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2012年9月 3日 (月)

神経質礼賛 822.森田病棟の貼紙

 かつて三島森田病院の森田病棟に貼られていた注意事項を書いた紙が残っている。ボロボロで茶色く変色して判読しにくくなっているが、次のような内容である。(実物は縦書き。「起床後」とは入院後1週間程度の絶対臥褥が終了してから、という意味である)


 
起床後の注意事項

一.臥床時間は七時-八時間を超えないこと.

二.自室に閉居しないこと 日中は外に出ること.

三.洗面後と就寝前、古事記音読のこと.

四.日記は毎日夕食後に書くこと.

五.起床時二三日は空を仰ぐこと高い所に登ることを禁ず.そして漸次作業にはいっていくこと.

六.体操したり散歩したり口笛を吹いたり放歌したり等すべて氣を紛らはせる所為を禁ずる.

七.読書外出等は医師の指示に従うこと.

    日記に読書許可或は外出許可と云う様に医師が記入する.

八.他人の日記をみないこと.

九.患者同志で病氣の話をしないこと.


 
 さすがに第三項の古事記音読は私が勤務し始めた時にはもう行われていなかった。ただし、森田正馬先生の教えを直接受けた指導員の田原あやさんが存命中は、第一項と第二項は厳しく指導されていた。そもそも病室は畳部屋だったから昼休みに短時間ごろ寝することはあっても昼間から本格的に寝てしまうことはなかった。現在は一部屋4名のベッド部屋となり冷暖房完備だしカーテンで仕切ることができるので、体調が悪いと称して作業をさぼってベッドにもぐり込む者が出るし、昼食後は昼寝の時間になってしまっている。また、第八項にあるように、かつては作業に専念するために、読書は作業に集中できるようになってから許可されるという具合だったが、現在はその制約はなく、漫画でも週刊誌でも最初の絶対臥褥が終われば自由であり携帯電話があればゲームで遊ぶこともできる。外出外泊は少なくとも1カ月程度たってから許可だったものが、近頃では最初から土日は自宅に外泊して「休養」するというような輩もいる。これではせっかくの入院森田療法の効果も大きく減弱してしまう。だらだら1年も2年も入院する位なら、主として統合失調症の方々を対象とした作業所に通所して就労を目指す方がより実質的である。本来の入院森田療法に近づけて厳しくすれば入院治療に適合する人がいなくなり、緩め過ぎると森田療法らしさが失われて何をやっているのかわからなくなる、というジレンマは、数少なくなった森田療法入院施設が抱える共通の問題だろうと思う。


 
 ともあれ、この注意事項の第一項は規則正しい生活の第一歩である。夜眠れなかったからといって昼寝をしていては、不眠が改善されない。眠れても眠れなくても7時間横になっていれば疲れは取れるのだからそれでよい、と割り切ることが神経症性不眠の処方箋である。気分の良し悪しにかかわらず必要な行動をしていくという意味では第二項も大切である。第九項は、森田療法の立場からすれば神経質は病気ではないので、症状のグチをこぼさないで健康人らしくしていくということである。リズミカルな古典の名文を音読するということは心身の健康にプラスになるだろうから、第三項の古事記でなくとも他のものを音読してもよいだろう。

古い貼紙ではあるが、神経質人間の生活に役立つことが書かれていると言えるだろう。

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