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2012年8月27日 (月)

神経質礼賛 819.俳句

 先日、多可能(たかの)という酒場へ行った。この店に入るのは2度目である。駅前の高層ビル群の谷間に佇む木造の建物。家族経営の店で創業は大正12年という。カウンター奥の木製の屋号看板が長い歴史を物語っている。午後5時にはもう満席である。その割には騒がしくなく、小気味よいオーダーの声が響く。地元でとれる生シラスや桜エビ揚げがおいしい。郷土料理のひとつ黒はんぺんフライもよい。私は野菜のてんぷらが入った揚出し豆腐が気に入っている。飲み物はビールと地酒と焼酎サワー各種。BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」で紹介されたのが2004年。その時の〆の一句は「タンブラーに 澱む翠(みどり)や 茶山みゆ」だった。焼酎お茶割から浮かんだ句なのだろう。ふと壁を見上げたら、吉田さんの色紙がかかっていた。今年の日付が入っていたので、よほどこの店が気に入っていて、プライベートで立ち寄ることもあるのだろうか。色紙に書かれた句は「笑ひ酒 トマトころがる ミニのひざ」。この句は実は他の店の放送で詠まれたものだが、酒場で若い女性が笑った拍子にプチトマトが膝の上に転がり落ちる様子が浮かんでくる。つられて笑ってしまいそうだ。タンブラーの句が静ならばこちらは動の句である。


 俳句や川柳ほど短い文学はない。わずか
17文字に世界を凝縮させてしまうのには、鋭い感性と高い言語能力を必要とする。まさに神経質にうってつけである。俳人にも神経質な人が多いのではないかと思っている。『生活の発見』誌の毎年1月号には神経質川柳の特集があるし(743話)、外来患者さんの中には俳句をたしなまれる方もいる。何事もないように思える日常生活の中でも、感性を研ぎ澄ませて見渡せば、俳句や川柳の題材は見つかるものだ。そうして外にアンテナを向けていると、いつの間にか自分の「症状」は忘れているのである。

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コメント

先生、こんばんは。俳句の話題なので、またお邪魔します。

 「(俳句は)まさに神経質にうってつけである」に同感です。鋭敏な感受性によりあまり人が気に留めないようなことにふと着眼する、それが独創的な詩を生みますよね。

 先生に私の好きな秋の句をいくつかご紹介したいと思います。

<秋天の一滴となり鷺下りる> 鷹羽狩行

<胡桃割る胡桃の中に使はぬ部屋> 同

<書きおきのメモ詩片めく雲の秋> 同

<月明や直なるものを道といふ> 片山由美子   (直なる→すぐなる)

<天国はもう秋ですかお父さん> 塚原アヤ

 狩行はもっとも人気のある現代俳人の一人で、片山は有力な女流です。塚原さんは、その当時小学生か中学生でした。
 
 私の句も・・と書きかけましたが、思いとどまりました!

anxiety様

 コメントいただきありがとうございます。

 御紹介いただいた句はどれもが秋にふさわしい句です。残暑まだきびしい折り、早く涼しくなって欲しいですね。特に「胡桃の中には使はぬ部屋」とういう発想は斬新だと思います。「天国は」の句は作者の純な心がよく表れています。早くにお父さんを亡くされているのでしょうね。

 また機会がありましたら、anxiety様の句も御披露していただけたら、と思います。

 

先生ご無沙汰しております。
ブログ画面上部のお写真が変更になりましたね。
おや、でも先生の書棚にしたら、
やや乱雑な並びで「神経質がたらない」
のではないかと思い、
よく目を凝らしたら、下部にラベルが貼ってある。
おっ、これはひょっとしたら、
図書館の書棚ではなかろうかと、
さらに目を凝らしたら、中央部に先生の
『神経質礼賛』がありましたね。
先生の奥ゆかしい「自己主張」が感じられ
とても感銘を受けました。

さて、「俳句」に関するエッセー、
拝読させていただきました。
俳句は「神経質の文芸」との仮説、
とても納得いたしました。
贅言を慎み、感情的な自己主張を
一切省いた即物的な描写は、
先生のお写真と共通する世界だと思います。

anxiety様ご紹介の鷹羽先生の作品の中に

  書きおきのメモ詩片めく雲の秋

がありましたが、私も類想句を作っていたことを思い出し、
奥ゆかしくないですが紹介させていただきます。

 隣室の紙 風に舞い 今朝の秋

そして、春の句ですが、

 詩の紙片 千切って 撒いて 花筏

というものです。
どうも、失礼いたしました。 

書き忘れました追伸です。
多可能にまた連れて行ってください(汗)。

keizo様

 コメントいただきありがとうございます。

 1週間ほど病院で獲れた白ゴーヤと通常の緑ゴーヤを並べて撮った写真を出していました。元の写真に戻すのもなあ、と思って、地元の市立図書館(御幸町)の書棚の写真にしました。自室の書棚はこんなに整理されていません(笑)。なお、藤枝市立図書館(岡出山)にも1冊入っていますよ。

 鷹羽さんの句は見事ですが、keizo様の句も爽やかな秋風を感じさせる名句だと思います。「隣室」というところが空間の広がりを感じさせます。たった17字で臨場感ある情景を映し出してしまう俳句はすごいものだと思います。

 多可能さんは冬場はおでんも出しているようです。また行ってみましょう。

 先生、こんにちは。「俳句」のコメント数が増えていたので、またお邪魔します。

 keizo様の句、佳い句ですね。

 <詩の紙片千切って撒いて花筏>

 桜を見て一句出来たのでしょうか。句手帳は持って出なかったので、何かの紙に書き留めた。でも、読み返してみたら気に入らないので反古にした。薄く白い「紙片」が破られて、花びらのように川の「花筏」の上に落ちていく絵が浮かびます。また、「千切って」の文字がきれいです。

 それでは、奥ゆかしさを捨てて、私も自分の秋の句を書かせて頂きます。

  朝寒や背に頬つけて二人乗り

  対岸のオフィス丸見え秋日和

  僧と犬坊へ下りゆく秋の暮

  蜑が家の籬の古りて雁渡し

 句作において、秋は苦手なんです。


anxiety様

 秋の俳句を御披露いただきありがとうございます。

 「朝寒」の句は自転車に乗った母親と幼稚園くらいの子供でしょうか。ほのぼのとしていい感じがします(と勝手に想像しましたが、恋人同士もありえますね)。
 「対岸」の句はちょっとユーモラスです。爽やかな青空のもと、見え過ぎちゃうわけですね。
 「僧と犬」と「蜑が家」の句は古典的な情景が浮かびます。物語の一場面でしょうか。

 恥ずかしながら「蜑」(あま)=海人、海女という字と「籬」(まがき)という字が読めなくて老眼鏡を掛けながら大きな辞典を引いてしまいました(冷汗)。とても勉強になりました。ありがとうございました。

 

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