように指導していくことになる。看護師さんたちも、できることはなるべく本人にやらせて、必要な時だけ援助していくわけである。

 大原健士郎教授在任中の浜松医大では、森田療法を実によく理解した看護師さんたちがおられた。朝夕の花壇の手入れ、畑作業、運動レクリエーションには研修医とともに看護師さんが必ず付き添っていた。患者さんの背中を押して作業に向かわせ、落ち込んで時には支え、症状を訴えて行動しない人には「それは森田的じゃないニ(浜松弁)」と叱ることもあった。まさに森田正馬先生の奥さん久亥さんの役割を見事に果たしていたのだ。彼女たちの活躍ぶりが記録に残っていないのは残念なことである。

 

 最近は森田療法学会で看護系の発表が増えている。その端緒となった慈恵医大第三病院の看護師さんの発表論文(矢崎志保子:入院森田療法患者の看護,森田療法学会雑誌 9;57-601998)に、森田療法の看護の基本は、本人が本来持っている健康的な力を引き出し、あるがままに目的本位の行動が取れるようにする、ナイチンゲールが言う「持てる力を最大限に発揮した」状態になるよう支援していくこと、と書かれていたのが、強く印象に残っている。森田先生の言われた「人の性(しょう)を尽くす」とナイチンゲールの看護理念は重なるものだったのだ。

 

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